2024年11月の選挙で、ドナルド・トランプ氏が二期ぶりに大統領の座に返り咲いた。同大統領が掲げる方針や政策は、前職において敷いてきた政策や今回の選挙活動を通して判明しつつある。すでに、金融市場でもマーケットに与える影響は論じられているが、同大統領の主要政策には、ドル高・円安傾向を推し進めるものが少なくない。
本記事では、各政策がマーケットにどんな影響を与え、円安が進むと考えられるのかについて紹介しよう。
トランプ大統領の主要政策がドル・円相場に与える影響
トランプ大統領の政策に関する細かい部分については、徐々に明らかになるだろう。ただ、前大統領時の主要政策、あるいは選挙で声高に主張していた政策については、粛々と実行される可能性が高い。
というのも、11月の大統領選と同時期に行われた連邦議会下院選挙において、共和党が過半数を獲得したことで、大統領職と上下両院の3つを同一政党が過半数勢力を占める「トライフェクタ」の状態に突入するからだ。
トランプ大統領が掲げる主要政策のうち、ドル高・円安につながる可能性があるものは以下の通りである。
① 保護貿易
トランプ大統領は前職時より主に中国の為替操作や補助金による国内企業の優遇を批判してきた。その方針は今回も引き継がれ、中国やその他の貿易相手国に対して、10~20%、中国に対しては60%程度の大規模な追加関税を実行することを公約として掲げている。関税が引き上げられれば、米国に輸出される海外からの製品の価格が上がるため、米国内ではインフレ圧力が高まりそうだ。
米FRB (米連邦準備制度理事会) は、米国景気をソフトランディング (軟着陸、ここでは米景気を急速に悪化させずに底打ち、反転させること) させるため、政策金利の引き下げに対して慎重な構えを見せているが、仮に国内でインフレ圧力が高まれば、再び利上げを考えざるを得ない。米国の利上げは、日米金利差の拡大につながるため、円安・ドル高の要因になる。
② 大型減税
トランプ大統領は2017年の前職時に行った個人所得税の減税の恒久化と、法人税率の21%から15%への引き下げを公約として掲げる。この大規模減税が実行された場合、2026~2035年度で米政府の財政赤字が7.5兆ドル (約1,162兆円、1ドル155円換算) まで膨れ上がるもようだ。財政赤字の拡大は長期金利の上昇につながり、やはりドル高・円安の要因のひとつになるだろう。
③ 移民抑制
移民抑制については、トランプ大統領が掲げる主要公約のひとつとして広く知られる。実際、トランプ氏の前職時代には新型コロナのパンデミックの影響もあり、移民数は急減した。その後、バイデン大統領時に移民数は増加に転じたが、トランプ氏は「必要に応じて州兵や軍を動員して強制送還に着手する」など、強い文言で移民抑制を公約としている。これによって、移民数は再び大きく減少する可能性が高い。
移民数の減少は、賃金上昇を背景としたインフレ圧力の増大につながり、①と同様、利上げによるドル高・円安シナリオの実現性を高めることになりそうだ。
「円キャリートレード」の再燃で円安が加速 ?
もうひとつ、トランプ大統領の政策とは直接的な関係はないものの、円安の要因として挙げられるのが「円キャリートレード」の再燃である。円キャリートレードとは、金利の低い日本円で資金を調達し、ドルに換えてリスク資産などに投資を行う取引のことを指す。日銀の長期にわたる超低金利政策の結果、円キャリートレードが膨張。長期的な円安・ドル高の要因となってきたわけだ。
この取引の急速な巻き戻し (保有していた米ドルを売って日本円を買う取引) が、2024年8月5日の金融相場で起きた日本株の暴落と円の急伸につながったとされる。この「令和のブラックマンデー」によって、円キャリートレードの大部分が解消されたようだが、その後、日銀が継続的な利上げには打って出ない可能性や、米FRBの利下げに対する慎重姿勢によって、市場では「円キャリートレードが再燃するのでは」との見方が浮上。この先、同トレードが再び増え続けるかは定かではないが、2024年9月中旬以降の円安加速に関しては、円キャリートレードの復活が要因との見方もある。
トランプ氏の3つの主要政策と「円キャリートレードの再燃」によって、少なくともトランプ大統領が在任中の2029年までは、円安・ドル高傾向となる可能性があるだろう。そう考えると、中長期的な円安に対応するために外貨預金、それも資産として安全度の高い米ドル預金を保有しておくべきだ。
「円安による資産減少リスク」への意識が重要
ここまで見てきたように、トランプ大統領の主要政策は、いずれもドル高・円安につながるものが少なくない。その一方で、「長期的には、保護主義政策や移民抑制、財政悪化によって米国の景気が悪化することで、ドル安・円高が進む可能性がある」というシナリオがあることも、念頭に置いておく必要はある。
もっとも、現状ではドル高・円安シナリオの方が実現性は高い。そのため「円安による資産減少リスク」から大事な資産を防衛するためにも、日本円だけではなく、資産の一部を外貨で保有しておく必要がある。この場合、「どの外貨を選ぶか」がポイントになるが、やはりまずは世界の基軸通貨であり、安全度の高い米ドルが第一候補になりそうだ。
特に、外貨預金を活用した米ドルの保有は、円安による資産目減りリスクへの効果的な対策となる。外貨預金では、円安時に為替差益が期待できるほか、日本円預金より高い金利での利息収入も見込める。一方で、為替手数料や為替変動リスクもあるため、運用にはタイミングや長期的な視点が欠かせない。
こうした特性を踏まえ、まずは信頼性の高い米ドルを活用し、外貨で資産を分散することで、リスクに備えつつ着実に資産を守っていきたい。
(提供:大和ネクスト銀行)
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