総括
FX「介入効果が薄れ、株・ドル円市場回復、ただ弊害は大きかった」
ドル円=147-152、ユーロ円=161-166、ユーロドル=1.07-1.12
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨10位(10位)、株価4位(5位)、介入効果が薄れ、株・ドル円市場回復、ただ弊害は大きかった」
(介入の効果が薄れ、元の実需取引に戻りなだらかな円安へ)
7月の介入後、漸くドル円が週足でボリバン2σから反発、株価も一時年初来マイナス圏へ落ち込んでいたが世界で4位と回復してきた。介入の効果が薄れ、元の貿易赤字と個人を含めた資本の外貨投資が戻ってきた。
(今週は貿易統計と全国消費者物価)
今週は実需を占う9月貿易統計や9月全国消費者物価に注目したい。今年の貿易赤字は22年の年間20兆円、23年の10兆円からは縮小している。消費者物価は総合、コア共に低下予想だ。
(石破首相のデフレ脱却ポイントは)
石破首相は12日の討論会で、日銀総裁との会談後に追加利上げに否定的な発言をしたことに関し「口先介入するようなことはないし、そう捉えられないよう努力したい」と述べた。
首相は金融政策に関し「期待を申し上げることはある」と述べた上で「日銀は独自の判断がある」と語った。デフレ脱却のポイントは個人消費の伸びを見るとしたが、個人消費の伸びは冴えない。
また財務大臣の加藤勝信氏は財務大臣、デフレ脱却担当大臣、内閣府特命担当大臣(金融)を兼務。デフレ脱却担当大臣の役目は「デフレ脱却及び円高対策を推進するため企画立案及び行政各部の所管する事務の調整担当」である。この肩書が消えて始めてデフレ脱却だ。
(日本は円高、利上げには対応しきれない国)
円買い介入と利上げで、一時株価時価総額と対外純資産の損失は200兆円となった。現在回復途上だが元には戻っていない。国家予算110兆円、社会福祉37兆円、防衛予算8兆円で200兆円の損失は痛い。介入・利上げで失うものは大きかった。先を見ていない金融政策だった。7-9月の経済指標にも以下のようにそれが現れている。
*7-9月の企業年金の運用利回りは、0.96%のマイナス。マイナスになるのは2023年7〜9月以来、4四半期ぶり。円高が重荷。
*8月家計調査 2か月ぶりの減少 前年同月比1.9%減
*8月の実質賃金 3か月ぶりマイナス 物価上昇に賃金追いつかず
*8月の景気動向指数 景気の現状示す「一致指数」2か月ぶり低下
*半年後の景気後退確率、8月77.6%に上昇 日経センター
*今年はマイナス成長の予想だ(OECD)
*米ドル「通貨5位(4位)、株価(NYダウ)11位(9位)、月間2位、パウエル議長の変節通り米国はまずまずの展開教、雇用にブレあり」
(パウエルFRB議長発言通りの展開)
パウエルFRB議長が「時が来た」(大幅利下げ示唆と実行)から「利上げは急ぐことはない」と転換してからは消費者物価、卸売物価が上昇し、金利、ドルが上昇。10月のドルは2位スタート。10年米国債利回りも9月末の3.79%から4.1%へ上昇している。ナスダックは年初来22.19%高、S&Pは21.91%高、NYダウは13.73%高と堅調だ。
(インフレ低下も一服)
9月消費者物価は前年比2.4%上昇。食品価格の上昇を背景に予想の2.3%を小幅上回った。しかし、2021年2月以来約3年半ぶりの小幅な伸びにとどまったことで、FRBは11月は0.25%の小幅利下げを継続する見通しだ。10月のミシガン大消費者信頼感指数は68.9と、前月の70.1から低下したが、1年先の期待インフレ率は2.9%と、前月の2.7%から上昇した。
(雇用はブレる)
先週の10月5日までの1週間の新規失業保険申請件数は、前週比3万3000件増の25万8000件と、週間の増加幅としては2021年7月以来最大となった。ハリケーン「へリーン」や、ボーイングの一時解雇の影響でノースカロライナ州やフロリダ州、ワシントン州で大きく増加した。今後もハリケーンやボーイングの雇用の不確実性は続くので雇用関連指数のブレも想定しておきたい。
(金融決算は好調スタート)
利下げによって銀行の利益が圧迫されるとの懸念があったが、JPPモルガンの3Qの純金利収入は予想外の増加、ウェルズ・ファーゴの前年同期比11%減と市場予想を下回ったが、4Qには落ち込みが緩やかになると見込だ。JPモルガンは4.4%高、ウェルズ・ファーゴは5.6%高で取引を終了。KBW銀行株指数は3%上昇し、2022年4月以来の高値を付けた。
*ユーロ「通貨6位(6位)、株価7位(7位)DAX)、若干、利下げマインドが一服も今週は0.25%利下げか。独仏に問題あり」
(年間6位と強くもなく弱くもない)
年間ではドルに抜かれたまま6位継続。独DAXは年間では15.65%高、独長期金利は2.26%へ上昇、米国消費者物価の影響を受けた。
(若干、利下げマインドが一服も今週は0.25%利下げか)
ECB当局者は、インフレが完全には沈静化しておらず、ユーロ圏経済のリスクが高まる中で、利下げのペースについて柔軟性を維持したいと考えていた。9月11、12日の政策委員会の議事要旨よると、当局者らは「入ってくるすべてのデータに対応できるよう、あらゆる選択肢を維持することが望ましい」との考えを示し、「景気抑制の度合いを緩めるスピードは、入ってくるデータ次第だ」と強調した。
投資家やアナリストは、9月の会合以降にユーロ圏のインフレ率が2%の目標を下回ったことや、経済が低迷している兆候が明らかになったことを受け、今週政策金利の0.25%引き下げを予想している。
フランス中銀のビルロワドガロー総裁は、今月の「利下げは非常に可能性が高く、最後ではないだろう」と発言。ラトビア中銀のカザークス総裁は、インフレ目標が維持できれば、2025年には経済を刺激も抑制もしない中立的な水準まで金利を引き下げることが可能だと述べた。
(独の状況、成長見通し)
ドイツ経済省は、24年経済成長率見通しをを従来のプラス0.3%からマイナス0.2%へ下方修正した。IMFの予測に基づくと、24年にG7で唯一2年連続のマイナス成長となる。下方修正は、24年後半に見込まれた経済回復が空振りに終わる可能性が高まったのが要因。鉱工業生産や景況感といった指標が24年下半期も景気後退が続いていることを示唆していると指摘した。
ハーベック経済相は、構造的な問題と地政学的な課題が逆風となって18年以降は力強い経済成長が見られていないと言及。 輸出主導型の経済となっているドイツは、世界的な需要低迷と地政学の緊迫化が響いて23年の輸出が前年より0.3%減少、24の輸出も0.1%減ると予想している。
(仏の状況、格付け)
フィッチは11日、フランスの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げると発表した。急速な財政悪化に対して厳しい判断が下された。フィッチは昨年4月に格付けを「AA」から「AA--」に引き下げていた。今回、格付け自体は「AA-」に維持した。
*ポンド「通貨2位(2位)、株価16位(16位)、3Qは3期連続のプラス成長か」
(ポンドは年間2位を維持)
ポンドは年間2位を維持したものの、米ドルの上昇や前週のベイリー総裁発言もありで先週は対ドルで下落、10月の円は弱いので対円ではしっかり。株価(FT)は弱く年初来6.73%で世界16位。10年国債利回りは4.2%でユーロ圏や米国よりは高い。
(3Qは3期連続のプラス成長か)
8月の国内総生産(GDP)は前月比0.2%増加。6月、7月と横ばいで3カ月ぶりに成長を回復した。8月は全ての主要セクターが成長。サービスセクターは予想より弱かったが、製造業と建設業の力強い回復が補った。3Qは3期連続のプラス成長となることが濃厚となった。英中銀は今年8月、4年5カ月ぶりに利下げに踏み切り、9月は据え置いた。次回の政策会合は11月7日に開く。0.25%の利下げが見込まれている。
(今風の消費者物価は低下か)
今週は8月雇用統計、9月消費者物価、9月小売売上などの重要指標の発表がある。消費者物価は低下の予想だ。
(増税か)
英シンクタンクの財政研究所は、リーブス英財務相が今月30日に発表する予算案で250億ポンドの増税を発表することを迫られる可能性があるとの見通しを示した。刑務所や警察などの公共サービスを強化するために税収を増やす必要があるためだ。 与党の労働党は7月の総選挙の選挙期間中に90億ポンドの増税を打ち出したが、政府予算の経済全体に占める割合を縮小させないためにはより大幅な増税が必要になると指摘した。労働党は総選挙で大勝したが、リーブス氏は直後に英財政が恐れていたよりもはるかに悪い状態に放置されていると語っていた。
スターマー首相は、一部の年金生活者に対する冬季燃料費補助を削減したこともあって支持率が急落している。
*豪ドル「通貨5位(5位)、株価14位(14位)、RBA議事要旨に変化 ハト派寄りか」
(豪ドルはやや下落)
米金利、米ドルの上昇で先週の豪ドルは対ドルで下落、対円では小幅安。全株指数は年初来14位の8.45%高、10年国債利回りは4.24%。
(RBA議事要旨に変化)
最新のRBA理事会議事録では、「短期的には」金利引き下げは行われないだろうという警告が削除された。RBAは、 1年近く金利を据え置いている。しかし、最新のメッセージには、金利引き下げの兆しとなるかもしれない小さな変化があった。9月の議事録は8月のものより「タカ派色がかなり薄れ」、「ハト派寄り」だった。
9月の理事会議事録では、『短期的に金利目標が引き下げられる可能性は低い』という一文が削除された。
9月四半期の基調インフレ率は中央銀行の予想を下回り、家計消費の伸びはそれほど力強く回復しない可能性が高まっていることを踏まえると、この方針転換は「慎重」なものだ。
インフレは克服され今は失業率の上昇を抑えることに焦点が当てられている。
(中国の影響は)
中国が大胆な金融緩和や財政支出を打ち出したが、具体的な金額はまだ示されていない部分もある。ただ一連の流れは、中国を最大貿易相手国としている豪にとってはメリットだ。
豪財務省の訪中以来貿易関係が改善し始めている。 中国は年末までに豪州産ロブスターの輸入を再開すると明らかにした。 中国の春節に間に合い、ロブスター産業に従事する人々に歓迎される。
(企業景況感指数、9月は上昇 物価上昇圧力緩和で)
9月の企業景況感指数は3ポイント上昇してプラス7となった。雇用が持ち直し、物価の伸びが鈍化した。低成長期でも経済活動が底堅さを維持している状況を示唆した。
(消費者信頼感、10月は前月比6.2%上昇 2年半ぶり高水準)
10月の豪消費者信頼感指数は89.8で、前月比6.2%上昇した。消費者の利上げ観測が大幅に後退し、生活費による圧力が引き続き緩和していることから2年半ぶり高水準となったが、悲観的な見方が依然大きく上回っている。海外の利下げのほか、国内インフレ緩和を示す兆候がより明確になったことで期待が高まっている。消費者はもはや利上げの可能性を恐れていない。
*NZドル「通貨8位(9位)、株価12位(15位)、年間8位とやや弱い展開が続く」
(年間8位とやや弱い。金利は高い)
年間8位とやや弱い展開が続く。株価は全体で12位、年初来9.13%高。10年国債利回りは先進国では高く4.43%。
(0.5%利下げ、政策金利4.75%に)
NZ中銀は政策金利を0.50%引き下げ、4.75%にすると決定した。利下げは2会合連続。利下げ幅は前回会合の0.25%から拡大した。インフレが鈍化し政策目標に近づいており、景気が減速している。
中銀は「消費者物価は目標の1〜3%の範囲内で推移し、2%程度に収束しつつある」と判断した。中銀は「経済は現状、供給過剰の状態にあり、価格や賃金が低インフレ経済に適応するよう促している」と分析した。11月の次回会合でも中銀が0.50%の利下げに踏み切ると予想されている。
(3Q消費者物価は)
NZは四半期毎しか消費者物価を発表しない。従って大きく前回値から動くこともある。3Q消費者物価は10月16日発表で予想は前年比2.5%上昇、2Qは3.3%上昇であった。
(財政赤字は予想上回る)
、2023-24年度の財政赤字は128.5億NZドルで、5月の予算案での予想110.7億NZドルを上回った。景気低迷が歳入を押し下げている。
ウィリス財務相は公的支出で引き続き財政規律を重視する必要性が浮き彫りになったとし、財政黒字化にコミットしていると表明。また「低成長と低生産性が政府の財政に悪影響をもたらすことも示された」とし、経済成長押し上げに取り組む考えを示した。