ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「日本の新首相が景気浮揚策を取らなければ円高株安継続で成長減速へ」

ドル円=138-143、ユーロ円=154-159、ユーロドル=1.08-1.13

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨5位(7位)、株価9位(7位)、円は5位に浮上、株価は9位に後退、介入以降で国富が200兆円喪失、景気・災害対策は1-2兆円」
(介入以降で国富が200兆円喪失、景気・災害対策は1-2兆円)
ついに円がドルを抜いた。7月の介入時点では最弱通貨で、首位通貨と15%以上引き離されていたが、5位へ浮上、首位ランドとの差も2.99%ととなり年間首位への可能性も出てきた。ただ最強通貨になることが日本にとって良いことなのか。米国やG7は常に声明で通貨を弱くすることで国が繁栄することを否定している。日本は円売り介入で通貨を弱くしたわけではなかったが、自ら潤沢な外貨準備を使い膨大な円買い介入を行い円高にした。代償は大きかった。株価時価総額は介入前から約136兆円、対外純資産では約63兆円、合計で約200兆円失った。
 政府が景気対策や災害対策で使うお金は5兆円にも届かない数兆円だ。今回は物価を引き下げるための介入や利上げであったようだが、その代償が計り知れなく大きくなった。戻りの弱い株価やドル円を見ると日本経済を押し下げる流れは続きそうだ。政府は株安などを米国経済の減速としているが、結果は結果であり、このような円高株安は過去何度も経験してきたことなので、配慮は不十分であった。

(日本の低い成長率)
 日本の低い成長率から見て利上げは急ぐべきではない。IMFは日本の今年の成長率は0.7%(4月時点は0.9%)に引き下げ、来年は1.0%に据え置いた。円安株高で企業最高益、最高税収を上げていた環境を政府自らが壊してしまった。税収が減れば増税という悪循環となる。

(今週の日銀は政策金利据え置きか、基調インフレは1%台)
今週は日銀政策決定会合がある。日銀もこの急落しても尚不安定な株価、急激な円高を見て政策金利を据え置くようだ。日銀は常々「基調的なインフレ率」が2%を超えていないと主張してきたが、最近は「基調的なインフレ率」に言及しなくなった。3つの基調的なインフレはいずれも1%台だ。ヘッドライン、コアは2%台と世界が利下げに向う水準である。それでもデータ次第で利上げを行うと、総裁、委員が声をそろえて主張している。何か別の圧力が加わった気もする。

*米ドル「通貨6位(5位)、株価(NYダウ)7位(10位)、円に抜かれるが株価は上昇、経済は強くなる」
(利下げで米国経済はさらに強くなるだろう)
 ドルは円に抜かれ6位。ただ年間では安定しており、円を除く主要通貨に対し±2%程度で推移している。従って米国当局からは為替についての発言は出ない。米国の2024年成長率見通し(IMF)は2.6%、インフレは低下、利下げ観測、ドル安があれば米国経済はさらに強くなるだろう。

(0.25%か0.5%か。FOMC)
 FOMCでは、パウエルFRB議長のみならず、地区連銀総裁達が「金融政策を調整すべき時が来た」と発言している。市場の焦点は利下げ幅が0.25%になるのか、それとも0.50%になるのかに移っている。今回はドット・チャートも公表される。今後の利下げスケジュールにも注目したい。0.25%でも0.5%でも米国経済が好循環に入る可能性は高い。株価も上昇の兆しを見せている。また利下げをするといっても成長見通しが日本と比べると高いことが、再び米国へ資金が向かうこととなる。

(大統領選挙、ハリス氏なら平穏)
 先週の大統領選挙へ向けた討論会ではハリス氏の支持率が上昇した。ハリス氏なら現在の政策が引き継がれ、海外とも協調して政治経済軍事を進めることになるので問題はない。トランプ氏なら、奇抜な政策が取られるので混乱する。ただトランプ氏の政策実行には事務的に時間がかかる可能性が大きく、彼の任期中に実現することはないだろう。
 
(豊かな米家計資産、過去最高の163.8兆ドル) 
2Q家計資産は163.8兆ドルと、1Qの161兆ドルから拡大し、過去最高を更新した。日本円で2.3京円、日本の10倍、人口は3倍。

*ユーロ「通貨4位(4位)、株価6位(6位)DAX)、予想通り利下げ。成長見通しは引き下げも追加利下げには慎重」
(今年は通貨株価とも安定)
 通貨株価とも安定している。今年はどちらも上位で安定している。ユーロ圏に大きな問題が無ければ米ドルが安定すれば主要対価のユーロも安定か。ウクライナへの支援継続は一部から不満はあるだろうが。

(ECB0.25%利下げ実施、消費者物価指数が約3年ぶりの低水準)
 ECBは、政策金利を0.25%引き下げた。利下げは6月以来2会合ぶり。インフレが鈍化傾向にある一方、欧州経済に減速の兆しが出ていることを踏まえ、金融引き締めの度合いを緩めることが適切と判断した。8月のユーロ圏消費者物価指数が約3年ぶりの低水準となり、市場では9月会合での追加利下げが確実視されていた。

(ラガルドECB総裁など、追加利下げに慎重)
 ECB四半期予測では、2024、25、26年の成長率見通しが下方修正された。しかし10月の追加利下げは慎重な見方が多い。

*ラガルド総裁=景気が大きく悪化した場合は10月の利下げを検討することを辞さないが、包括的な情報が入手できるのは12月会合だ。

*ビルロワドガロー仏中銀総裁=金融政策による景気抑制の度合いを徐々に、そして適切に引き下げていくべきだ。しかし、そのペースは極めて実際的でなければならない。特定の金利軌道をあらかじめ約束するわけではないし、今後の会合に向けて完全な選択の自由を残している。

*カザークス・ラトビア中銀総裁=金融市場を見る限り、10月に利下げが行われる可能性は大きくない。しかし同時に、経済に予期せぬ打撃があり、現在の予想よりも経済が著しく弱く感じられ、インフレ率も著しく低下するようであれば、もちろん利下げを検討する可能性もある。

*シムカス・リトアニア中銀の総裁=利下げは継続するもののさらなる決定にはなお慎重さが求められる。

*ナーゲル独連銀総裁=インフレ見通しは極めて良好だ。インフレ率は来年末までに目標の2%に戻ると想定しており、データもそれを裏付けている。

*ポンド「通貨2位(首位)、株価12位(14位)、首位の座を奪われ2位へ後退」
(首位の座を奪われ2位へ後退)
先週は首位の座を奪われ2位へ後退した。やや伸び悩んでいる。一時は15%以上引き離していた対円相場も、現在はその差を3%内に詰められている。

(政策金利は据え置きか)
今週の英中銀は政策金利を据え置く見込み。ただ、インフレ率は目標の2%)を上回り続けると予想されているにもかかわらず、11月に追加利下げがあるとの見方が大勢だ。 英中銀は8月、政策金利を16年ぶりの高水準から0.25%引き下げ5.0%とした。インフレ圧力が十分緩和されたか意見が分かれ、5対4での決定となった。 5月と6月のインフレ率は2%だったが、7月には2.2%に上昇していた。英国は依然として賃金インフレ率とサービスインフレ率が高いと見られている。インフレ率予想は3Qが2.1%、4Qが2.5%。今年は2.6%、来年は2.3%。GDP成長率は今年が1.1%、来年が1.3%、26年が1.5%となる見通し。

 今週は8月消費者物価の発表、前年比で2.2%上昇の予想で前月と変わらず。コアは3.5%の予想で前月の3.3%から上昇。

(GDP伸びず)
7月のGDPは、6月に続き2カ月連続で前月比横ばいとなり、エコノミストの予想0.2%増を下回った。

(国民は英中銀を信頼)
英中銀の四半期ごとの調査によると、8月時点の1年後のインフレ率予想は2.7%と、2021年8月以来の低水準となった。 前回5月の調査では2.8%だった。2年後のインフレ率予想は2.6%で変わらず。5年後の予想は3.2%と9ヵ月ぶりの高水準で、前回の3.1%から上昇した。 中銀のインフレ抑制に対する国民の満足度を示す指標は、5月のマイナス4からプラス4に上昇した。これは22年2月以来の高水準。当時はロシアの本格的なウクライナ侵攻によって欧州の大半の地域でエネルギー価格が急上昇していた。

(首相にスキャンダル)
スターマー首相は、妻への高級衣料品の寄付を申告しなかったとして議会規則に違反したとの疑惑で厳しい調査に直面している。

*豪ドル「通貨8位(8位)、株価14位(15位)、GDPに続き景況感も弱い。RBAへの利下げ圧力は強まろう」
(豪ドル安、豪株安、長期金利は若干高い)
 既に円に抜き去られ年間で8位と小安い。株価指数も14位(全株指数、6.31%高)と強くはない。10年国債利回りはRBAの慎重な政策で3.82%と欧米より高い。

(財務大臣とRBAの争い)
財務大臣は2QのGDP成長率が0.2%に落ち込んだこともあり金融政策が「経済を破壊している」と主張している。しかしブロックRBA総裁はインフレ率が依然として高すぎるため利下げを正当化できないと述べている。しかし先週の経済指標は弱かった。

 8月の企業景況感指数は3ポイント低下してプラス3となり、2022年1月以来の低水準となった。雇用見通しが悪化した。
より変動の大きい企業信頼感指数は5ポイント低下し、マイナス4と、年初来最低を記録した。

9月の消費者信頼感指数は84.6で、前月比0.4%低下した。金利上昇への懸念が和らいだものの、経済と雇用への不安が表面化し、悲観論が楽観論を依然大きく上回っている。
8月は2.8%上昇していた。 2年以上支配的だった悲観論は、まだ解消の兆しを見せていない。生活費の圧力がやや弱まり、一段の金利上昇への懸念は和らいだものの、消費者は経済の方向性とそれが雇用に及ぼす影響について懸念を強めている。

(今週は雇用統計)
今週は8月雇用統計の発表がある。失業率は前月と変わらず4.2%の予想、新規雇用者数は2.5万人と前月の5.82人から減少する見込み。

(中国景気減速も豪経済に重し)
週末発表された中国の8月の経済指標は、鉱工業生産の伸びが5カ月ぶりの水準に鈍化した。小売売上高の伸びも減速したほか、新築住宅価格はさらに下落し、積極的な景気刺激策が必要になるとの見方が強まった。中国を最大貿易相手国とする合計にとっても悪影響だ。

*NZドル「通貨10位(8位)、株価10位(9位)、急がれる利下げ。今週はGDP発表」
(通貨は弱いが株価は持ち直し)
 通貨は年間10位と弱いが利下げしたこともあり株価は先週は1.72%高と底堅くなっている。10年国債利回りは先進国では数少ない4%台(4.13%)。

(2Qはマイナス成長か)
今週発表される国内総生産(GDP)データは、2Qの経済縮小を示し、2022年後半以来3度目の景気後退に陥る瀬戸際にあると予想されている。 予想は前年比0.6%減、前期は0.3%上昇だった。

(追加利下げ観測強まる)
NZ中銀は、経済が縮小しインフレが鈍化する中、予想よりもさらに速いペースで金利を引き下げるだろうと投資家や一部のエコノミストは予想している。
2026年半ばまでに現在の5.25%から2.5%に政策金利を引き上げる予定だと市場は予想している。中銀はすでに政策スタンスを急転し、年初に利上げをちらつかせた後、8月日に0.25%ポイントの利下げを決定した。市場では、借入コストの高騰が長期化して需要が圧迫される中、中銀はより積極的な方針転換を余儀なくされるだろうとみられている。 雇用統計の弱さは、成長支援に向けて政策を転換するには予想よりはるかに早く動くべきであることを示唆している。さもなければ、望むよりも深刻な景気後退と失業率の急上昇を招くリスクがある。

金融市場では、今年最後の2回の利下げでさらに75ベーシスポイントの利下げが予想されており、そのうち1回は50ポイントの利下げになるとみられる。2024年の政策金利決定は10月9日と11月27日。

(製造業指数は改善も50を下回る)
 8月製造業業績指数は45.8で、前回の値は44。同指数が最後に50を上回り、拡大を示したのは2023年2月だった。高金利の重圧で経済が停滞している兆候がさらに強まった。