ライバルの「阪急」と経営統合
翌2006年春、村上ファンドによる阪神電鉄株の持ち株比率が46%超と買収寸前にまで高まった。窮地の阪神電鉄が頼ったのが阪急電鉄。経営統合で合意した阪急電鉄が阪神電鉄へのTOB(株式公開買い付け)を行い、子会社化したうえで、共同持ち株会社の阪急阪神ホールディングスに移行した。
この持ち株会社のもとに、阪急電鉄、阪神電鉄、阪急阪神不動産、阪急阪神ホテルズ、エイチ・ツー・オーリテイリング(阪急、阪神百貨店が統合)、東宝などが並ぶ。
2000年代半ば、“乱世”到来
2000年代半ば、日本のM&Aは“乱世”を迎えた。堀江貴文氏率いるライブドアによるフジテレビ支配を狙ったニッポン放送株の買い占め、楽天によるTBS買収の企て、さらにUFJ銀行をめぐる東京三菱銀行と三井住友銀行の争奪戦などが社会問題としてニュースをにぎわせた。
ライブドアはプロ野球・大阪近鉄バッファローズ(2004年、オリックスが吸収合併。現オリックス・バッファローズ)の買収にも名乗りを上げた。
その中でも中心にいたのが元通産官僚の村上世彰氏が率いた村上ファンド。日本における物言う株主(アクティビスト)の草分けとされ、2000年には不動産会社の昭栄(現ヒューリック)に国内初の敵対的TOBを仕掛け、頭角を現した。
次の100年に「銀傘」完全復活へ
甲子園球場は、安全性や快適性の向上とともに「歴史と伝統の継承」を基本コンセプトにリニューアルを重ねてきた。2008年から3期に分けて球場本体を改修し、太陽光パネルの設置や雨水利用などの取り組みも開始。2010年に甲子園歴史館をオープン。2022年にはナイター照明をLED(発光ダイオード)化した。
そして新たな100年に向けて打ち出したのが内野席を覆う銀傘をアルプススタンドまで広げる計画だ。
戦前、アルプススタンドまで覆っていた銀傘は戦時中の金属供出ですべて取り外されて以降、復活・拡張してきたが、これを完全復活させる。夏の甲子園における応援団の暑さ対策にも期待されている。2025年にも着工の運びだ。
「歴史にもしはない」とされるが、阪神電鉄の買収が別の形で結実していれば、甲子園球場の来し方行く末を左右したに違いない。
文:M&A Online