賃金上昇


名目賃金の増加と実質賃金の改善

厚生労働省が3日に発表した1月の毎月勤労統計調査から、個人の所得が着実に伸びていることがわかった。

従業員5人以上の事業所を対象とした調査によると、労働者1人当たりの平均賃金を示す現金給与総額は27万779円であり、前年よりも+1.3%と、11カ月続けて拡大した。

項目別では、基本給などの所定内給与は24万275円で、+0.8%と2カ月連続で増加している。伸び率は2000年の0.7%に近い15年ぶりの高さとなった。所定外労働時間が22か月マイナスを回避したのに伴い、残業代などの所定外給与も1万9,804円で+2.6%と、22カ月続けてプラスとなっている。ボーナスなどの特別に支払われた給与は1万2,700円となり、+10.8%で3カ月連続の改善。昨年8月の+13.4%以来の高い伸び率を記録している。

就業形態別で見ると、正社員などフルタイムで働く一般労働者の賃金は、+1.3%と17カ月連続の増加。パートタイム労働者は-0.1%と減少するも、マイナス幅は2カ月縮小が続く。
このように、名目ベースでは賃金が確実に改善し続けていることがわかる。

物価の変動を考慮した実質で見ると、-1.5%と19カ月前年割れが続く。ただし、昨年5月の-3.8%を底にして、前月に続き-1.0%台にまで回復してきた。名目賃金の伸び以上に物価上昇の負担が重いことに変わりはないが、それも徐々に軽減されつつあるのが現状だ。


企業業績の改善が賃金を押し上げる

企業の業績が改善し続けていることが、賃金の持ち直しにつながっている。消費増税の影響が残り、個人消費や住宅投資は回復が不十分。だが、設備投資は戻りつつあり、外需拡大や円安で輸出も好調だ。このような需要の確保に向けて生産活動が活発化し、残業時間が長引いて残業代が増えている。こうした需要で企業も業績が好調なため、賞与も引き続き増大。

さらに、企業は経営環境が良いと、従業員の基本給を上げる余裕が出て来る。加えて、需要取り込みのために人員を確保しなければならないので、それを上げる必要も生じる。
そのため、賃金は名目では上向きになっているといえよう。

なお、消費増税や円安の影響で物価が押し上げられ、実質では依然としてマイナスが続く。それでも、原油安でその上昇度合いも鈍っており、マイナス幅は縮小してきた。


実質賃金もプラスに転じる可能性がある

今後も金融緩和が継続し、消費増税の影響も薄れていくと、国内の消費や投資は徐々に回復していくだろう。日本政策金融公庫の中小企業景況調査によると、売上見通しDIが昨年6月以降9カ月上昇中であり、その流れが続くとみられるそうなると、需要に対応するために、人員を確保する余力と必要がさらに強まる。同調査の従業員判断DIは一昨年12月から15カ月プラスが続いており、まさに人手不足感を表す。

そうした人員獲得において他社との競争に勝つには、賃上げをする必要が出て来る。またそうすることで、個人の所得が増え、消費や住宅投資をする余裕がさらに生じ、企業にとってもプラスになる。そのため今年の春闘でも全体的に、昨年以上に基本給を底上げするベースアップが実現する可能性が高い。

このように名目の賃金が上昇するのに対し、消費増税の影響の薄れと再増税延期、原油安を受けて、過度な物価上昇は抑えられる見通し。そうなると、実質でも賃金はプラスに転じていくだろう。

一般的に、金融緩和開始から2年程度で賃金の本格的な上昇に結び付くと言われており、2013年4月の量的・質的緩和からもうすぐ2年が経つ。個人の負担を重くする消費増税を途中で行ってしまったが、その影響が薄れれば、今後さらなる賃上げという恩恵を受けられるだろう。経済の好循環を確認するためにも、賃金の動向を注視していかなければならない。(ZUU online 編集部)

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