●2014年日本経済の注目業界③「ネット・メディア業界」


日経BP社はネットおよびメディアの業界を特に注目すべき業界に挙げています。現在、 主なwebサービスとしては、クラウドファンディング、個人間送金・決済、スキル共有(英会話や料理教室など)、シェアサービス、クラウドソーシング、そしてECがあります。 中でもECについては、BP社の記事によると2012年の国内EC市場の規模は9.5兆円であり、過去5年間の伸び率を見ても、2013年は10兆円の大台に乗ったと言えるそうです。それに加えて、2014年はさらに市場規模の拡大のペースが拡大しそうです。その理由として同誌は「2013年後半におけるEC市場を巡る各社の攻勢」を挙げています。

2013年10月に、ヤフーが同社のオークションサービス「ヤフオク!」の出店料を無料化すると発表しました。これにより、従来のEC事業の2強であった楽天とアマゾンへの追撃が始まったと同誌は見ています。一方、LINEも今年9月にwebストアをオープンさせており、EC市場へと参入しています。

同誌はヤフーとLINEの2社について「個人販売を可能にした点」がキーワードになると述べています。これまで、国内のECサービスは表面上、BtoCとCtoCを分けて提供されていたが、今後は後者のCtoCの販売を活性化していくことで自社ECを活性化していく狙いが国内の2社にもあると言えそうです。2014年4月に予定されている消費税の引き上げも、消費税のかからない個人間取引を後押ししていくと言えそうであるため、市場はさらに拡大していくだろうと予想されています。

また、個人から資金を調達するクラウドファンディングも来年以降、本格的に広がりを見せる可能性があります。米国では同ファンディングにより資金を調達してハードウェアの開発に着手する企業が増えており、今後も資金調達のニーズが高まるにつれて市場も広がりそうだと言われています。


●2014年日本経済の注目業界④「エネルギー(電力)業界」


エネルギー業界の中でもメインの電力会社に関しては、両誌は異なるポイントに目をつけています。 洋泉社は「2016年の電力小売全面自由化による競争激化を見据えたサービス拡充競争」に、日経BP社は「原発再稼働の行方に伴い電力会社の収益に差が生じる可能性」にそれぞれ着目しています。

まず、前者について。洋泉社は、「新電力」という特定規模電気事業者の需要が今後拡大する可能性に目を付けています。契約電力50Kw以上の大口需要家については既に 自由化がなされていますが、電気の小売が全面自由化されれば、一般家庭も新電力から電気を買えるようになると言われています。しかも、この新電力のビジネスモデルは従来の電力会社とは違い、「電気」と「サービス」の両方を売るものとなっています。電力各社は今後様々なスタイルのエネルギーサービスによる付加価値の提供を進めていくと予想され、2014年は新たなビジネスモデルを模索する1年となりそうだと同誌は述べています。

次に、後者について。日経BP社は、電力会社間の収益差を中心に予想しています。収益差は、原発再稼働のタイミングから生じます。大震災後の電力会社の業績は、どの会社も「原子力発電所の停止→代替手段である液化天然ガスの調達量増加→大幅赤字を計上」という同じような傾向をたどっていました。しかし、停止から3年が立ち再稼働できる原発とそうでない原発との間で業績に差が生じて来ると言われています。2013年7月の時点で再稼働の為の安全審査を申請した原発は北海道電力泊、関西電力大飯など全部で6つであり、これらが再稼働することで黒字化する電力会社も出てくるとみられます。一方で東京電力は新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働のための審査が進んでおらず、まだ再稼働には時間がかかりそうです。北米のシェールガス革命によりガスの輸入コストも低下していくと予想はされているものの、輸入が始まるのは早くても2017年であり、やはり原発の再稼働状況と世界の燃料価格に翻弄される状況が続きそうだと同誌は述べています。