こんにちは、金融業界を経験して現在は独立して金融アドバイザーをしているF.Uと申します。
今回は、事業オーナーの方向けに提案されることの多い「逓増定期保険」についての解説をお届けします。
法人から個人への資産移転や節税などを意図して利用されることの多い商品ですので、事業オーナーの方であれば一度は耳にし、提案を受けたこともあるかと思います。しかし、事業保険のため、一般的にはそこまで馴染みのある商品ではないでしょう。
この逓増定期保険とは、一体どのような商品なのでしょうか?
参考:
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◉逓増定期保険の概要
まず、逓増定期保険の保障内容から見ていきましょう。
逓増定期保険は、契約からある一定期間を経過した後に、保険金額が逓増(数量が徐々に増えること)していく商品です。つまり、死亡保障の金額が、保険期間のうち一定期間中は契約時の保険金額(例えば1億円)がそのまま推移し、後期期間には契約時に定めた後期期間の逓増率(年複利)に応じて毎年増加していきます。
なお、一定期間の年数は保険会社によって異なります。しかし、一般的には3年〜10年が多いといえるでしょう。
また通常、増加後の保険金額は、最初の保障額の5倍(例えば5億円)に達した後は、5倍のまま保険期間満了時まで推移します。
なお最近の流行としては、契約した時から数年間(例えば3年間)は、低解約返戻金期間として、解約返戻金額を低く設定し、その代わり、低解約返戻金期間を過ぎてから、解約返戻金を大きく増やす仕組みにしています。
◉節税対策?保険料の3分の1〜2分の1が損金計上可能
逓増定期保険のポイントは、保険料の半分もしくは3分の1が損金計上できることにあります。契約してから一定の年数を経ると、契約返戻金の額が増加しますので、払い込んだ保険料と釣り合うタイミングで解約をすると大きな節税効果を享受できます。(プルデンシャル生命など一部の保険会社では全損になるものが存在します。)
ただし、ここは注意が必要で、逓増定期保険にて損金計上できる部分は、解約をする際に利益計上されます。したがって、もし利益の出ている年に解約払戻金を受けますと、そこで節税効果が無くなってしまいます。
そのため、この保険は解約時の出口戦略の設計が極めて重要です。
なお、出口戦略の良くある例としては、経営者の退職金の発生が明確な場合、数年後に現状の業績が続かない可能性が高く解約時に利益確保を狙う場合、数年後に多大な経費がかかる予定があり赤字決算を防ぎたい場合などがあります。
また、以前の逓増定期保険を解約して、また新たな逓増定期保険に入る企業もあります。
逓増定期保険は契約して3年から5年で解約でき、支払った保険料とほぼ同額の解約返戻金があります。しかも節税ができるということですから、飛行機やコンテナーなどのリース商品などとともに、残された企業の最後の節税金融商品かもしれません。