外食業界、戦国時代。吉野家・ココイチにみる成功するための経営戦略

外食産業の勝ち負けがはっきりしてきた。報道の通り、安売り路線であるマクドナルドHD <2702> が赤字転落する一方、カレーチェーン「ココイチ」を経営する壱番屋<7630>、吉野家HD <9681> は増収となった。明暗が分かれる外食業界の成功要因は何だろうか?各社の業績と戦略から成功の鍵を探っていく。

安売り系は客数減による売上高減へ

まず、外食産業の基本指標である客数と客単価を見ることで、安売り系の外食チェーンがどんな状況に置かれているのかを見て行きたい。

安売り系のチェーンは消費税が増税された2014年4月以降、客数減の悪循環にはまるり業績が転落している。例えば、マクドナルドHDの客数は、2013年4月~2015年2月の23ヶ月連続で前年同月比マイナスとなった。

特に、中国産鶏肉の品質問題が発覚した2014年8月以降は2015年2月まで7ヶ月連続で2桁の前年同月比マイナスとなった。

客単価で見れば、2014年6月まで前年同月比増をキープし、中国産鶏肉の品質問題発覚後の2014年11月も前年同月比―0.4%とほぼ横ばいをキープしているので、マクドナルドHDの業績悪化の主因は客数の減少である。

安売り系の外食チェーンにおいては、客単価はそれほど減少していないにもかかわらず、客数の減少により売上高が減少している。客数減少の要因としては、マクドナルドHDは中国産鶏肉の品質問題がうまくいかず、深夜営業を取りやめたことである。オペレーションの品質維持が客数維持のためには重要だとといえる。

「ココイチ・吉野家」客数増が好調な業績を牽引

壱番屋及び吉野家HDの客数と客単価の推移は、マクドナルドHDとは対照的だ。壱番屋の客数は平成25年10月以降、17ヶ月連続で前年同月比増となっており、客単価も平成25年12月以降、15箇月連続で前年同月比増となっている。

ただし、今期の客数の前年同月比比率は105.0%であるのに対し、客単価は101.3%であり、壱番屋の好調な業績を牽引しているのは客数増である。また、吉野家HDは消費税増税に伴う値上げを2014年4月に行ったが、その後は2014年10月、11月を除き客数は前年同月比減で推移している。

しかし、今期の客数は前年比97.4%であり、それほど落ち込んでいない。また、今期の客単価は前期比108.2%であり、客数の落ち込みより客単価の増加が大きいことが今期の好調な業績要因である。

また、吉野家の業績で特筆すべきなのは、10月、11月だ。客数客単価がともに前年同月比プラスになっているのである。これは、2014年10月22日に「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」を再発売したことが原因と思われる。ゆえに、商品やその他の方策で客数を増やすことが好調な業績の要因と考えられる。

客数増のためのユニークな試み「魚べい」の回らない回転寿司

外食産業において、客数増を図るために大胆な試みを行い、業績を伸ばしているのが元気寿司 <9828> である。

元気寿司の平成27年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比8.9%増の219億円。営業利益が前年同期比49%増の10億98百万円。当期純利益が前年同期比23%増の8億1600万円となり、第3四半期では過去最高を更新した。

元気寿司の好調な業績を牽引しているのは、フルオーダー型の回らない回転寿司チェーン「魚べい」の展開である。元気寿司は現在、「魚べい」に経営資源を集中させる戦略を採用しており、平成25年9月と平成26年9月の比較では、「元気寿司」ブランドの店舗数は4店舗減らした一方で、「魚べい」ブランドを10店増加し、全体の3分の2の店舗を同ブランドへと変更している。

フルオーダー型回転寿司チェーンのメリットは、客の滞在時間を短くできることにより回転率を高め、客数を増やせることにある。日本経済新聞によると、フルオーダー型「魚べい」渋谷道玄坂店は客の滞在時間が約30分と、既存店より3割短く、回転率を高めることで客数増につなげている。

また、注文を受けてから寿司を作るために、従来の回転寿司に比べて商品の廃棄を劇的に減らすことが可能となった。日経トレンディによると、「魚べい」渋谷道玄坂店の売上高は既存店の1.5倍に拡大したとのことである。

外食産業の成功要因は「客数増」

これまでの各社の取り組みを見ると、外食産業の成功につなげるために重要な要因は、「客数増」だといえる。商品の魅力を高める。回転率を高める。客数増を図るための方策は様々であるが、最終的に「客数増」につながるかが、売上増には不可欠だ。(ZUU online 編集部)