ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「「変幻自在」、「豹変」は収益チャンス=パウエル議長、石破首相」

ドル円=146-151、ユーロ円=161-166、ユーロドル=1.07-1.12

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨10位(9位)、株価5位(5位)、介入なければ次第に元の需給相場へ、ただ介入の悪影響が出始めた」
(7月介入の損失は大きい。弊害を考慮しなかった介入)
 7月の介入を振り返れば、政府も「投機的な動きに対抗」と言わなければ介入は出来なかったのでしょう。「実需的な動きは許せない」では、ファンダメンタルズ通りと言われてしまう。「投機筋」とは便利な言葉で、実際には多くは存在しないがゆえに検証できない。実際にドルを上げたのは貿易赤字という実需とオルカンという政府推奨玉。介入の弊害、いや本害が大きかった。一時、日本の国富(日本株時価総額と対外純資産の為替差損)で200兆円を失った。インフレ抑制への景気対策の金額やGDP成長率の増加幅は数兆円から10兆円程度であることからひて比べものにならないくらいな大きな損失となった。2024年はマイナス成長の見通し、介入した7月からの年金などの収益も縮小する。

(介入なければ次第に元の需給相場へ)
 ただ実需の輸出の動きと効力が等しい円買い介入も、追加投入が無ければ、少しずつ現在の需給に基づいて動き、円安方向に少し戻ってきた。24年の貿易赤字は縮小したと雖も、1-9月で約5兆円の赤字。円は年間ではまだ10位の弱さだ。

(今週は日銀、投信概況に注目したい)
 今週は日銀支店長会議、日銀地域経済報告(さくらリポート)、9月上中旬の貿易統計、国際収支、毎月勤労統計調査-現金給与総額、全世帯家計調査、投信概況に注目したい

(介入の影響で年金運用がマイナス)
 主要企業の7-9月の企業年金の運用利回りは、0.96%のマイナスだった。マイナスになるのは2023年7〜9月以来、4四半期ぶり。円高が重荷となった。
資産資産別で最も運用成績が悪化したのが外国債券(為替ヘッジなし)だ。利回りはマイナス5.63%だった。現地通貨ベースの利回りは3.93%のプラスだったが、円高が重荷となった。
国内外の株式も振るわなかった。円高を主因に外国株式はマイナス5.30%となった。国内株式もマイナス4.90%だった。日銀が7月に政策金利を引き上げ、追加利上げに前向きな姿勢を示したことで株安が進んだ。
年金資産の約2割を占める国内債券は1.35%のプラスだった。株価の急落を受けて投資家のリスク回避姿勢が強まり、安全資産とされる債券が買われた。日銀は利上げをしたが、効果がなかったことがプラスになった。

(マイナス成長、世界38位の一人当たりGDPの自覚を)
 前回の繰り返したが、介入利上げの悪影響は大きい。OECDは2024年の日本の成長予想をマイナス0.1%と前回から0.6%下方修正した。日銀の基調的なインフレ3指数は2つが1%台、もう一つは0.7%だ。日本の一人当たりGDPは世界の38位。それゆえに政府もデフレからの脱却の看板を下ろしていない。それでも円買い介入と利上げを行ったのはまったくもってわけがわからい自滅策だ。

*米ドル「通貨4位(8位)、株価(NYダウ)9位(11位)、パウエル真理教、今週はCPI。ドル高・株高・金利上昇」
(パウエル真理教、今週はCPI)
8月23日のジャクソンホールでパウエル議長が「政策調整の時期が到来した」と宣言し、その後の指標はやや弱かった。ISM製造業、雇用動態調査、ADP雇用者数、消費者物価、製造業PMI、消費者信頼感などが弱かった。市場は11月の0.5%利下げを織り込んでいた。しかし10月1日には一転、「利下げを急いでいない」とし、先週の雇用統計でも雇用者数の伸びは予想を上回り、失業率は4.1%に低下した。11月の0.5%利下げ予想は消え去り0.25%利下げ予想が強まった。今週の9月消費者物価もパウエル議長の予言が通用するか市場は興味津々、緊張が高まっている。予想は8月の2.5%の対し2.3%上昇。

(ドル高・株高・金利上昇)
 米雇用の改善もあり、10月のドルは2位スタート、年間で4位。日銀の大規模介入を受けながらしっかりしている。NYダウは年初来、12.37%高、ナスダックは20.83%高、S&Pは20.57%高。10年債利回りは3.966%で9月半ばの3.6%台から戻している。

(イエレン財務長官)
イエレン財務長官は移民は経済的貢献をもたらし、重要な労働力供給源であると述べた。
(大統領選挙、経済政策の相違)
 ハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領がそれぞれ掲げる経済政策には大きな違いがある。ハリス氏ならば、初めて住宅を購入する人や子育て世帯を支援する新たな税制優遇措置、補助金などの施策を実施。食料品店の価格つり上げに目を光らせて、株主還元のための企業の自社株買いには課税率を引き上げる。
 トランプ氏ならば、米国の輸入関税率を過去数十年よりも一段と高くし、法人税率は引き下げると公約。エネルギー産業の振興を促す一方で、不法移民は送還する。
いずれの候補が勝利しても、連邦債務残高が増え続けると見込まれる。ブルームバーグではトランプ氏の減税案実施で28年度の連邦債務残高が同116%に膨らむ可能性があり、ハリス氏の控えめの案でも109%に達すると推計する。財政の混乱が生じないためには、大統領は議会の多数も得なければならない。

*ユーロ「通貨6位(5位)、株価7位(7位)DAX)、ECBタカ派も賛同して10月は利下げか」
(先週はドルに抜かれ、年間では6位に後退)
 先週はやや弱く、年間ではドルに抜かれ6位へ後退した。株価も弱く、独DAXは1.81%下落、年間では14.14%高、独長期金利は2.22%、2%台前半で安定している。

(消費者物価が2%割れ)
 9月のユーロ圏消費者物価上昇率は前年比1.8%と、2021年半ば以来初めて2%を下回った。

(ECB内で利下げに意見が一致)
 ラガルド総裁=インフレ率が目標の2%に回帰するとの自信を強めており、これを10月の政策決定に反映させるべきだ。最近の動向は、インフレ率が適時に目標に回帰するというわれわれの確信を強めるものだ次回10月の理事会でこれを考慮する。一部経済指標は景気回復が逆風に直面していることを示唆している。一方、賃金の伸びが鈍化し企業利益が賃上げの一部を吸収しているとしても、労働市場は依然として底堅い。
 レーン・フィンランド中銀総裁=ユーロ圏のインフレ率は2025年中に目標の2%で安定する。金融政策の方向性は明確だ。利下げが始まり、金融政策のスタンスは制限的な度合いが減りつつある。
 シュナーベル専務理事=インフレ率は目標とする2%に向けて低下する可能性が高まっている。
 (タカ派として知られるシュナーベル氏がこれまでの物価上昇抑制の困難さに関する警告を後退させた)

(弱い製造業)
 9月のユーロ圏の製造業PMI改定値は45.0で8月の45.8から低下し、今年最低となった。値下げしたにもかかわらず需要が急減した。ユーロ圏の3Q鉱工業生産は前期比1%程度減少したとみられる。受注が急減しており、年末にかけ生産はさらに落ち込むだろう。

*ポンド「通貨2位(2位)、株価16位(14位)、ベイリー総裁が利下げ示唆でポンド下落、ただ対円では強い」
(ポンドは2位堅持、対ドルで弱いが対円で強い)
 ポンドはベイリー総裁発言と強い米雇用統計で対ドルで安いが、円なお弱くポンド円は上昇した。年間2位は維持。年間ではポンドの強さが、株価指数(FT)を16位という下位で低迷させている。10年国債は4.14%とユーロ圏・欧米比では高い。

(ベイリー英中銀総裁が利下げ示唆でポンド下落)
 ベイリー英中銀総裁は、懸念していたほどインフレ圧力が持続的でないことに勇気づけられた。インフレの動向次第で一段と積極的に利下げに動く可能性があると述べた。一方。中東情勢はリスクをもたらしているとの見方を示した。ポンドは下落。11月の理事会で0.25%利下げする確率は97%と、前日の90%から上昇した。英中銀は利下げを加速させようとしているようだが、連続利下げには、賃金上昇と物価圧力の緩和を確認する必要がある。

(英中銀のチーフエコノミスト、ピル氏は慎重)
 英中銀のチーフエコノミスト、ピル氏は、利下げは段階的に進めるべきだと述べた。「経済とインフレの見通しがおおむね予想通りに推移すれば、引き続き追加利下げが見込まれるが、利下げが行き過ぎたり、過度に急ピッチになるリスクを警戒することが重要になる」とした。国内経済の構造変化でインフレ圧力が続く可能性を依然懸念しているとも発言。そうした根強い圧力がどの程度速やかに解除されるか慎重に判断する「十分な理由」があると述べた。サービス部門のインフレや賃金の伸びが「引き続き懸念要因だ」とも指摘。「私は公表予測よりもインフレを懸念している」と述べた。

(強い建設業PMI)
 9月の建設業PMIは57.2と、2022年4月以来の高水準。8月は53.6。土木建築が急増したほか、住宅建設も上向いた。金融引き締め政策が長期化しているにもかかわらず、建設需要が今年新たな回復を遂げたことを示唆している。

*豪ドル「通貨5位(4位)、株価14位(13位)、豪ドルは強すぎず、弱すぎずの展開、中国効果は」
(豪ドルは強すぎず、弱すぎずの展開)
 豪ドルは強すぎず、弱すぎずの展開。先週、対ドルでは米金利上昇で年間では抜かれたが、対円ではその差を広げた。豪全普通株指数は年初来7.5%高、10年国債は4.06%。
日銀の利上げ観測後退が背景。一方、ニュージーランドは国内の利下げ観測がありこれは豪ドルを支えた。

(RBAのスタンスは?)
RBAは「インフレ率は依然として目標を上回っており、その持続性も証明されている」としたが、その後発表された8月消費者物価は目標レンジ内の2.7%となった。その後RBAのコメントは出ていない。

(小売りは強い)
 8月の小売売上高は、前月比0.7%増だった。予想の0.4%増を上回った。7月は0.1%増だった。減税と温暖な気候が家計消費を促進したことが背景で、政策金利を当面据え置くべきだとの見方を強める内容となった。国内総生産(GDP)の半分以上を消費が占めていることを考慮すると、小売売上高は政策決定において重要な考慮事項となり得る。RBAは2022年5月から23年11月にかけて利上げを13回実施した後、家計消費の見通しが主要な不確実要因だと繰り返し強調している。

(鉄鉱石価格が上昇)
 中国が、一連の景気刺激策を発表したことを受けて豪が産出する鉄鉱石価格が上昇している。豪は鉄鉱石産出で世界一だ。
もちろん、中国の景気対策で中国を最大の貿易相手国とする豪の景気回復も後押しする。チャーマーズ豪財務相は投資や貿易、脱炭素化における協力推進で中国側と合意したと明らかにした。財務相は、中国が打ち出した刺激策に「非常に満足している」と語った。豪財務相の訪中は7年ぶり。中国は鉄鉱石の最大の輸出先で中国需要の変動に影響を受けている。鉄鉱石は政府の主要な収入源となっている。

(今週の指標と講演)
今週はTD・MIインフレ指数、ウエストパック消費者信頼感指数、NAB企業景況感指数、求人広告、インフレ期待指数、金融政策会合議事要旨の発表がある。RBAのハウザー副総裁、ケント総裁補佐、ハンター総裁補佐の講演もある。

*NZドル「通貨9位(6位)、株価15位(16位)、今週は0.5%利下げか」
(NZドルは弱い、ただ円よりは強かった先週)
 先週は弱かった。12通貨中11位、米雇用統計改善でのドル高、NZ中銀利下げ観測がNZを下落させた。唯一円よりは強かった。NZ株価指数50は年初来7.22%高、10年国債は4.29%。

(0.5%利下げか)
 今週、9日のNZ中銀政策金利決定では、0.5%引き下げて4.75%にする見通しだ。オア中銀総裁は8月の利下げ後、インフレ率が目標レンジの1-3%に近づいていることを踏まえて、年末までにあと2回の利下げを実施すると示唆していた。軟調な経済成長と失業率の悪化が、追加利下げを後押しする。エコノミスト28人のうち17人が0.5%利下げを決定すると予想した。残る11人は0.25%の利下げを予想。

(NZ財務省も弱い見通し)
 NZ財務省は「隔週経済最新情報」の中で経済はサイクルの「底にあるか、それに近い」とした。経済は2Qに縮小したものの、最近のデータは、「私たちは景気循環の底にいるか、それに近いところにいる。インフレは緩和し、金利は低下し始め、企業と消費者の将来状況に対する期待は改善している」ことを示しているとした。経済活動は3Qも横ばいにとどまる可能性が高く、回復の明確な兆候はまだないと付け加えた。

(3Q消費者物価は)
 NZは四半期毎しか消費者物価を発表しない。従って大きく前回値から動くこともある。3Q消費者物価は10月16日発表で予想は前年比2.5%上昇、2Qは3.3%上昇であった。

(先週の指標は改善)
 9月ANZ企業信頼感指数は60.9で8月の50.6より上昇、ANZ消費者信頼感指数は95.1で8月の92.2より上昇。このあたりは8月の利下げの好影響が出ている。