(この記事は2015年4月17に掲載されたものです。提供: Leeways Online )
東京 23 区内の駅について、 2011 年と 2014 年の年間平均賃料を集計し、上昇率を計算しました。対象の駅はJR、私鉄、地下鉄のすべての路線とし、その数は 285 駅です。今回はその賃料上昇についてレポートします。
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年で賃料相場は上昇
アベノミクスによる景気回復や大胆な金融緩和を受けて、都内の賃料は強含みで推移しています。 285 駅の平均では 3 年間で約 7 %上昇。住宅賃料には消費税がかかりませんので、この上昇は消費税増税の影響を受けていません。
賃料の水準はテナントの借りたい相場観と、オーナーの貸したい相場観のせめぎあいで決まります。オーナーは、テナントはこのくらいの水準で借りてくれるだろうと期待する賃料で募集をかけるのですが、その期待賃料が徐々に上昇しています。
しかし、駅ごとの賃料動向を丹念にみていくと一様な動きではないことがわかります。大きく上昇大きく上昇している駅もあれば、あまり上昇していない駅もありますし、中にはやや下がった駅もあります。
たとえば、高級感があって一人暮らしに人気のエリアである広尾、恵比寿、中目黒をみると、広尾駅は 11.7 %、恵比寿駅は 12.3 %、中目黒駅は 14.8 %の上昇です。
沿線住民の多い東急田園都市線でみると、渋谷から近い駒沢大学前駅は 12.2 %、三軒茶屋駅は 8.7 %、世田谷区で人気の用賀駅は 6.8 %、桜新町駅は 6.0 %と、それぞれ上昇しています。
上昇率が低いほうに目を転じると、葛飾区の京成高砂駅は 0.9 %、金町駅が 0.2 %の上昇にとどまっています。また、同じ葛飾区のお花茶屋駅は -0.8 %、堀切菖蒲園駅が -3.6 %の賃料低下となっていて、東京の東部方面に弱いエリアがみられます。これは、 2012 年に開業した東京スカイツリーの効果で、墨田区や葛飾区の賃料相場が当時すでに強含んでいたことが影響しているようです。
23 区内の駅の平均では、約 7 %の上昇ですが、個別の駅ごとに周辺の賃料相場の上昇率は大きく異なっています。上昇率に差があるということです。
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賃料上昇率は「格差拡大」
トマ・ピケティ氏の「 21 世紀の資本」が人気を博しています。ピケティ氏の主張の要点は、資本収益率である( r )が、経済成長率である( g )を上回るというものです。株式や不動産といった資本から生み出される利益は、経済成長の恩恵で増える所得よりも高いペースで増えていく、その結果、株式や不動産を持っている人はますます富み、持てる者と持たざる者との格差が拡大するという話です。「格差拡大」は、日本では高齢者と若者の世代間格差、正社員と非正規の所得格差といった、広い意味での格差問題に関連づけることもでき、日本人からも高い関心を集めています。
そして駅周辺の賃料でもその「格差拡大」が起きています。つまり、賃料がもともと高い駅はますます高くなり、賃料が低い駅はそれほど上昇していないという傾向がみられるのです。
この図は 285 の駅について、横軸に 2011 年時点の賃料水準(1平方メートル当たり単価)、縦軸に 2011 年から 2014 年の 3 年間での賃料上昇率を表したものです。賃料が下落した駅は赤塗りにしました。傾向としては右肩上がりです。賃料が下落した駅は赤塗りにしました。
賃料が下落した駅は単価が 2,500 円から 3,000 円の駅に集中しています。賃料単価が 3,500 円を超える駅では賃料の下落はありません。
この 3 年間の賃料推移を簡単にまとめると、賃料単価 3,000 円の駅は 5 %アップして 3,150 円になり、 4,000 円の駅は 10 %アップして 4,400 円になったということです。その結果、賃料の格差は拡大しました。
いま不動産市況は全体をみれば良好です。しかし、個別にみれば格差が開いています。賃料の上昇率が高い、いい物件に投資するためには、データに裏打ちされた分析が欠かせないと言えるでしょう。
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