ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「円売り需要のある半期末。自民党総裁選挙は」

ドル円=141-146、ユーロ円=158-163、ユーロドル=1.09-1.14

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨9位(5位)、株価6位(9位)、円売り需要のある半期末。自民党総裁選挙は」
(円売り、半期末の外貨需要、パウエル発言、植田発言で)
 ドル円は上伸、7月の円買い介入以降で先週は最長の陽線となった。半期末のドル買いが出始めた事、パウエル議長が0.5%の大幅利下げを決めた後の会見で今後の大幅な利下げに慎重な姿勢を示したこと、日銀植田総裁が「市場は、引き続き不安定な状況にある、円安に伴う輸入物価の上振れリスクは相応に減少」などと市場に配慮した発言もありドル円が上昇、円が全体的に売られた。
 介入後では、円は最強だが、先週は最弱、年間でも前週の5位から9位へ上昇。円安が進むと株高となり先週の日経平均は3.12%高。日本10年国債は0.864%、世界的な金利低下もあり、利上げした日本の長期金利も上昇していない。

(貿易・外貨投信・介入の需給は)
 8月貿易統計は6952億円の赤字、今年は1-8月期で4.5兆円の赤字。22年の年間19.9兆円の赤字からは縮小している。23年の年間9.3兆円の赤字からもやや少ない赤字。今年は円買い介入約15兆円で埋めている。あとはオルカンを主とした外貨投信購入の円売りが円高圧力を抑えている。介入がなければ需給では徐々に円安が進むだろう。

(自民党総裁選挙)
 自民党の総裁繊維に注目している。金融市場に色を出しているのは高市候補と石破候補。高市氏はアベノミクスの継承で積極財政を掲げているので市場は好感しよう。石破氏は利上げ、円安是正、金融所得課税を掲げているので市場は失望する。

(全国消費者物価、基調的なインフレ率、東京消費者物価)
8月全国消費者物価は、4カ月連続でプラス幅が拡大した。エネルギー価格が高止まりするとともに、食料や家庭用耐久財が上昇し、全体を押し上げた。日本銀行の利上げ継続姿勢に対する市場の見方は維持されそうだ。コアは前年同月比2.8%上昇。エネルギー価格が12.0%上昇と前月から横ばいを維持したほか、生鮮食品を除く食料は2.9%上昇と15カ月ぶりに上昇幅が拡大。

 今週は未だ1%台に留まっている日銀の8月基調的なインフレ率が発表される。植田総裁は基調インフレの上昇も示唆したのでより注目したい。また9月東京都区部消費者物価も発表される。コアは8月の2.4%上昇から2.0%に低下する予想だ。

*米ドル「通貨5位(6位)、株価(NYダウ)8位(7位)、米国の強さをヒシヒシと感じる。障害はつなぎ予算」
(米国は強い)
 米国は強い。利上げでも利下げでも株価は強い。年初来でナスダックが19.56%高、S&Pが19.55%高、NYダウが11.60%高。ドル売り円買い介入で右往左往している日経平均だか、同じように介入弾を食らっている米ドルの動揺は小さい。年初来5位だ。

(パウエル議長の自信)
 FRBは0.5%の大幅利下げを決定した。8月のジャクソンホールでの「政策調整の時期が到来した」を実行した。自信たっぷりに「高いインフレは特に食料、住宅などの必需品のコストの上昇に対応できない人々にとって購買力を低下させ、大きな苦痛をもたらしてきた。私たちの引き締め的な金融政策は需要と供給を回復させ、インフレ圧力を緩和させた。過去1年間の忍耐強いアプローチが実を結び、インフレ率が持続的に2%に向かっている」とした。ただ「0.5%の大幅な利下げが今後の標準になるとは考えていない」との認識を示しバランスをとった。
 利下げも景気が弱くなっているわけでもなく、アトランタ連銀GDPナウは2.9%と高い。 
(今週も侮れない指標あり)
今週は製造業サービス業PMI、消費者信頼感指数、ミシガン大学消費者態度指数確報など重要性が中程度の指標がある。

(大統領選挙と市場)
 ハリス氏が大統領になれば、バイデン政権の政策を継承、世界とも友好的に付き合っていく。トランプ氏の場合は、関税引き上げでの物価上昇、減税での財政赤字拡大で金利が上昇、ドル高もあり得るが現在のサプライチェーンを壊し、新しい米国中心のシステムを構築するには混乱もあり時間がかかる。その混乱で市場も混乱、株安、ドル安にも繋がる。彼の奇抜なシステムが構築されるまでの任期終了となろう。

(いつものもめ事)
 米下院は9月18日の本会議で、過半数を握る共和党が提案した期間6カ月のつなぎ予算案を反対多数で否決した。2024会計年度末を間近に控え、25年度の本予算審議が滞る中、つなぎ予算が成立しなければ政府機関の一部が閉鎖される。共和党の一部も反対に回った。予算案を主導したジョンソン下院議長(共和党)にとっては大きな打撃となる。政府閉鎖回避への不透明感が高まった。

 予算案には有権者登録に際し、米国市民権に関する書類の審査を求める法案が含まれている。不法滞在者の投票を防ぐのが目的だ。ただ、上院で多数派を占める民主党がこれに反対しており、議会通過のめどは立っていなかった。月末までにつなぎ予算を成立させるには、超党派の協力が不可欠。市民権審査に関する法案は、11月の米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が強く主張している。トランプ氏は、これが含まれない場合、「つなぎ予算案に賛成すべきではない」とで訴えた。

*ユーロ「通貨4位(4位)、株価7位(6位)DAX)、景気弱かれどユーロは安定至極」
(安定のユーロ)
 12通貨中、先週は6位、9月はここまで5位、年間は4位と、やや強いところで安定している。株価(独DAX)も年間7位の11.75%高、日経平均のような乱高下はない。長期金利(10年国債)は独の2.19%から伊の3.54%までだが、低下傾向にある。国別の金利差も小さくなってきた。あの金融危機の「ギリシャ」を安定軌道に復帰させたECBの政策力は評価できる。

(来月の利下げは)
デギンドスECB副総裁は、今年最後の政策決定会合では経済とインフレの状況についてより多くの情報を入手できるが、政策金利を来月変更する可能性は依然としてあるとの見解を示した。12月に発表される新たな四半期予測に言及し「12月には10月よりも多くの情報を入手できることは確かだ」と指摘。「しかし、ご存じのように、われわれは扉を完全にオープンな状態にしている。選択肢を維持することを望んでおり、それはデータの展開次第だ」と述べた。ECBは9月に、今年2回目の利下げを決定した。市場では12月の追加利下げが見込まれているほか、来月の会合に関してはほぼ半々に見方が分かれている。

ユーロ圏の消費者物価の伸びは鈍化しているが、サービスインフレが依然として「弱点」だとし、その理由として「賃金動向がかなり高止まりしている」と言及。「現在は幾分落ち着きを見せているが、賃金、つまり従業員1人当たりの報酬の伸び率は4%を超えている」とした。また「9月のインフレ率はベース効果により非常にポジティブに見受けられることが予想されるが、同時に、今年最後の四半期にはベース効果によりインフレ率が上昇する」と語った。

(ラガルド総裁レビュー)
 ラガルド総裁は、ECBの政策戦略レビューに触れ「われわれの政策枠組みがいかにリスク判断を組み入れているか、振り返って考えるべきだ」と述べた。
「基本予想から得られる情報とリアルタイムの情報の間でいかにバランスを取るか、異なるシナリオをいかに最大限生かすか、さまざまなショックが生じた際に中期的な方向性を確保する重要性」を考える機会だと述べた。(日本はさまざまなショックが生じた際に中期的な方向性を確保する重要性に欠けているかもしれない)

*ポンド「通貨2位(2位)、株価14位(12位)、ポンド上昇、中銀は物価上昇を示唆」
(ポンドは強いが株は弱い。金利は高い)
 先週後半ははポンドが上げを拡大、ドルに対して2022年3月以来の高値を付けた。英中銀がは政策金利を5%で据え置き、利下げに漸進的なアプローチを取ると表明した。
今年は通貨が比較的強いだけに株価はやや弱いか。年初来6.42%で20市場中14位だ。10年国債利回りは3.9%で欧米よりは高い。

(政策金利据え置き、中銀は物価上昇を示唆)
英中銀は政策金利を5.0%に据え置くとともに、1000億ポンドの保有国債減額を今後1年も継続すること決定した。

金融政策委員会は8対1で金利据え置きを決定、ディングラ外部委員が0.25%ポイントの利下げを支持した。ベイリー総裁はインフレ圧力の低下により今後数カ月で段階的な利下げが可能と指摘。「ただインフレが低水準を維持することが極めて重要で、早期や過度の利下げにならないよう注意する必要がある」と述べた。
中銀は、直近で2.2%となっている消費者物価の前年比上昇率が年末までに2.5%程度まで上昇するとの見通しを示した。原油価格の下落がインフレ見通しの引き下げにつながったという。

(タカ派のマン委員)
 マン英中銀委員は、インフレリスク後退したことが明らかになった時点で、より積極的な金利引き下げを行うため、より長い期間、金利を高めに維持することを望んでいると述べた。
英中銀のモデルが示すよりも中立金利は高いとみており、政策金利が5%である現在、政策委員が考えるよりも景気抑制的ではないとの認識を示した。最もタカ派的なメンバーであるマン氏は、「インフレの先行きが不透明な状況では、インフレプロセスにおける極端なリスクが解消するまで、より長い期間、金融引き締めを維持し、その後、より積極的な利下げを行う方が望ましいことをリスク管理アセスメントが示唆している」と説明した。
(減税も、株式市場活性化案)
バークレイズは低迷する英国の市場の「活性化」を図るため、英国株式市場の投資家への課税方法の見直しを求めた。報告書は、ロンドンを「国際的に魅力ある」ものにするためには、ジュニア取引所から主要市場に参入する企業の投資家に対する減税など、多くの改革が必要であると指摘している。また、ロンドンの主要市場でのさまざまな株式取引に対する現行の0.5%の取引税を見直すよう英国に求めた。

*豪ドル「通貨6位(8位)、株価11位(14位)、GDPに続き景況感も弱い。RBAへの利下げ圧力は強まろう」
(FRBの利下げもあり豪ドルは上昇)
 FRBの利下げもあり豪ドルは上昇。年間では前週の8位から6位へ上昇。株価は先週1.37%上昇し年初来7.76%高。10年国債利回りは3.95%で欧英米より高い

(今週の政策金利は据え置きか、ただ消費者物価は低下予想)
 今週、RBAはは政策金利を据え置くとの見方が大勢となっている。7月のインフレ率は3.5%に鈍化したが、目標の2-3%を上回っている。雇用市場の好調を背景に利下げ余地はさほどないとみられる。 さらに年末まで金利が据え置かれると予想。来年の1Qから3Qにそれぞれ0.25%の利下げを行い、その後は金利を据え置き、25年4Qに3.6%になると予想されている。
 ただ8月消費者物価は7月の前年比3.5%上昇から低下して2.7%上昇となる予想だ。

(8月の雇用統計は)
 8月の雇用統計は、就業者数が3カ月連続で予想を上回った。一方、労働力も急速に拡大したため失業率は横ばいとなった。労働市場がなお逼迫しているとの見方が強まり、短期的な利下げの可能性は低いとするRBAの見解を後押しする結果となった。
就業者数は前月比4.75万人増加。予想の2.5万人増を大幅に上回った。ただ、増加したのは全てパートタイム就業者だった。失業率は4.2%で前月と変わらず。

(ハンターRBA総裁補)
 ハンターRBA総裁補は、労働市場は依然として逼迫しているが、高水準の金利が需要を抑制する中、均衡に向かっているという認識を示した。 ただ、労働市場の状況は緩和しており、失業率は8月に4.2%と昨年の最低水準である3.5%から上昇した。中銀は人口の増加が雇用の増加を上回り、企業が労働時間を削減するにつれて、こうした状況が徐々に進んでいくと予想している。
労働市場の緩和が賃金の伸びに波及し始めた兆しがあるとも指摘。賃金の伸びはピークに達した可能性があり、今後さらに鈍化すると見通した。
中銀は労働市場の底堅さを一因に年内利下げの可能性に否定的な見方を示してきたが、市場では12月利下げの確率が84%織り込まれている。

*NZドル「通貨8位(10位)、株価16位(10位)、2Q・GDP弱く、追加利下げか」
(年間でも円を再び抜いて8位へ浮上)
 FRBの利下げでNZドルは先週は4位、年間でも円を再び抜いて8位へ浮上した。株価は弱い、NZ50指数は年初来6.02%高、10年国債は4.2%、先進国ではNZだけが4%台。

(2Q・GDP弱く、追加利下げか)
 2Q・GDPは前期比で0.2%減少。小売や卸売、宿泊、農林水産業など多くの産業で活動が低迷した。予想は0.4%減少。1Qは0.2%増から0.1%%増に下方修正。
前年比では0.5%減で、予想と一致。。民間需要は弱く、それが経済の複数部門に波及している。
 中銀は8月の会合で政策金利を引き下げ、経済が予想通りに推移すれば、年内に少なくとも0.25%の追加利下げを行う可能性を示唆した。
市場では、10月にさらに0.25%の利下げが行われることが完全に織り込まれており、0.5%の利下げの可能性も28%程度となっている。

(S&Pの見方。格付けはAA+)
 S&PはNZの国債格付け見通しに「おおむね満足」しているものの、の巨額の経常赤字と弱い経済成長を注視している。外貨建て債務を安定的見通しでAA+としている。これは米国、オーストリア、フィンランドと同水準だ。「安定的見通しは、今後2年間に格付けが変わる可能性が低いことを意味する」とした。

経常収支赤字は、2022年後半に8.8%まで拡大した後、3月までの12か月間で国内総生産(GDP)の6.8%となった。この赤字は先進国の中で最も大きい部類に入り、輸出の低迷、予想を上回る輸入、債務返済コストを反映していると述べた。経常収支赤字は今後数年間でGDPの5%程度に縮小するだろう。だが、そうならなかったら、おそらく格付けの下振れ要因となる。

(消費者信頼感指数は改善)
3Qの消費者信頼感指数は90.8と、前期の82.2から改善した。依然として低水準にあるものの、見通しに対する悲観論は和らぎ始めている。消費者が引き続き家計の圧迫感を訴えており、支出の足を引っ張っていると指摘した。