2015年の相続税の改正による課税強化を目前に控え、生前対策が重要になってきました。生前対策の中でも、最も簡単で効果的なのが「贈与」です。贈与であれば、思い通りに財産を処分できます。贈与に関する優遇措置もありますので、その活用の仕方について今回まとめてみたいと思います。
【参考】
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◉「贈与」を使こなして相続税対策
相続税が改正され、2015年1月1日から適用されます。主な改正点は
1基礎控除が引き下げられること(定額控除が5,000万円から3,000万円に引き下げ、法定相続人数比例控除が1人あたり1000万円から600万円に引き下げ)
2税率の変更(税率区分が8段階に細分化され、6億円超の税率が55%にアップ)
3未成年者控除、障害者控除、特別障害者控除の引き上げ
です。
3は別として、1と2は大幅な課税強化です。相続税課税対象者の裾野が広がるとともに、資産家の相続人には税率の大幅アップとなります。そして、相続税のアップに対応するためには、生前からの対策が必要です。そのひとつの方法が贈与の活用です。贈与税については、様々な非課税措置があります。これらを有効に活用して、子孫の負担を少しでも和らげてみてはいかがでしょうか。
◉贈与とは
生前に、財産を分与したい相手(親族でもそうでなくてもかまいません)に提供する方法として、「贈与」があります。贈与は、民法で売買や賃貸などと共に定められた契約行為です。自己の財産を無償で受贈者に与える法律行為(法律的な効果が発生する行為)なのです。
つまり「あげます」「もらいます」という契約です。双方が「あげます」「もらいます」と意思表示すれば、贈与契約は成立します(契約書はなくても贈与の効果はありますが、後々の相続税対策を考えると、契約書や受領書を取り交わしたほうがいいでしょう)。
また、贈与契約が成立すると、「あげます」と行った側は、贈与契約を履行する義務が発生します。贈与契約を撤回するためにはある程度の制約があります(書面によらない贈与の場合は、いつでも撤回できます)。
なお、「私が死んだら、あなたに財産をあげる」と、契約で決めるのが「死因贈与」です。一方、これを遺言書に書くと、「遺贈」になります。死因贈与は、相続や遺贈に比べて不動産取得税や登録免許税の負担が大きくなる場合がるので注意が必要です。
◉毎年110万円までの贈与税非課税枠を活用する
贈与には贈与税がかかります。贈与税は、受贈者つまり贈与を受けた人に課税されます。贈与税は暦年課税です。毎年の贈与額に対して課税されるのです。
そして、年間の贈与額に対して、110万円の基礎控除があります。
110万円を超える部分について、10%から50%までの税率で課税される仕組みになっています。つまり、年間110万円までの贈与は「非課税」なのです。毎年110万円ずつ、10年間で合計1,100万円を贈与しても非課税です。この非課税枠を使えば、節税できます。
例えば事業承継を行う際に、毎年110万円の枠内で株式等を贈与すれば、非課税になるのです(非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度を活用する方法もありますが、かなり面倒です)。生前対策としては最もシンプルな方法です。
なお、この基礎控除は、贈与の相手が相続推定人かどうかにかかわらず、受けることができます。