飲料最大手のサントリーホールディングスがアサヒビールに対し、ノンアルコールビールの製法に関する特許を侵害したとして、商品の製造・販売の差し止めを求めて東京地裁に提訴し、大きな注目を集めている。両社は話し合いによる解決を目指してきたが、折り合いをつけることができず、サントリーが1月に提訴に踏み切った。海外ではこうした企業による商品差し止めの提訴は珍しいことではないが、日本の大手企業間でここまでの法廷闘争はまれで、その理由を探ってみた。


アサヒ側は徹底抗戦の構え

開示された訴状によれば、サントリーは2012年にノンアルコールビールの味に関するエキス分、糖質量、酸味を数値化して特許出願を行っており、翌13年10月に特許を取得している。サントリー側の主張では、アサヒが12年9月から販売しているノンアルコールビール「ドライゼロ」のエキス分量がこの特許内の範囲であることから特許を侵害されたとしている。

サントリーはこの数値が、研究努力により、飲み応えと適度な酸味を実現されたものであると、発明の価値を強く訴えているが、アサヒ側は既存商品から容易に発明できるものとして真っ向から対立している。3月10日に第1回口頭弁論が東京地裁で開かれ、アサヒ側は「サントリーの特許は無効」として請求棄却を求めた。


拡大するノンアルコール市場

ビール酒造組合が発表しているビール市場動向レポートによると、2014年の国産ビール課税移出数量は2,708,499キロリットルで前年比99%だが、10年前の2004年と比較すると実に70%に落ち込んでおり、3割もビール消費が減っていることになる。

一方、ノンアルコール飲料市場はサントリーの発表によると2013年段階で約4,090万ケースの販売規模となっており、市場は年々拡大傾向にある。飲酒運転の罰則規定が厳しくなり、運転者のアルコールの代替需要としてスタートした商品であったが、健康志向なども追い風となって市場に定着していき、より味そのものを楽しむ積極的需要を創出するようになってきた。