YKKは東京の企業“東京の本社を地方に移転”にみる法人税減税のギモン.png

安倍晋三首相が掲げる「地方創生」が本格的に動きだそうとしている。27日には地方創生に関する長期ビジョン及び総合戦略の閣議決定を予定している。東京など都市部に本社がある企業の地方への移転を促すため、法人税減税による優遇措置や自治体による地方税減税などの減収分を政府が地方交付税で補填することも検討されている。これにより地方で雇用が創出され、止まらない地域経済の衰退に歯止めをかける考えだ。

東京、大阪、名古屋といった三大都市圏以外へ移転をした場合、土地・建物の取得など移転にかかる費用の7%を法人税から控除できるようにしたり、移転先で従業員を雇用した場合、一人あたり最大140万円まで将来4年間にわたり法人税を減税できる措置も検討されている。今後、対象地域の選定など詳細を詰めていくが、適用第一号となりそうなのがファスナー大手のYKK株式会社になりそうだ。


本社機能の一部を移転するYKK

YKK株式会社(東京都千代田区)は本社機能の一部を富山県黒部市へ移転を2012年から徐々に進めている。2011年に発生した東日本大震災を受け、災害等の緊急時でも本社機能が継続できるよう機能の分散を実施。YKKの開発・製造拠点がある富山県黒部市を移転先とし、すでに2012年には法務部門など本社機能の一部の移転を完了している。

北陸新幹線は2015年3月14日に開業を予定している。これにより富山県は日帰り圏内となり、利便性は飛躍的に高まる。東京から本社機能の一部として経理、人事といった間接部門を移転させても問題は少ないといった判断だ。2012年からすでに黒部で経営の意思決定の場である役員会の開催も行われており、BCP(事業継続計画)の視点からも必要な措置だ。同社は北陸新幹線の開業に合わせ2015年3月には全体の約2割にあたる300人規模の大規模な本社機能の移転を計画している。

YKKが富山県へ本社機能の一部を移転させるのは、創業者の影響も大きいだろう。もともと創業者の吉田忠雄氏は富山県出身であり、1955年に製造を開始した黒部工場は開発・製造拠点として60年にわたり同社のメインとなっている。本社機能の一部を富山県へ移すのも理解できる動きだ。