ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「資産立国か資産喪失かのどっちを目指すのか曖昧な日本」

ドル円=155-160、ユーロ円=160-165、ユーロドル=1.00-1.05

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨7位(昨年9位)、株価12位(昨年4位)、4年連続年足陽線。実需の円安に日銀はタオルを投げるのか」 
(大規模円買い介入でも9位で終わった2024年)
24年の円は12通貨中9位。約6兆円の年間を貿易赤字を上回る15兆円という大規模介入を行って、通貨最弱から抜け出すも9位に終わった。政府推奨の新NISAからの投資を含む外貨投信の残高が約25兆円増加していたことが円高を抑制した。さらなる円安で、実需の円安で、日銀は2025年もタオルを投げるのか。

(成長・インフレ見通し)
IMF予想では、成長率は2024年が0.3%、25年が1.1%。消費者物価は24年が2.2%、25年が2.0%、経常収支が24年がGDP比3.8%、25年が3.6%、失業率が24年が2.5%、25年は2.5%となっている。

(米国とは違う=日銀が利上げ出来るほどの強靭な経済ではない)
7月の円買い介入と日銀の利上げで、株価の暴落、急激な円高を見た。7-9月期の企業業績は落ち込み、年金を含め投資利回りは減少した。それでもインフレ抑制、円高抑制を求める声もあり、日銀は行動に慎重になっている。貴重なインフレ動向は0%台や1%台。賃金が上昇すれば利上げに踏み切ると示唆しているが、24年7月の行動で市場が落胆したような結果になれば成長どころか税収も落ち込み批判は免れない。日本は米国のように通貨高に耐えられる経済の強さがないことが不安だ。過去に何度も利上げし失敗し、再び金融緩和に逆戻りする可能性も大きいだろう。

(今週は重要週)
今週は日銀支店長会議で景気動向が探れる。また注目の賃金動向も発表される。貿易統計も注目したい重要週だ。

(米国のほうが「貯蓄から投資」への動き)  
前回も触れたが米国は「貯蓄から投資」への動き。資産立国へ。日本も、さらに引き離されないようにしないといけない(日本は国内株と対外純資産を利上げと円買い介入で大きく毀損する動きがあった2024年)。
トランプ次期大統領は、法人税率を現行の21%から15%に引き下げると表明したほか、キャピタルゲインと配当への課税引き下げについて協議していると述べた。
国民の資産が増えないと税収も増えないだろう。
石破茂首相は国会で金融所得課税の強化を現時点で検討することは考えてないとの自身の発言について、「もうやらないとか、そんなことを申し上げているのではない」と語ったが、米国とは逆に金融所得課税のことは頭の中にあるようだ。日本市場が活性化しない要因の一つだ。

(日銀は辛抱)
直近の日銀金融政策決定会合では、基調的な物価が着実に底上げされ「利上げを判断する局面は近い」ものの、「現段階では米国経済の不確実性が一巡するのを今しばらく注視する辛抱強さも必要だ」との意見が出されていたことが明らかになった。また植田総裁は、利上げのための注目ポイントとして来年の春闘の動向と米国の次期政権の経済政策運営を挙げた。

*米ドル「通貨6位(昨年首位)、株価(NYダウ)10位(昨年9位)、さあトランプ氏の実践が始まる。現状経済は大きな問題なし」
(24年は最強通貨)
24年は最強通貨。特にトランプ氏が大統領選で勝利してからは「トランプトレード」(金利上昇、ドル高、資源高観測)でドルが買われた。

(成長・インフレ見通し)
IMF予想では、成長率は2024年が2.8%、25年が2.2%。消費者物価は24年が3.0%、25年が1.9%、経常収支が24年がGDP比マイナス3.3%、25年がマイナス3.1%、失業率が24年が4.1%、25年は4.4%となっている。

(減税、関税引き上げ、不法移民撤去は)
1月20日よりトランプ政権が始まる。大胆な目標(減税、関税引き上げ、不法移民撤去)は正式に掲げられるのか。2年後の中間選挙へ向けて結果を出すには急がねばならないが、国内外には抵抗戦力も多い。時間との戦いともなる。

(前回もトランプ氏はドル安を望んでいたが結果は)
トランプ氏は前回の大統領就任前後に「円、人民元、メキシコペソ」を取り上げ、「通貨を高くしろ」と主張したが、高くなったのはメキシコペソだけだった。円はさらに円安、元はドル主軸のバスケット制なのでドルに少し遅れてついていくだけとなった。ただトランプ氏はそのような通貨の動きに対して対応せず市場に任せた。

(年初のFRB発言、ハト派ではない)
FRB=2人のFRB当局者、インフレ抑制の戦いはまだ勝利していないと強調した。 サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は過去2年間で物価圧力の緩和に大きな進展があったにもかかわらず、インフレ率は依然「憂慮すべきほどわれわれの目標を上回っている」と述べた。
FRBクーグラー理事も「明らかに私たちの仕事はまだ終わっていません。私たちはまだ2%に達していないので、私たちの目標は間違いなくそこに到達することであり、仕事がまだ終わっていないことは分かっています。」と語った。

(景気ちょっと減速、インフレは落ち着き)
最新のアトランタGDPナウ(1/3付け)は2.6%から2.4%へ引き下げ、12月CPIナウは2.86%、コアは3.28%、サプライチェーンインデックスは-0.32。
1月フェッドウオッチでは89.3%の確率で据え置き。

*ユーロ「通貨11位(昨年5位)、株価13位(昨年5位)DAX)、イメージは弱いが、それほどでもない」
(イメージは弱いが、それほどでもない)
2024年は景気減速、ウクライナへの軍事費提供の重荷、仏独の政局などの要因、また年後半はトランプディールもあり弱かったが、結果は12通貨中5位と踏ん張ったユーロ。経常黒字が支えている。

(成長・インフレ見通し)
IMF予想では、成長率は2024年が0.8%、25年が1.2%。消費者物価は24年が2.4%、25年が2.0%、経常収支が24年がGDP比2.6%、25年が2.4%、失業率が24年が6.5%、25年は6.4%となっている。

(ラガルドECB総裁)
ラガルドECB総裁は、2%インフレ目標が視野に入っていると指摘した。「2024年にはインフレ率の引き下げで大きな進展を遂げた。25年は、予想通りに、そしてわれわれの戦略通りに目標を達成する年になると期待している」と述べた。「当然ながら、インフレ率が中期的な目標である2%で持続的に安定するよう、われわれは努力を継続する」とした。
ユーロ圏の消費者物価上昇率は昨年鈍化し、9月には目標を下回ったが、ここ数カ月は再び上回っている。ラガルド総裁はは、当面は現在の水準付近で推移するとの見方を示している。

(今週は消費者物価に注目)
今週は12月消費者物価の発表で予想は2.4%、前回は2.2%。

(一方、長期超金利は上昇)
ドイツ債利回りが6週間ぶりの高水準2.4%をつけた。ドイツ失業率が12月は予想を下回る増加となったとの発表が、景気低迷の続く同国経済にとって幾分の支援材料となった。
また ドイツ12月の失業者数は前月比1万人増の287万人で予想より小幅な増加にとどまった。予想は1.5万人増。 ユーロ圏経済が上向けば、ECBは金利引き下げにより慎重になる可能性がある。

(フランス政局)
フランスの2025年予算案についてはロンバール新経済財務相が議会での承認を取り付けられるか確信が持たれていない。経済財務相は、政治の混乱で取りまとめが遅れている2025年予算案について、成長を守るため「(国内総生産=GDP比)5%を若干上回る」財政赤字を目標とすると述べた。 「成長を守るために、赤字を5%を少し上回る程度にする必要がある。成長を守るため、財政赤字の削減は課税よりも公共支出の削減を通じて行わなければならない」と述べ、増税はするとしても「非常に限定的」になるとの見込みを示した。
ムーディーズ、フランスの信用格付けを「Aa3」に引き下げている。従来の格付けは「Aa2」。

*ポンド「通貨12位(昨年2位)、株価9位(昨年15位)、1月13日週が重要、成長と物価」
(24年はドルに次ぐ2位と強かった)
昨年は2位と強かった。比較的高金利で、EUほど経済指標が一様に弱いこともなくマチマチで来年はOECDが成長見通しを前回の1.2%から1.7%に引き上げていることもあった。ただ24年後半はトランプトレード(米金利上昇・ドル高・資源安)もあり対ドルで弱含んだ。

(成長・インフレ見通し)
IMF予想では、成長率は2024年が1.1%、25年が1.5%。消費者物価は24年が2.6%、25年が2.1%、経常収支が24年がGDP比マイナス2.8%、25年がマイナス2.8%、失業率が24年が4.3%、25年は4.1%となっている。

(注目指標は1月13日からの週に)
1月13日週は、12月消費者物価、11月国内総生産、11月鉱工業生産、11月貿易収支、12月小売売上と成長に関わる指標やインフレ指標が発表される。

(成長率は弱い)
3Q・GDP確報値は前期比横ばいに下方修正された。速報値は0.1%増だった。労働党政権発足後の3カ月間の国内経済がゼロ成長だったことが明らかになった。
英中銀は、インフレリスクを考慮し政策金利を据え置く一方で4Qの成長率予測をゼロ%に下方修正した。 GDP下方改定は輸出需要の減退が原因で個人消費は堅調だったとし、25年は24よりも良くなるとの見方を示すものの、足元のデータは経済にあまり勢いがないことを示唆すると述べた。 リーブズ財務相は、GDP統計は前保守党政権による「15年にわたるネグレクト」後の大きな試練に直面していることを示したとした上で、現労働党の予算は持続可能な長期成長を生むと述べた。

(経済の不確実性が高まっている)
中銀は12月19日、政策金利を4.75%に据え置いた。金融政策委員9人のうち6人が据え置きに賛成、ラムスデン副総裁とディングラ、テイラー委員は0.25%の利下げを主張した。
ベイリー総裁は、「経済の不確実性が高まっているため、来年いつ、どの程度利下げを行うかを確約することはできない」と述べた。

*豪ドル「通貨3位(昨年8位)、株価7位(昨年14位)、24年後半失速した要因が25年どうなるか」
(24年後半失速した要因が25年どうなるか)
豪ドルは2024年後半失速した。対円で一時109円まで上昇していたが、24年終値は97円台。日銀の円買い介入、最大貿易相手国の中国景気の減速、トランプトレードによる米金利上昇とドル高、資源価格の下落によるものだった。そのうち中国は景気回復へ向けて大胆な対策を取り始めた。ただ結果はまだ出ていない。

(成長・インフレ見通し)
IMF予想では、成長率は2024年が1.2%、25年が2.1%。消費者物価は24年が3.3%、25年が3.3%、経常収支が24年がGDP比マイナス0.9%、25年がマイナス1.1%、失業率が24年が4.1%、25年は4.4%となっている。

(今週は11月消費者物価の発表)
今週は11月消費者物価の発表。予想は2.3%、前回の2.1%より上昇か。インフレターゲットの2-3%内で推移している。RBAは12月10日、政策金利を4.35%に据え置いた。ただ、インフレが目標に向かっていると「ある程度確信」していると表明、タカ派的な文言を和らげた。3Q・GDPが予想を下回ったことを受け、RBAがハト派に転換すると予想。ブロックRBA総裁は、2月6日にも利下げに踏み切る可能性について聞かれると「分からない、基調インフレのさらなる進展を見る必要がある」と答え、決定までには四半期インフレ統計のほか、労働市場や消費関連の指標があると指摘した。

(財政悪化)
財政は、政府支出の増加と主要貿易相手国である中国の弱体化により、今後数年間でさらに深刻な赤字に陥ると予想されていることが、今年半ばの財政状況報告で明らかになった。総選挙は6カ月以内に予定されている。
中間経済財政見通しによると、予算不足額は今年度は269億豪ドルと若干縮小すると予測されているが、2025~26年には469億豪ドル(GDPの1.6%)にまで拡大し、その後2年間はGDPの1%以上を維持すると予想されている。
 予想される財政状況の悪化は、5月17日までに実施されなければならない選挙を前に、健全な経済運営という労働党政権の理念を構築しようと努めてきたチャーマーズ財務大臣にとって打撃となる。
財務省はまた、金利上昇が民間部門の活動を圧迫していることから、今年度および来年度における経済成長の見通しを若干引き下げた。

*NZドル「通貨5位(昨年10位)、株価14位(昨年11位)、リセッションで弱い。財政も悪化。中国景気頼み」
(リセッションでNZドルは弱い)
2024年は、12通貨中10位と弱かった。3Q・GDPは、前期比で1.0%減少。2四半期連続のマイナスで、景気後退に入った。減少幅は予想の0.2%を大きく上回った。2Qも1.1%減と大幅に下方修正された。積極的な利下げがさらに必要になることを示す内容となった。ウィリス財務相は「この後退は高インフレが経済に及ぼす影響を反映している」とし、「中銀は意図的に景気後退を起こし、それが成長を抑制した」と非難した。最大の貿易相手国の中国の景気減速も影響した。中国は2024年末から景気刺激策、金融緩和政策を打ち出しているが、まだ結果は出ていない。
 反発するとすればボリバン下限からのテクニカルなものとなる。

(成長・インフレ見通し)
IMF予想では、成長率は2024年が0%、25年が1.9%。消費者物価は24年が2.7%、25年が2.2%、経常収支が24年がGDP比マイナス6.3%、25年がマイナス5.0%、失業率が24年、25年も5.1%となっている。

(利下げの影響も少し)
12月消費者信頼感指数は100.2で、前月の99.8から上昇。高水準の住宅ローンに苦しんでいた家計が金利低下で好転し、3年超ぶりの高い数字となった。 経済にとって上向きな環境になりつつある。金利引き上げで意図的に引き起こされた異例の景気後退の後、金利引き下げが効果的な解決策として作用した。 中銀は昨年8月以来、政策金利を1.25%引き下げて4.25%としている。

(財政も悪化)
政府の財政状況報告では、財政黒字への回復は2028/29年までさらに1年延期される可能性が高い。
2026年から2028年にかけて借入額が約60億ドル増加する可能性がある。景気低迷と税収減により財政黒字への回復がさらに遅れ、借入金の増加を招くため、政府の財政見通しは悪化すると予想される。