◉ 米国市場が引けてからTOPIXのETFを買う投資戦略
米国市場が閉まるのが日本の朝方で、その後に日本市場が開くわけですが、米国市場の引け値を見てから、日本市場に投資するという方法は可能でしょうか。ここでは空売り等の方法は取らず、「ダウ平均株価が◯◯%以上上がった(下がった)場合に、TOPIXのブルETF(ベアETF)を寄付で成行買いし、それを引値で売る」という方式を取る事にしましょう。
例えば、基準値を-0.5%とすると、ダウ平均株価が前日比で0.5%値下がりした場合、TOPIXのベアETF(TOPIXに逆連動するETF)を購入して、それを引値で売るという事になります。この時、仮にベアETFが1%値上がりしていたら、その分利益が出ます。(厳密にはETFは指数と完全に連動しませんが、あくまでも日米株価の関連を見る為のシミュレーションなので、その誤差は無視します。)
仮に100万円を予算として、その変動率に関わらず全額をETFに複利運用で投資出来るとし、また手数料や税金等は考慮しません。なお、取引を行うのは、米国市場が引けた後、同日に日本市場が開かれる場合のみとします。
さて、2000年以降のダウ平均株価は、1日の騰落率の最高値が10.9%、最低値が-7.8%なので、10.9%から-7.8%までの間で最適な基準値を探します。(Javaプログラムによってシミュレーションしましたが、その内容は割愛します。)
シミュレーションの結果は以下の図2です。ダウ平均株価が-1.3%以下に値下がりした時にTOPIXのベアETFを買う戦略が最も高いリターンを出す事が分かります。初期資金100万円が最終的に286.5万円になるという計算です。そこを頂点として期待リターンが下がっていきます。
図で、基準騰落率が0%に近い所では下駄を投げて投資するのと殆ど変わらない状態になるので、誤差が大きく期待収益がばらついています。
図2:ダウ平均の騰落率に合わせたTOPIXのETF投資法の期待リターン分布
出典:筆者作成
注1:縦軸が最終資金(円)、横軸が基準となるダウ平均株価の騰落率(%)
このシミュレーションにより、プラスよりもマイナスに合わせた場合の方が高い期待収益率を示し「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪を引く」という兆候を示していると考えられます。
ちなみに、このシミュレーションでは100万円が13.6年で286.5万円になるわけですから、年率換算にして平均で8.5%のリターンをあげたことになり、かなり優秀な成績と言えます。しかし残念ながら、ここでは手数料や税金等が考慮されておらず、実際に運用したとなると、もっと低いリターンになる(毎日100万円以上の取引を2回行う手数料だけでもバカになりません。)ので、実用性のあるものにするなら、更なる工夫が必要です。
◉なぜ相関するか
なぜ相関するかという問いを立てた場合、「日米の経済が密接だから」という説明がよくされますが、もう少し突っ込んで考えてみましょう。
日本の株式市場が24時間営業でない以上、前日の終値と翌日の始値には大きな乖離が生じます。なぜ乖離が生じるかというと、日本市場が閉まっている間も世界中で様々な経済活動があるわけで、それらが一気に反映されるのが翌日の始値なのです。
日本市場が閉まっている間、米国市場は経済の動きの影響を受けているわけであり、その後、遅れて日本市場が同じ影響を受けます。
つまり、世界経済の動きがタイムラグを持って米国株と日本株の両方に影響を与えており、日米の経済の結びつきにより、米国以上に日本が影響を受ける事があるというのが勿論、この理解は米国を基準として考えた時の場合で、日本を基準に考えると、同様に日本が受けた同じ影響が、海外の市場にも与えられます。
◉これからも相関し続けるか
要するに、世界中の経済が密接に相互に不可分に関連しているわけですが、経済の結びつきによっては、その影響の伝わり方が変わると考えると良いでしょう。
日米経済の結びつきはまだまだ大きいですが、米国の経済的な地位が相対的に落ちてきているのは事実なので、今後も日米株価の相関が小さくなっていく可能性はあります。但し、例え中国などの影響が大きくなって、「中国がくしゃみをすると・・・」という状況になった場合でも、「米国も日本も風邪を引く」という状況になるので、結果として日米の株価が相関しているという事には変わりがありません。
その意味で、相関の程度は変化しますが、現在の経済システムが維持される限り、日米の株価はある程度相関し続けるでしょう。
BY T.T
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