世界の金融市場に大きな影響力を持つ米国経済。経済規模は世界トップであり、米ドルは世界各地で活発に取引されている。それだけに、米国経済に関する指標やイベントの注目度は非常に高い。世界中の金融機関や企業、投資家の目が集まり、為替市場や株式市場を大きく動かす影響力を持つ。

本記事では、米国の経済指標やイベントに着目し、そのなかでも特に注目度の高いものと、その理由を紹介する。

米国の重要経済指標とイベントを列挙

米国の経済指標は何を見るべき ? 為替相場を動かす主要指標とその動向
(画像=Volha / stock.adobe.com)

さまざまな米国の経済指標やイベントのなかで、特に重要と見られるのが以下の5つだ。

  • 雇用統計
  • FOMC
  • 消費者物価指数 (CPI)
  • ISM製造業景況感指数
  • 小売売上高

そのほか、「GDP (国内総生産) 」「個人消費支出」「鉱工業生産指数」「住宅着工件数」なども、景気や米国経済の動向を計るうえで重視されている指標として挙げられる。

各指標・イベントの詳細と「重要な理由」

上述した指標・イベントについて、その詳細と重要な理由について解説する。

雇用統計

米国の指標やイベントのなかで最も注目すべき指標が「雇用統計」だ。雇用統計は、文字通り米国の雇用に関するデータである。米国経済の根幹ともいえる指標の一つで、毎月第1週目金曜日の朝8時30分 (日本時間で21時30分、冬時間は22時30分) に発表される。

雇用統計が注目されるのは、単に「雇用状況が米国経済の根幹だから」という理由だけではない。米国の金融政策を司るFRB (米連邦準備制度理事会) は、「物価の安定」と「雇用の最大化」を基本理念、目標として掲げており、雇用統計の結果は米国の金融政策に大きく影響する。それだけに、世界中の投資家が注視しているのだ。

雇用に関する指標としては、「雇用統計」のほかに米ADP社が集計・発表する「ADP雇用統計」がある。ADP雇用統計は、重要度は雇用統計と比較して劣るものの、雇用統計の2営業日前に発表されるため、雇用に関する先行指標として参考程度に注目しておくといいだろう。

FOMC

Federal Open Market Committeeの略で、日本語では「連邦公開市場委員会」と訳される。米国の中央銀行に相当するFRBが開催する会合で、参加メンバーはFRBの理事と地区ごとの連邦準備銀行の総裁で構成される。約6週間ごとに年8回開かれるこの会合では政策金利などの金融政策が決定されるため、注目度は非常に高い。

また、約3週間後に公表される同会合の「議事録」も、参加メンバーの主張や意見の詳細がわかるため注目される。

消費者物価指数 (CPI)

主に都市部の商品やサービスの価格を指数化したもので、前月の指数が翌月中旬ごろに発表される。項目は食事や自動車、家賃、医療など複数に細分化されており、住居関連の比率が高くなっている。物価全体の動きを示す「総合指数」から、天候などによって相場が大きく変動しやすい生鮮食品とエネルギー価格を差し引いたものを「コア指数」と呼ぶ。

コア指数は、総合指数より経済の実態に即した指標としてより注目度が高い。「雇用統計」の項目で説明したように、FRBは「物価の安定」を目標に金融政策を決定するため、同指数は多くの市場関係者や投資家が感心を寄せている。

ISM製造業景況感指数

ISM (全米供給管理協会) が300社以上の製造業の「購買担当役員」に対して行ったアンケートをもとに算出され、毎月第1営業日に発表される速報性の高い指数だ。製造業は米GDPの16%程度を占めており、個人消費と並ぶ重要指標として注目される。一般的に数値が50%を上回れば「景気拡大」、50%を下回れば「景気後退」と判断される傾向がある。

2000年前後のITバブル以降、情報やサービス分野のGDPへの影響が増したため、同指数に加えて「ISM非製造業景況感指数」もチェックしておきたい。

小売売上高

米国の百貨店から小規模スーパーに至るまで、小売店約5,000社の月間売上高を集計したものだ。米国では個人消費がGDPの7割近くを占めるため、小売売上高は個人消費の動向に直結する指標として注目度が高い。

今後特に注目すべき指標・イベントは ?

やはり最大の注目指標は、雇用統計である。雇用統計の結果や傾向によって、為替や株式相場が大きく動くことは決して珍しくない。雇用統計発表の当日は、日本でも複数のYouTubeチャンネルにおいてリアルタイムで動向をチェック、あるいは分析する「生配信」が行われていることからも、影響の大きさがうかがえる。

また、「消費者物価指数」の推移も注目しておくべきだろう。「消費者物価指数」がFRBの想定以上に上昇した場合、FRBは利下げをストップさせる可能性がある。ストップさせるだけではなく、インフレ抑制を目的に「利上げ」に転じるシナリオも否定できなくなる。

さらに、「小売売上高」の変化にも関心を持っておきたい。米国は個人消費がGDPの7割近くを占めており、小売売上高の動向次第で景気が大きく上下に動きかねないからだ。

今後の資産運用のポイント

2024年は、FRBがインフレ抑制の観点から行ってきた「利上げ政策」から「利下げ政策」へ転換した節目の年となった。2025年以降、FRBによる利下げの「回数」や「幅」がどうなるのか、世界中の投資家が固唾を飲んで見守っている。もし、市場の想定より利下げのペースが早かったり、あるいは幅が大きかったりすれば、日本円やその他の国・地域の通貨との金利差が縮小することで、米ドルが売られる (ドル安) 公算が高まる。

今回は、米国の経済指標やイベントのなかから、特に金融市場での注目度が高く、相場への影響が大きいものをピックアップした。これらの動向次第では為替相場が大きく変動する可能性があり、外貨建て資産を保有している場合は、その影響を考慮した柔軟な対応が求められる。例えば、ドル安が進む局面では、資産の一部を米ドル以外の通貨に分散することで、為替変動の影響を抑えられる可能性がある。ただし、どの通貨に分散するかやそのタイミングは慎重に検討したい。

(提供:大和ネクスト銀行


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