中国人民銀行(中央銀行)は2015年2月28日、およそ3カ月ぶりに、政策金利である預金と貸出の基準金利(期間1年)の引き下げを決定した。3月1日からともに0.25ポイント引き下げ、それぞれ2.50%、5.35%に定めた。

そして預金金利の上限を、従来の基準金利の1.2倍から1.3倍に拡大する。預金金利の幅を拡大し、金利の自由化を進めた形だ。政府は現在、中国経済が減速している現状を懸念し、金利引き下げで内需を刺激する方針である。


海外でショッピングを楽しむ中国人観光客、一方で国内消費に陰り

とはいえ、日本国内をみると、多くの中国人観光客が依然として大量消費をしている。景気の減退で、サイフのヒモを締めようとする様子は一切見られない。今年の旧正月も、中国人観光客が日本の都市部の電気街やドラッグストアに詰めかけ、日本人店員が対応に追われるシーンが何度もメディアで報じられていた。

実際、中国の日本大使館は今年の春節直前に中国人に対して、発給したビザ件数が史上最高だったと発表。円安やビザ発給条件が緩和されたことが、中国人観光客増加の要因の1つとみられている。

一方で、国内をみると、春節期間中、全国の小売・飲食業界の売上高は6780億元で、前年同期に比べて11%増加した。同業界の地域別での売上高をみると、青海省は12.8%、上海市は12.6%、広西省と重慶市は12.4%と、それぞれ増加していた。

ただ、一部の中国メディアは、海外メディアの記事を引用し「伸び率ではここ数年で最低であり、景気の減速感が次第に増してきた」と事実を報じている。海外でモノを大量に購入する大勢の中国人が見られる一方で、お膝元となる中国国内では消費に陰りが見え始めている。これが現在の中国の真実の姿といえそうだ。


金融自由化で銀行同士の競争激化

中央銀行が預金と貸出の基準金利を引き下げたことで、銀行の金利にも影響が出るのだろうか。2015年3月20日付の騰訊財経によると、中国5大銀行は預金利率を調整した。1年ものの定期預金利率をみると、建設銀行が2.9%、その他(中国工商銀行、農業銀行、交通銀行、招商銀行)は2.75%に、それぞれ調整した。

一方で、地方銀行の南京銀行、浙商銀行は3.20%に定めた。専門家は銀行金利の自由化で銀行同士の競争が激化すると指摘している。預金金利の低下に加え、利回りがよい多様な金融商品が増えている事実を述べた上で、今後、消費者の資産運用による投資が増えるとの見解を示した。


破産危機の地方政府、これまでの資金投下のモデルはもはや限界

内需を刺激して景気にテコ入れすることは、巨額の負債を持つ地方政府にとっても非常にうれしいニュースだ。中国メディア、BWCHINESE中文網によると、2013年の地方政府の負債額は17兆9,000億元で、ドイツのGDPを上回るレベルに達しているという。

地方政府はこれまで地方企業支援、インフラ投資、農業、不動産開発などに多くの資金を投じてきたが、景気減速により大量の不良債権を抱え「破産」するリスクが浮上した。すでに多くの業界での生産過剰が問題視されており「多くの投資を通じて経済を促進する」やり方には、もはや限界がみえているようだ。


専門家は不動産市況を楽観視

また、政策金利の引き下げは住宅ローンの低下も意味する。不動産仲介大手の中原地産のアナリスト、張大偉(チョウ・タイイ)氏はこれについて「今回の利下げの影響は非常に大きい。中国一線・二線都市部の不動産の資金繰り事情は明らかに好転する。不動産価格がこれ以上に下落する可能性は限りなくゼロに近い。」と明言した。

その上で、政策金利引き下げによるローン利率の低下と銀行融資コストの低下は、資金不足で悩む不動産開発業者にとって朗報に違いないと述べた。

陰りが見え始めた国内消費量、地方政府の大量の負債、業界の生産過剰、不動産市況の先行き不透明さ。これら問題を始めとして、中国経済には様々な課題が山積している。今回の政策金利の引き下げで、低迷しかけた経済が果たして上向きになるのだろうか。(ZUU online 編集部)

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