●2014年日本経済の注目業界⑤「素材業界」


日経BP社は素材業界について、好調との見方を述べています。 中でも牽引役はスマートフォンなどの電子関連材料の需要であり、住友化学はタッチセンサーパネルや液晶ディスプレイ材料が、旭化成はスマホ向け部品やリチウムイオン電池に使われる絶縁材などの製品において特に好調だそうです。 石油化学事業についても、2013年前半までは中国経済の伸び悩みで製品の需要が弱く、同事業が業界全体の業績拡大を妨げていたものの、後半からはナフサ価格の下落や円安などで改善が見られています。ただし石油化学事業の内需低迷は続いており、国内の生産設備は低迷が進んでいるのも現状です。しかし2013年10月に産業競争力強化法案が国会に提出され、化学・石油精製などの業界に対する税制面での優遇などが今後実施されていくので、企業再編は後押しされていくとされています。

また、特定の分野に経営資源を集中投下し、世界シェアが高い製品を持つ企業は堅調だと言われています。具体的には、塩化ビニール樹脂で世界最大手の信越化学工業、繊維事業の東レや液晶ディスプレー用偏光板素材のクラレなどが景気に影響を受けにくく業績を伸ばしている好例だとされています。


●2014年日本経済の注目業界⑥「商社業界」


両誌の主張をまとめると、

「リーマンショック後、総合商社の業績は飛躍的に成長してきた」(洋)が、今後は「商社各社で巨大プロジェクトの動き出す2014年は、商社ごとに収益や財務の格差が一段と広がる可能性がある」(日)という結論になりそうです。

現状の総合商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、双日、豊田通商)の業績の伸びの理由は、BRICSを中心とした新興国の経済成長に伴うエネルギー・鉱物資源・食料の需要急拡大による価格高騰があった(洋)と言われています。と当時に、各社がそれぞれ強みを持つ非資源の分野において強化を図ってきたことも好業績につながっていると洋泉社は述べています。今後は、資源か非資源か、また非資源の中でもどのような分野に特化していくかによって商社間でも大きく業績が分かれていくことになるだろう、という見方のようです。

日経BP社も、資源ビジネスの先行きの不透明さを指摘しています。中国経済の減速などで非鉄金属や石炭は当面、供給過多と過剰な在庫を抱える状態が続くだろうと予想されています。

その中で、総合商社各社はそれぞれ独自の戦略で強みを創り出しつつあるようです。伊藤忠商事は2013年4月に米青果大手のドールを買収し、非資源分野での業績拡大を図ります。丸紅は5大商社の中で最も強い電力プラント事業を主軸に、最近買収した穀物メジャーのガビロンの事業を展開し米カーギルに勝負を挑んでいます。住友商事は通信販売や航空機リースなどの金融事業に活路を見出しており、三菱商事はアジアでの自動車販売など機会事業で今期3割の成長を目指します(日)。

一方、両誌共にいくつかの課題も指摘しています。洋泉社は新しい人事政策や勤務体系などが各社で実施検討されており、ヒトを財産と位置づける商社において人材育成の面で方針決定が模索されそうです。また日経BP社は会計基準の変更を指摘しています。2014年度から商社には国際会計基準(IFRS)が導入される予定ですが、時価主義を徹底する同基準では株式売却益が損益計算書に計上できなくなる点や、減損処理が強化される点などで決算書に一時的な損失が生じることが懸念されています。ただこの点も中期的には財務体質改善の効果も見込めるため、一概にマイナスの要因とも言えなさそうです。いずれにせよ、企業の競争力自体は変わらないものの、会計ルールの変更で会社本来の稼ぐ力が一段と問われていくことになりそうです。

いかがでしたでしょうか?以上のいくつかの注目業界において、2014年においても大きな変化が見られそうです。来年の日本経済を見通して行く上でも、それぞれの業界がどのように変化していくのか、ぜひチェックしてみてください。次回は私たちに身近なサービス業などの業界を中心に、引き続き2誌のまとめをお届けします。お楽しみに!

【参考】
2014年、日本経済大予測!vol1~各経済誌の注目業界と予想のまとめ~
2014年、日本経済大予測!vol2~身近な注目業界と見通しのまとめ~
2014年、日本経済大予測!vol3〜展望を占う5つの重要キーワード〜
2014年、日本経済大予測!vol4~各経済誌の株式・為替相場見通しのまとめ~
2014年、世界経済大予測!vol1~欧米中・新興国の株式・為替相場予想のまとめ~

BY:ZUU online編集部(H.O)