カンブリア宮殿,ガットリベロ
(画像=テレビ東京)

この記事は2025年3月20日に「テレ東BIZ」で公開された「物価高のご時世の救世主 「222」の激安戦略」を一部編集し、転載したものです。

目次

  1. 食品、日用品に大型家電も~小売価格の半額
    1. 激安の秘密その1~仕入れる商品は全て訳あり
    2. 激安の秘密その2~ネット通販の返品を一括買い取り
    3. 激安の秘密その3~在庫を抱える業者からまとめて仕入れ
  2. 脱サラに妻は猛反対~副業ビジネスを本業に
  3. 東日本大震災が転機~ネット販売から対面販売に
  4. TSUTAYAとタッグ~インドネシアで就労支援も
  5. ~村上龍の編集後記~

食品、日用品に大型家電も~小売価格の半額

川崎市のショッピングセンター「マーケットスクエア川崎イースト」にある「222(トリプルツー)」川崎港町店。新品や未使用の商品が小売価格の半額で買える激安店だ。

▼新品や未使用の商品が小売価格の半額で買える「222(トリプルツー)」川崎港町店

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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例えばティッシュ5箱489円が245円、30枚入りのマスク417円が207円。食品コーナーでは3食入りのインスタント麺441円が221円、人気エナジードリンク216円が108円だ。

客が「その時によって売っているものが違うので、次に来た時はなくなっていることがよくある」と言うように、店には1点だけの掘り出し物も。アパレルコーナーの靴は1足244円。家具コーナーでは9,980円のゲーミングチェアが4,990円に。客はまるでお宝探しのような感覚で、買い物を楽しんでいる。

▼家具コーナーでは9,980円のゲーミングチェアが4,990円に

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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都内に2店舗を出している「222」の町田店で、ひときわ多くの客でにぎわっていたコーナーがあった。小売価格169円のスナック菓子や175円のレトルトカレー、さらに259円のカップ麺が、半額よりもさらに安い22円均一だ。

▼「222」町田店、ひときわ多くの客でにぎわっていたコーナーがある

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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2024年は1万品目以上の食品が値上がりしたが、2025年はさらに多くの値上げが見込まれている。4月までの間で1万品目近くと、庶民の財布を直撃している。(※いずれも帝国データバンク調べ)

そんな中で「222」は関東と関西を中心に店を増やし、現在25店舗を展開。売り上げも右肩上がりで、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。

「222」が生まれた滋賀県で、運営するガットリベロの創業は2005年と、比較的若い企業だ。

ガットリベロ社長・荒木伸也(54)には、「使えるものが廃棄されてしまったり、世に出ていかないということが、何とかならないかなという思い」があるという。ガットリベロの商品の多くは本来ならば廃棄されるものだ。

激安の秘密その1~仕入れる商品は全て訳あり

体育館ほどの広さがあるガットリベロの倉庫。仕入れた商品が全て集まる場所だ。

その中には、輸送中などに外箱が破損してしまったもの。内部の商品は無事なのだが、「いいのか悪いのかこれが日本のルールで、少し問題がある外箱の商品は、通常の正規品から省いてしまうっていう流れがあります」(荒木)と言う。

ガットリベロは傷などで不良在庫になった商品を安く仕入れているのだ。

また、食品の裏を見てみると、どれも賞味期限間近。食品は賞味期限が迫り、ほかの小売店に卸せなくなったものを安く仕入れている。

激安の秘密その2~ネット通販の返品を一括買い取り

この日、1,000点以上の大量の箱が運び込まれた。この量を週に3日、仕入れている。全てネット通販で返品された商品だ。

▼ガットリベロは返品されたものをまとめて安く買い取っている

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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「1度お客様の手元に渡ったので、それを新品として売るには、もう1回商品の点検をしたり、パッケージ包装をやり直したりと、いろいろな手間暇がかかる」(荒木)

今やネット通販の市場規模は24兆円以上。これに比例して増えているのが返品の数だ。返品された物を再び新品として売るには、改めて検品しなければならない。その手間がかかるため、廃棄処分されることが多いという。

ガットリベロはこうして返品されたものをまとめて安く買い取っている。

現場のスタッフも、どんな商品が入ってきたのか、箱を開けるまでわからないという。この日、中身の椅子にはキャスターがついていなかったが、こうした物でも全て受け入れることで、さらに安くしてもらえるのだ。

「使えないものをいかにして再販していくか、そこを工夫して考えています」(荒木)

組み立て式の商品が入荷すると、まずは実際に組み立ててみる。その中で、余った部品などがあれば、すべてストックしておく。例えば、キャスターが1つだけ欠けていた椅子には、ストックしていた色違いのキャスターをはめ込んだ。ストックした部品を組み合わせ、販売できる状態にこぎつけるのだ。

「大量の部品のストックがあるので、寄せ集めて1つの商品を作ることもある」という。こうした自分たちでリメイクした商品も、激安で販売している。

▼ストックした部品を組み合わせ、販売できる状態にこぎつける

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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激安の秘密その3~在庫を抱える業者からまとめて仕入れ

この日、ガットリベロの本社を訪ねたのは化粧品メーカーの担当者。韓国の人気アイドルグループがモチーフとなった化粧品を大量に作ったが、売れ残ってしまったという。

デザインが違うものが10種類あり、もともと1つ880円で売っていた。これを業者は1つ30円で買い取ってほしいと提案する。それに対して、常務取締役・西川洋平は、客を呼び込む目玉商品として、1つ20円での買い取りを提示。それを22円で売り出すという。業者も思わず苦笑いするが、これで交渉は成立した。

続いて取り出したのは人気アニメのキャラクターがデザインされたハンドソープ、店頭では418円で売っていたが、1,800個以上の在庫を抱えているという。こちらは業者の言い値で、全ての買い取りを即決した。

業者からすると、在庫を抱えたままでは倉庫代などの維持費がかかってしまう。ガットリベロは、そんな過剰在庫に悩む業者の「駆け込み寺」にもなっているのだ。

「商品を作っている側からすると、過剰在庫の商品というのは絶対にある。そこを助けてもらえて、うちのメリットになるし、ガットリベロさんのいいところだと思います」(化粧品メーカー社長)

こうした戦略で安く仕入れているのだが、売り方にも特徴がある。売れないとどんどん価格を下げていくのだ。だいたい3カ月を目安に価格を下げていくという。さらにその先には11円均一コーナーまである。

▼3カ月を目安に価格を下げていき、さらにその先には11円均一コーナーまである

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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ガットリベロのビジネスは薄利多売。日々大量に仕入れる商品を、どんどん価格を下げて売り切り、倉庫の回転率を高めている。そうやって次々と商品をさばくことで、半額でもしっかり利益を出しているのだ。

最終的に行きつく先が、「プレゼントコーナー」。つまり無料であげてしまう。ちょっと欠けているがまだ使えそうな茶碗や、型落ちのスマホケースなど。ここまでやるから商品を廃棄することはほとんどないという。

▼最終的に行きつく先が「プレゼントコーナー」商品を廃棄することはほとんどない

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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「普通の小売店さんだったら捨てるしかないと思いますが。お客様が喜んでそこで利益が出るのなら、ウィンウィンかなというところです」(ストアマネージャー・鯉口隼人)

脱サラに妻は猛反対~副業ビジネスを本業に

荒木は子どもの頃から読書好きで、本を大量に集めていたという。

「棚に並べることも1つの趣味。多い時で600冊か700冊ぐらいはあったと記憶しています」

▼「棚に並べることも1つの趣味」と語る荒木さん

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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この趣味が荒木の人生を大きく変えることになる。

1970年、兵庫・尼崎市で生まれた荒木。小学5年の時、母がガンで亡くなった。

「母親は40歳で他界して、やりたかったこともいろいろあったと思います。やはり母親に対しては恥ずかしい人生は送りたくないなと」(荒木)

父親の男手ひとつで育てられた荒木は、早くひとり立ちしたいと、高校卒業後は就職の道を選ぶ。大阪で消費者金融の仕事につき、22歳の時、滋賀県に転勤となった。

そこで結婚もし、何気ない社会人生活を送っていたが、32歳の時、同僚が交通事故で亡くなってしまう。幼い頃に母を亡くしたことも相まって、いつしか荒木の心の中に、ある想いが生まれる。

「人の命ははかないな、一瞬にしてなくなってしまうなと。生きているからこそ自分ができることにチャレンジしないと、亡くなった人に対して顔向けできないなと」(荒木)

新たなチャレンジがしたいと、会社員を続けながらサイドビジネスを始めることを決意。そんな時に目に留まったのが、棚に並んでいた大量の本だった。

当時は今ほど広く利用されていなかったアマゾンで試しに売り出してみると、「登録して10分、20分したら1冊売れて、また10分したら1冊売れて。2,000円の本だったら1,500円とか、決して安くない金額で売れていく。すごく新鮮で、楽しかったです」(荒木)

求める人に直接届けば、価値ある価格で買ってくれる。ネット販売の副業に夢中になった荒木は、週末になると古書店をまわり、仕入れにも励んだ。数カ月後には、月に30万円近く稼ぎ出すようになり、副業ではなく本業にしようと考えた。

猛反対したという妻の純子さんは、当時のことをこう語る。

「『生活をどうしよう』と思いました。準備があって『これやりたい』ではなくて、『やるからね』っていう、どっちかっていうと決断に近い」

荒木は覚悟を伝えようと、「今の会社の給料日に、今と同じ金額を必ず入金する。それが1円でも少なかったり、1日でも遅れたりしたら、すぐに辞める」と、妻に約束した。

2005年、荒木は会社を辞め、起業した。

「ちゃんと毎月いただいています。最初は『こんなにくれるけど大丈夫なんかな』と心の中では思っていました。やっぱり心配はしましたが、そこは言うべからず(笑)」(純子さん)

東日本大震災が転機~ネット販売から対面販売に

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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滋賀・野洲市で起業した荒木。最初は自宅の押し入れをデスクスペースにしていたという。その後、古本以外にも、CDやDVD、ゲームソフトも仕入れ、インターネットで販売。売り上げは順調に伸び、3年を過ぎた頃には、従業員を雇うまでになった。

大きな転機が2011年に発生した東日本大震災。被災した倉庫業を営む知人から、荷崩れした家電や雑貨など大量の商品を3,000万円で買い取ってほしいと相談されたのだ。

荒木は資金がなかったにもかかわらず、即座に買い取りを決断した。

「当然3,000万なんか借りたことがなかった。借り入れをして経営していくっていうスタイルじゃなかったので、たぶん不安は何をしてもあるはずなんです」(荒木)

荒木は銀行に頭を下げ3,000万円をなんとか工面。中身が無事な物を「訳あり商品」としてネットで販売し始めた。すると、このことが他の業者にも伝わり、さまざまな買い取り依頼が舞い込むようになる。入荷する商品がどんどん増え、今度は荒木自身が在庫に悩まされることになった。

そこで思いついたのが対面での直接販売。倉庫の片隅に商品を並べ、お試しの実店舗をオープンさせた。棚などの満足な設備はなく、電気すら通っていない状況だったという。

▼倉庫の片隅に商品を並べ、お試しの実店舗をオープン

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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「商品を並べて、お店の外へ出て、道行く人に『ちょっと安いですよ』みたいな呼び込みをして、怪しいことをして入ってもらったのですが、最初は皆さん『え?』とけげんな顔をされました」(荒木)

すると、あまりの安さに驚いた客たちの口コミで、すぐさま大盛況に。暗くなってもスマホのライトを頼りに商品を探すほど、客足は絶えなかった。

「インターネット通販がどんどん発達して主流になってきたんですけど、どこかでお客様はお買い物を楽しみたいと感じたんです。そっちのほうに切り替えていくのもいいかなと」(荒木)

掘り出しものがないかと、宝探しのように商品を探す客たち。荒木は、訳あり商品だからこそ、直接確かめて買ってもらったほうがいいと気づいた。

そして2018年、「222」1号店を滋賀・栗東市にオープンしたのだ。

▼2018年、「222」1号店を滋賀・栗東市にオープンした

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TSUTAYAとタッグ~インドネシアで就労支援も

川崎市の「222」川崎港町店に長蛇の列ができていた。この日は2月22日。店名にちなんで合計金額からさらに22%割り引く、年に一度の大セールだ。

店内がごった返す中、バックヤードで作業に没頭していたのは、荒木の一人息子、ゼネラルマネージャーの亮太郎。大学卒業後、ガットリベロに入社した。

「ガットリベロとしても店舗数が増えてきた時期だったので、自分もその一員としてどんどん大きくしていきたいなという思いもありました」(亮太郎)

亮太郎は今、「222」の拡大戦略の一端を任されている。力を入れているのが、ショッピングセンターなどの催事スペースに期間限定の店を出すことだ。

さらに2月からTSUTAYAともタッグを組み始めた。栃木・さくら市の「ビッグスワンTSUTAYA」さくら店。店内にポップアップショップを設け、トリプルツーで扱う商品の一部を売り出そうというのだ。(※栃木・さくら店は販売終了)

まだテスト販売だが、これが軌道に乗れば全国のTSUTAYAで展開し、販路は大きく広がる。TSUTAYAにとっても、新たな客を呼び込む起爆剤になる、と期待を寄せる。

「TSUTAYA自体が配信の台頭でレンタル事業が厳しくなっているので、うまくテストが成功して、全国の加盟企業様に広げていければ」(「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」商品開発本部・藤永弘昌さん)

一方、荒木が挑戦する新しい事業がインドネシアの若者の就労支援。現地の日本語学校と連携し、日本で働きたい若者たちを教育している。

▼荒木さんが挑戦する新しい事業がインドネシアの若者の就労支援

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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数年前、たまたまインドネシアを訪れた際、若者たちの純粋さに心を打たれたのがきっかけだという。

実は受け入れ先も決定済み。その1つが滋賀・草津市の琵琶湖のほとりにある老舗旅館「びわこの千松」。インドネシアの若者たちへの期待は、大きいという。

「外国人のお客様への発信に期待しているところが大きいです」(社長・濱出昇一郎さん)

※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~

カンブリア宮殿,ガットリベロ
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15年間の会社員生活を続ける中、自分の可能性を1度確かめてみたい。本をAmazonで売るビジネスを始めた。出品したらすぐに売れた。

東日本大震災が起きた。倉庫を持つ知人が、「地震で落下して箱が破損し、出荷できなくなった商品がある」。全ての商品を買い取る場合は3,000万~4,000万円かかる。「明日には買い取って欲しい」即決した。宿命のようなものを感じた。

自分にできることは、廃棄扱いになった商品を買い取って、それを活かすことだ。什器が間に合わなかったので、段ボールに商品を並べた。客たちはスマホのライトで商品を探していた。スマホのライトで商品を探す、猫が見えるようだ。

<出演者略歴>
荒木伸也(あらき・しんや)
1970年、兵庫県生まれ。2005年、インターネット販売の「かっぱ堂」設立。2015年、ガットリベロへ商号変更。2018年、「222」1号店をオープン。2021年、川崎店オープンで関東進出。