こんにちは。事業承継問題に取り組んでおります行政書士のS.Kです。
毎週木曜日にオーナー企業のための事業承継を連載しております。

会社様が事業承継をお考えになる際に始めに問題となりますのが、「一体何から手をつければいいのか?」ということのように感じます。お感じの通りで、事業承継は一世一代限りの大事業です。そのため、どのように進めれば良いのかわからないとお感じになるのが、むしろ当然のことです。

ここでは、会社様が事業承継をされる場合のテーマ(問題点)を整理していきたいと思います。また個人事業主様もご参考になるようにテーマを整理していきます。
(ただ、個人事業主様の場合には可能な限り法人化(会社化)されることを強くお勧めいたします。)

【参考】

オーナー企業のための事業承継vol1「事業承継の必要性と円滑化のための法制度とは?」
相続・承継でお悩みの方必見!大事な家族へ財産を残すための保険の活用法
閉じ込められる個人金融資産1500兆円
「オーナー経営者がこぞって企む相続税節税の㊙テクニック」


◉後継者の人選問題


会社様が事業承継に取り組まれる場合、最も重要となりますのは、後継者の選定です。

戦国武将、武田信玄が言った「人は城…」から始まる言葉があるように、会社にとって最適な後継者を見極め、選定することが何よりも重要となります。これは言うは易すしでありまして、先のような人を重視する言葉を残した武田信玄ですら、実際には後継者の人選を誤ってしまい、武田家の事業承継後、10年で新規勢力の織田家に一族郎党共に滅ぼされる憂き目を見る事になりました。後継者選定は極めて難しい問題です。
後継者人選の方法については、「このようにすればいい」という一つの答えを出すことはできません。現経営者様の経験と先見性によって選ばれることとなります。ただ、ご参考までに一つ後継者選定のポイントとして挙げられることとしては、必ずしも子息に限らず、役員や従業員等の第三者に譲ることも検討することが重要と言えます。
事業承継については、どうしても「家業を譲る」という意識が強いのが日本人の傾向です。そのため、無理に子息を後継者に据えるということ方向性だけで検討される方が多くおられます。しかし、経営者様もご実感くださるかと思いますが、経営は会社の意欲・能力がなければ、どのように線路を引いておいたとしても決してうまくいくことはありません。
特に、ご子息がサラリーマンなどで満足した生活を送っているところに無理に会社を承継させるために仕事を辞めさせることなどは全くお勧めできません。
会社の後継者は、広く役員や従業員などの第三者にも目を向けて選定されることがおすすめできます。その他にも共通した人選選定のポイントはいくつかあるのですが、記事を改めて述べさせていただきたいと思います。このように後継者の人選選定が事業承継における第一のテーマとなります。この人選選定のポイントは、会社様でも個人事業主様でも共通して参考にしていただければと思います。


◉経営権と資産の集中


次に、会社の経営権と資産(特に経営権)の集中ということが重要となります。
これは個人事業主様ではなく主として会社様におかれましての問題です。

株式会社において会社経営権を掌握するためには、少なくとも発行済株式数の51%以上を把握する必要があります。51%以上の株式を把握することで役員の選任等会社運営に関する重要事項を決定することが可能となります(会社法第309条第1項)。つまり議決権の過半数を後継者に集中させる必要があるということです。
また、工場や機材など事業用資産で経営者様個人名義のもの(例えば工場の敷地など)があれば、それは、会社名義とする必要があります。このように経営基盤としての人に次ぐ「モノ」を後継者と会社に集中することが第2のテーマとなります。「モノ」の承継については、遺留分という民法上の制度との関連で問題が生じるのですが、今回はテーマの指摘ということなので、割愛いたします。