地主株式会社
(画像=地主株式会社)
西羅 曜旦(にしら てるあき)――代表取締役社長
2000年、地主株式会社(旧 日本商業開発株式会社)に創業メンバーとして入社。20年余にわたり、独自の不動産投資手法であるJINUSHIビジネスの浸透と底地マーケットの拡大に注力し、東京・大阪・名古屋の営業責任者を歴任。2016年に地主アセットマネジメント株式会社を設立し、2017年に地主プライベートリート投資法人の運用を開始。JINUSHIビジネスが生み出す安定したキャッシュ・フローが不動産金融商品として評価される礎を築く。2022年3月、地主株式会社 代表取締役社長に就任。
地主株式会社は、「JINUSHIビジネスを通じて安全な不動産金融商品を創り出し、世界の人々の資産を守る一翼を担う。」を経営理念に掲げる、不動産金融商品のメーカーです。わたしたちは、2000年の創業以来、定期借地権を活用し、 土地のみに投資する JINUSHIビジネスを行ってまいりました。土地を買い、土地を貸す。 自ら建物を建てず、所有もしない。 貸している土地を、長期に安定した収益が見込める 不動産金融商品として、投資家のみなさまにご提供しています。

目次

  1. JINUSHIビジネスとは
  2. 現在までの事業変遷について
  3. 自社事業の強みについて
  4. 思い描いている未来構想について
  5. 今後の重要テーマについて
  6. ZUU onlineユーザーへ一言

JINUSHIビジネスとは

ーーまずは事業内容について教えてください。

地主株式会社代表取締役社長・西羅 曜旦氏(以下、社名・氏名略): 地主株式会社は、建物を持たず土地のみに投資する独自の不動産投資手法「JINUSHIビジネス」を展開する会社です。取得した土地をテナントに貸し、テナントの皆様からいただく借地料を長期安定の不動産金融商品として投資家の皆様に提供しています。

土地をお貸しするテナントは、スーパーやホームセンター、老人ホーム、ホスピスなど多種多様です。2024年6月末までの開発実績は、累計で410案件、約5,057億円に上ります。

当社が開発する不動産金融商品(底地)は、建物を保有しないことで、様々なリスクや手間を排除しています。建物にかかる保守や修繕・改修などの追加投資も不要です。テナントとは20年から50年の期間で契約を結んでいるため、キャッシュ・フローも長期に安定しています。

開発した商品の主な売却先は、当社グループで運用する国内唯一の底地特化型私募リート「地主プライベートリート投資法人(以下、地主リート)」です。年金や生損保等の機関投資家の資金を運用しており、2017年の運用開始から8年連続の増資を達成し、資産規模は2,216億円となり、2024年6月現在、私募リート全58銘柄中第8位の規模となっています。

地主株式会社
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現在までの事業変遷について

ーー創業されてから上場されるまで、そして上場された後も、いくつか転換点が御社の中であったと思いますが、その中でも特にターニングポイントだったと社長ご自身が考えられる点をいくつか教えていただければと思います。

西羅:2000年に創業した当初、不動産業界では土地だけに投資をし、土地を貸すということは個人の地主さんがされている程度で、事業として取り組む会社はありませんでした。そのような中で、JINUSHIビジネスが生まれたきっかけには、ある苦い経験がありました。

創業者の松岡と私は、当社の創業前、総合商社の兼松グループの不動産部門で商業施設の開発・賃貸事業を行っていました。当時売上げ1兆円を超える総合スーパーに建物を貸していたのですが、そのテナントが倒産してしまい、新たなテナントを探す必要に迫られたのです。立地が良かったため、後継テナントを見つけることができたものの、建物は以前のテナントの要望に沿った造りとなっていたため、改築等の追加投資や賃料の減額を余儀なくされ大変苦労しました。その経験から、「建物を持たず、土地だけを貸せば、失敗に至らなかったのでは」という発想を得て生まれたのが、JINUSHIビジネスです。

当初は底地マーケットも存在しなかったため、商品の売り先を見つけてから、テナントと事前に契約を結んだうえで土地を買うということを地道に繰り返していました。

初めてJINUSHIビジネスに光が当たったのは、リーマンショックの時です。世の中のお金の動きが停滞し、資金繰りに窮した多くの不動産会社が倒産しましたが、JINUSHIビジネスは、土地の仕入時にテナントと定期借地契約を結んでいるため、最初から金融商品として成り立っています。権利こそ不動産ですが、契約に基づくキャッシュ・フローを生み出しているという点から、社債代替商品を作るという感覚で事業を行っていました。そのため、リーマンショックの際も、金融商品としての長期安定性や、建物を持たないことで様々な手間やリスクを排除していることをご評価いただき、有名企業の創業家の資産管理会社などを中心に需要を得ることができました。

JINUSHIビジネスは、その後も東日本大震災などの経済変動の度に、その長期安定性に光が当たり評価を確立してきました。特にコロナショックの際は、ほとんどの不動産金融商品がボラティリティにさらされた中で、JINUSHIビジネスの長期安定性が揺らぐことはなく、底地のマーケットが一気に出来上がり、今では底地を取り扱うプレイヤーが多数います。

ーー最初はビジネスモデルが理解されずに難しい状況だったと思いますが、それでも続けられた理由は何でしょうか?

西羅:誰もやっていないことに挑戦することに意義があると考えていましたし、一度は失敗した経験から、JINUSHIビジネスが合理的で正しいという確信を得ていたからです。

創業してからほとんどの期間は逆風で、大変な時期もありましたが、不安はありませんでした。正しいことをやり続ければ、必ず世の中に認められると信じていました。その結果として、当初描いていたマーケットを20年かけて作ることができたと感じています。

自社事業の強みについて

ーー20年間コツコツと努力されてきたことで、先行者利益を享受できるポジショニングが確立できたと思いますが、競合が増える中で、御社の強みはどのようなところにあるとお考えですか?

西羅:強みは二つあります。一つ目は、地主リートの存在です。誰も事業として展開していなかった土地だけに投資をするということを始めた当社は、無かったマーケットを20年かけて自ら創り上げてきました。かつ、そのタイミングで存在していなかった底地特化型の地主リートを立ち上げ大きく成長させてきたことが最大のポイントです。 地主リートは、2017年の運用開始以後8年連続で増資し、2024年1月現在の資産規模は2,216億円となりました。LTV(借入比率)は30%程度としながら、利回りは4%程度を維持しています。 底地マーケットが出来上がったことで底地の金融商品としての価値も上がっているので、今から同じ底地専門のREITを他社が立ち上げたとしても、同じ商品性を実現し、投資家の需要を獲得することは困難でしょう。

二つ目は、テナントとの信頼関係です。私たちは底地専業なので、他の不動産会社のように無理な賃料の値上げや再開発、バリューアップを求めません。一般的に地主とテナント間のトラブルで発生するのは、例えば20年前に借りた土地が知らないうちに他の事業者に貸し出されていたり、売却されてしまったりして、契約の更新ができずにそのエリアでの事業を撤退することになってしまった、というケースです。一方、地主リートは土地を持ち続け、契約満了時にはテナントと再契約をすることを前提としています。テナントは安心して事業を継続することが可能です。地主リートの存在によって、我々はテナントと良好な関係を築き上げています。 この関係は短期間で作れるものではありません。

思い描いている未来構想について

ーー今後の5年から10年の間に、御社がどのようなポジションになっていて、どのようなバリューを発揮しているイメージがありますか?

西羅:当社は、地主リートの成長とともに日本の大地主を目指しています。そのための成長戦略としてテナント業種の多様化や事業エリアの拡大、土地のオフバランス提案を推進しています。中でも土地のオフバランス提案については、企業における資金調達の手段、つまりは金融サービスの一つとして認知が広がり、これから需要が増えていくと考えています。

例えば、昨今東証より、資本効率や株価を意識した経営が上場企業に求められている中で、所有する不動産をオフバランスしようとする企業が増えています。我々が提案する土地だけのオフバランスは、企業の財務体質向上を実現できる一方、建物はそのまま保有し続けることができるため、自由度の高い運営が可能です。当社に持ち込まれる案件はどんどん増えていくと思います。

このように、JINUSHIビジネスの金融サービスとしての側面が広まっていくことで、安定地主としての役割を担う地主リートは、その時点で5,000億円規模になっているでしょう。

地主株式会社
(画像=地主株式会社)

ーーそのビジョンや目標に向けて、現在取り組むべき課題や突破すべきポイントは何でしょうか?

西羅:2022年1月、社名を日本商業開発から地主へと変更したことが、まさにその取り組みの一つでした。旧社名の時は、その名前から「スーパーやドラッグストア等の商業しか取り組まないのではないか」とか、「郊外型の大型商業施設を開発・保有しているのか」と誤解されやすく、実態と社名が乖離しているような気がしていました。しかし、我々のビジネスは、商業やスーパー、ホームセンターだけでなく、ありとあらゆる業種業態と取引が可能です。思い切ってビジネスモデルを表す「地主」という社名に変えたことで、従来のイメージを払しょくし、新たなテナントとの取引が増えています。社名変更以後の約2年半で、テナント業種は1.4倍に増えました。

その一方で当社はまだまだ知られていません。知られることでやれることがたくさんあると思います。独自のビジネスモデルをスタートし、無かったマーケットを自ら創ってきました。我々が魅力的な商品を作り続けていくことで、未来は明るく、可能性は無限に広がっていると感じています。

今後の重要テーマについて

ーー西羅さん、今後の重要テーマについてお伺いしたいと思います。例えば、人材の獲得や成長を加速させるためのファイナンスなど、他に注目しているテーマはありますか?

西羅:人材はいつどのタイミングでも非常に大切です。現在も優秀な人材の獲得に力を入れており、次の20年の成長を牽引するメンバーを求めています。

ーー具体的にどのようなメンバーを求めていますか?

西羅:会社の創業期と成長期では求められる能力が異なり、その会社のステージにあったチームが必要だと思います。私が地主株式会社の社長に就任してから、組織の再構築を進め、管理部門のチームアップがひと段落したところです。今後は、改めて営業の組織力向上に力を入れていきますが、建物を持たない当社のJINUSHIビジネスは不動産業界の経験者には地味な仕事に思えるでしょう。それでも、JINUSHIビジネスの面白さや将来性に感じ入っていただける方にこそ参画して欲しいと考えています。

ZUU onlineユーザーへ一言

ーー西羅さん、最後の質問では、ZUU onlineのユーザー様へ向けて、御社の今後注目してほしい点や、市場にまだ伝わっていない魅力についてお話しいただければと思います。

西羅:繰り返しになってしまいますが、私たちはこれまで存在しなかったマーケットを創り出し、そのパイオニアとして事業を展開しています。まだまだこの底地の市場は拡大していくでしょう。

地主リートの資産規模が2200億円に至るこれまでの成長は、市場が始まっていない中で作ってきた数字です。底地マーケットはまだスタートラインを切ったばかりであり、これから益々成長するマーケットのトップランナーとして、さらなる成長を目指しています。

今後も当社の歩みを見守っていただき、期待に応えられるよう努力してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

ーー本日はお時間いただきありがとうございました。

氏名
西羅 曜旦(にしら てるあき)
社名
地主株式会社
役職
代表取締役社長

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