ファンドマネージャーの裁量や評価スキームも加味

また、運用パフォーマンスをあげる手法にも注目しています。運用手法がインデックスを意識した運用なのか、あるいはインデックスを意識せず積極的にアクティブに運用をする手法かで、全く変わってきます。

日本株のインデックスの一つであるTOPIX(東証株価指数)を意識すれば、ポートフォリオの中身がある程度TOPIXと同じような銘柄になってくるのは仕方のないことですが、TOPIXを意識せずにアクティブに運用をすると言っておきながら、ポートフォリオの上位にトヨタ自動車や三菱UFJのような銘柄が入っているケースもあります。企業に例えるなら、企業理念と全く違うことをやっているということです。そのように運用の一貫性があるかどうかもチェックしています。

それと、ファンドマネージャーが十分に力を発揮できる環境を与えられているかも重要なポイントです。企業訪問でも「自由に飛び回ってインタビューをしてもいい」という場合と「社内にあるデータや情報を出来る限り活用するように」とでは調査の質が全然違います。また、ファンドマネージャーに対して、会社としてあまりリスクをとって欲しくないという考え方もあります。

「高いパフォーマンスを出せばその分成功報酬を出す」といった本来のアクティブ運用をさせているかも重要です。このような点をしっかり見ると、それぞれのファンドの特徴がわかってきます。

―そこに株式ファンドのパネル討論でお話しされていた、調査体制なども関わってくるのでしょうか。

朝倉: そのとおりです。ファンドマネージャーが「いい運用をするから多くのアナリストをつけて欲しい」と要求したところで、会社がその要求通りに対応してくれるかはわかりません。よほど優秀なファンドマネージャーか、会社として余裕があれば体制も整えてくれるかもしれません。継続して高いパフォーマンスを実現するにはファンドマネージャーのモチベーションを上げ続けることも大切で、「これだけの実績を上げたら、運用チームとしてボーナスをあげます」といったインセンティブスキームは大切です。

また、会社側が、ファンドマネージャーに運用に集中できる環境を与えているかも重要です。例えば日本の場合はどうしても販売会社主導になりがちで、「今回日本株のファンドを立ち上げたから売ってもらいたい」と依頼すると、力のある販売会社には、各支店にファンドの概要説明に行く必要があります。「売ってもらいたいなら支店を回って、きちんとセミナーをやって欲しい」と言われます。

時には運用会社のマーケティングや営業担当者だけでなく、実際に運用している人に説明して欲しいと要求され、ファンドマネージャーが説明にいく場合もあります。そうした場合ファンドマネージャーの本来の運用業務がおざなりになってしまいます。

本来は運用に専念したいのに、様々な地方の支店でセミナーを行わなければならない状態が続くと、半年や1年はパフォーマンスが良くても、同じ状態は維持できません。

つまり、運用に特化できる環境づくりに関しての会社側の考えが重要になってきます。