総括
FX「円安は貿易赤字の片肺飛行。もう一つの円安エンジンのオルカンは介入で委縮」
ドル円=145-150、ユーロ円=160-165、ユーロドル=1.08-1.13
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨10位(9位)、株価4位(17位)、円安は貿易赤字の片肺飛行。もう一つの円安エンジンのオルカンは介入で委縮」
(日銀副総裁発言でドル円反発。今週は株価乱高下や金融政策を巡る閉会中審査を開催)7月11日、12日の介入後は円が最も強い。ただ先週に限って言えば円は最弱通貨。年間では10位。介入日の高値の161.756と8月5日の安値141.661の半値が151.71、3分の1戻しが、148.36。先週は一時、3分の1戻し以上の149.36まで上昇も終値は147.60。20日線を上抜けなかった。内田日銀副総裁が8月7日、「金融市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と明言したことは円高株安に歯止めをかけた。
今週は、衆院と参院の財務金融委員会が、株価乱高下や金融政策を巡る閉会中審査を開催する。植田日銀総裁が出席する。
(4-6月期のGDPはプラス成長だが、持続性に疑問)
4-6月期の国内総生産(GDP)は前期比0.8%増、年率換算で3.1%増。1-3月期のマイナス成長から脱した。雇用者報酬が前年比で3年ぶりにプラスに転じ、個人消費が改善した。ただ4-6月期は7月の介入前で円安基調であったが7-9月期は円安効果が剥げ落ちるので成長の持続性には疑問が残る。
(円安は片肺飛行に。介入で早速、もう一つの円安エンジンのオルカンなどの投資が減少)
過去のドル売り介入は少ない。1992年と1998年のドル売り介入は今年7月の介入金額より少額であったが、貿易黒字時代ということもあり、1ドル100円を割った。今回は貿易赤字時代なので、100円割れまではいかないと思う。今年は、貿易赤字が縮小しているが、新NISAを主とする外貨投信の円売りが半年で20兆円ほど出ていたので円安の勢いがついていた。その外貨投信の伸びに近い金額の円買い介入で相殺し、かつ外貨へ向かう資金の流れをけん制したので、暫くは貿易赤字だけの片肺飛行となる。
7月の外貨投信の金額は6月から3兆円減少している。市場が落ち着いて再び政府の公約の「貯蓄から投資へ」向かうまでは時間がかかる。新首相が、投資促進を継承するかまだわからない。今週の7月貿易統計にも注目したい。
(7月消費者物価の発表は閉会中審査の直前)
23日の国会閉会中審査の直前に7月消費者物価が発表される。前年比で6月の2.8%から2.7%への低下予想。コア、コアコアも注目したい。日銀の貴重なインフレ指標は3つのうちまだ2つが2%以下であることも7月の利上げに違和感があった。
(ドル安円安)
先週は円が弱かったが、ドルも弱く、クロス円は円安が目立った。国会でも問題になっている介入や利上げが、今後慎重になれば、貿易赤字に加え株高を伴うリスク選好の流れが出れば、貿易赤字がある限り、円高の加速はなくクロス円が上昇うることとなる。
*米ドル「通貨3位(2位)、株価(NYダウ)11位(12位)、緩やかな景気減速でドル下落、株価は上昇」
ドルは7月の日銀介入から弱い。先週は12通貨中9位、今月はここまで10位だ。ドルインデックスは今月104.07から102.4まで1.6%下落している。
米国景気の減速と、ゆっくりながらも消費者物価が低下していることを表している。ただ日本と異なり、株価は急落もなく、ドルが強くても弱くても、金利が上昇しても低下しても強いのが日本と違う所だろう。
先週は消費者物価や小売売上高など、注目度の高い経済データが相次いで発表され、インフレ率は目標である2%に向けて緩やかに低下し続けており、個人消費は健全であるということが示された。
(今週はパウエルFRB議長がジャクソンホール会議で講演)
8月23日にパウエルFRB議長が講演する。最近のFRB地区連銀総裁らの発言は、ほぼ一致している。パウエル議長の講演内容も以下と大きくは変わらないと予想する。
・シカゴ連銀グールズビー総裁=米経済が過熱している兆候はないため、金融引き締め政策を必要以上に維持しないよう慎重に対応する必要がある。
・アトランタ連銀ボスティック総裁=9月の利下げに「オープン」。金融政策の緩和で遅れる余裕はない。
・セントルイス連銀ムサレム総裁=利下げを検討する時期が近づいている。
(アトランタGDPナウは緩やかに減速)
アトランタ連銀GDPNowモデルによる2024年3Qの実質GDP成長率予測は、 8月16日時点で2.0%で、8月15日の2.4%から低下した。弱い住宅着工件数報告を受けた。
(CPIナウは2.6%)
クリーブランド連銀の8月CPIナウは前年比で2.6%上昇、7月の2.9%から低下する見込み。
(ハリス大統領候補は引き続きインフレ対策に取り組む)
大統領候補に指名されたハリス副大統領は、住宅や食品などの価格引き下げに向けた新たな政策を発表し、大統領に選ばれれば最優先課題として、インフレ対策に取り組む姿勢を強調した。初めて住宅を購入する人を対象に頭金として最大2万5000ドルを支給することを明らかにした。
*ユーロ「通貨4位(5位)、株価9位(9位)DAX)、好材料はないがドルに追いつく」
(米ドルに並ぶ)
米国の景気減速で対価として買われ、12通貨中4位でほぼ3位のドルと並んだ。経済指標は弱いものが多く、政策金利も追加利下げが視野に入っているが上昇している。ドルと一番相対で動く通貨だ。ただ貿易・経常収支は安定黒字で、需給面の底堅さはある。
(今週は製造業・サービス業PMI)
今週は8月製造業・サービス業PMI、ECB理事会議事要旨、8月消費者信頼感指数の発表がある。
(ユーロ圏は小幅な成長)
ユーロ圏の2024年2QのGDP成長率は前期比プラス0.3%と、2四半期連続のプラス成長となった。予想は前期比プラス0.2%に反して前期並みの成長ペースを維持する結果となった。成長率は決して高いとはいえないが、ユーロ圏経済の回復の底堅さを確認させる結果であった。一方、独がプラス成長の予想(前期比プラス0.1%)に反して0.1%のマイナス成長に転じ、期待外れの結果となった。
(7月消費者物価)
7月のユーロ圏の消費者物価は、前年同月比2.6%上昇。伸び率は予想の2.5%を上回り、2カ月ぶりに加速した。ECBは次回9月会合で追加利下げの是非を慎重に判断する。物価上昇率は2025年末にかけて2%まで落ち着く見通しで、インフレ鈍化が想定通りに進めば政策金利を一段と引き下げる構えだ。ラガルド総裁は、9月利下げの可能性は「幅広く開かれている」として市場に言質を与えていない。
ただ市場は ECBは9月に0.25%の利下げを実施し、年末までに約0.65%の利下げを実施する確率が95%以上になると予想されている。今年2回目、3回目の利下げを完全に織り込んでおり、4回目の利下げが実施される可能性も約60%とみられている。7月中旬の時点では、今年3度目の利下げが行われるとの確信はなかった。
*ポンド「通貨2位(首位)、株価10位(11位)、政府、英中銀も強気」
(今年は常に英ポンドは上位に位置している)
先週は南アランドに抜かれ年間2位に後退も、今年は常に英ポンドは上位に位置している強さがある。
(先ず先ずの成長ぶり))
2Q・GDPは前期比0.6%増加し予想と一致。 英経済は2023年下半期に小幅なリセッションに陥ったが、今年1Qには0.7%成長に回復。ストライキや雨天により6月の活動が横ばいとなったにもかかわらず、英国の不況からの回復が2Qに勢いを増したことを裏付けている。
7月の小売売上は予想通り前月比0.5%増加した。サッカーの欧州選手権に関連した売り上げなどが寄与した。6月は例年よりも気温が低く雨も多かったことなどから個人消費が落ち込んでいたが7月は盛り返した。
(政府、英中銀も強気になってきた)
英中銀は、2024年の成長率見通しを0.5%から1.25%に引き上げた。年初の成長が予想を上回ったためだ。スターマー首相は、年間2.5%の経済成長を達成したいと述べている。リーブス財務相は、2年連続でG7の中で国民一人当たりGDPの成長率が最も高い国になるという目標を設定している。
(今年初めて消費者物価が上昇)
7月の消費者物価は前年同月比2.2%上昇し、6月から伸びが加速した。英インフレ率が加速するのは今年初めてだ。
予想の2.3%は下回り、英中銀が注目するサービスインフレ率は大幅に鈍化した。英中銀は、年末には2.75%程度に達すると予想。 物価上昇は足元では一服しているが、多くの家計は過去2年間の急激な物価高になお苦慮している。
(ベイリー英中銀総裁講演)
今週23日には米ジャクソンホール経済シンポジウムでベイリー英中銀総裁が講演する。
*豪ドル「通貨6位(8位)、株価15位(14位)、8月はここまで月間最強通貨」
(8月はここまで最強通貨)
執拗に、RBAは金融緩和は時期尚早と繰り返し、豪ドルは上昇している。先週は2位、8月はここまで最強通貨だ。年初来では6位。
(RBA=利下げを検討するのは時期尚早)
ブロックRBA総裁は8月16日、利下げを検討するのは時期尚早だとし、RBAはインフレの上振れリスクに引き続き注目していると述べた。 基調インフレ率は依然として高過ぎると指摘した。
雇用の伸びを維持しながらインフレ率を目標の2-3%に低下させるのに現在の政策が十分に制約的だと判断し、昨年11月以降、政策金利を4.35%に据え置いている。
ただ、前四半期に3.9%を記録した基調インフレ率は、2025年末までに2-3%の目標範囲に戻ると見込まれている。失業率は4.2%で推移しているものの、労働市場は依然として逼迫している。
ブロック総裁は「もちろん状況は変化する可能性があり、見通しは不透明だ。ただ、理事会が現在把握している情報に基づくと、近い将来金利を引き下げる状況になるとは予想していない」とした。
(労働市場は底堅い)
7月の雇用者数の伸びは予想を上回った。一方、労働力人口の拡大に伴い失業率は小幅上昇した。高金利にもかかわらず、労働市場の底堅さが浮き彫りになった。7月の雇用者数は5万8200人増加。予想は2万人増だった。フルタイム雇用者がけん引した。失業率は4.2%に上昇。労働参加率が過去最高の67.1%に上昇した。
(今週の注目は)
今週はRBA金融政策会合議事要旨と8月製造業・サービス業PMIの発表がある
(7月の企業景況感指数でも雇用が回復)
7月の企業景況感指数は前月から2ポイント上昇し、プラス6と長期平均をやや下回る水準となった。 一方、より変動の大きい企業信頼感指数は2ポイント低下し、プラス1となった。
景況感指数を構成する雇用指数はゼロからプラス7に回復。半面、売上高指数はプラス11からプラス9に低下した。
*NZドル「通貨9位(10位)、株価10位(7位)、オア中銀総裁が追加利下げ示唆」
(8月はここまで4位と介入の円より強い)
先週は利下げがあったがNZドルは12通貨中6位、8月はここまで4位と円より強い。年間で9位。
(NZ中銀が2020年3月以来の利下げ)
NZ中銀は8月14日、インフレ率が目標の1-3%に収束しつつあるとして、政策金利を0.25%引き下げ、5.25%とした。 市場の予想は、エコノミスト31人中19人が金利据え置きを予想していた。
利下げは2020年3月以来となる。 中銀は「追加緩和のペースは、価格動向が低インフレ環境と一致しており、インフレ期待が2%の目標付近で安定しているという委員会の確信に左右される」とした。
(オア中銀総裁のハト派的コメント、追加利下げ示唆)
オア中銀総裁は、今後の利下げペースはインフレ動向次第だと述べた。総裁はは「われわれの予想では、来年を通じてかなり積極的な一連の利下げが行われる」と語った。「何がそのペースを決めるのか。実際のところわれわれは、今後数四半期のインフレと価格設定行動の実態を見極め、安心して緩和に臨みたい」と説明した。 総裁は、金利をあまりに早く引き下げれば、金利が刺激的になったり、規制が緩和されたりして国内のインフレが加速するリスクが高まるが「われわれにとってそのリスクは非常に低いと思う」と述べた。
さらに「コアインフレ指標はいずれも下降傾向にあり、一部はすでに3%の基準を下回っている」と述べた。
総裁は、「今からクリスマスまでの間にあと2回の引き下げのチャンスがあり、データと我々が話していることが全てうまくいけば、それを実現したい」と述べた。
(期待インフレ率、3年ぶりの水準に低下)
NZ中銀の四半期調査によると、3Qの期待インフレ率が3年ぶりの低水準となった。3Qは、2年後の期待インフレ率が2.03%と2Qの2.33%から低下した。2年間は中銀の政策が物価に波及する期間と見なされている。
1年後の期待インフレ率は平均2.4%で、前回の2.73%から低下した。
(今週の注目点)
今週は7月貿易収支と2Q小売売上の発表がある。貿易収支は2か月連続黒字となっている。予想は3.3億ドルの黒字。2Q小売売上の予想は前期比で0.5%増。