精密小型モーター最大手の日本電産 <6594> は4月22日、2015年3月期の決算発表をおこなった。

売上高は前期比17.5%増の1兆283億円で、初の1兆円台となった。営業利益は同31.1%増の1112億円、最終利益は同35.4%増の762億円で、いずれも過去最高となった。また、自己資本比率が55%に到達したことを発表し、目標としていた「50%超」の1年前倒しに成功した。

対ドルだけでなく、ユーロ、タイバーツといった通貨での円安の影響と、日本電産が得意とする電動パワーステアリング用モーターやファンモーターへの需要増が寄与した形となった。

2020年度新中期経営計画では、連結売上高2兆円(14年度は1兆0283億円)、連結営業利益率15%以上(同10.8%)を目指すとした。売上高2兆円のうち、約5,000億円は新規のM&Aを積極展開していくとのこと。

今回は、日本電産がなぜここまで絶好調なのかを、自己資本比率目標の1年前倒し達成できたのかを探っていく。


業績好調期待からCB転換がすすむ

2010年に1,000億円の転換社債を発行している。この転換社債の償還期限が2015年9月に迫っているため転換社債償還資金の手当てが必要であったが、その必要はなさそうだ。

今期2度の上方修正をするなど、業績は非常に好調だ。この業績を背景に新株予約権付社債(転換社債=CB)の転換が743億円(約78%)進み、株主資本比率の改善につながった。

転換社債を保有する投資家は償還期限が到達する満期まで利息をもらい続けるか、満期よりも前に株式へ転換するかが求められる。会社の業績が思わしくないのであれば株式に転換することなく、満期まで保有した方が賢明だ。だが、会社の業績が好調で株価の上昇が期待できるのであれば、株式へと転換した方が高いリターンが見込める。

日本電産は、今年1月から3月にかけて948万株の自社株式を転換社債の転換に充てている。転換社債として保有するよりも株式に転換した方が有利だと判断する株主が増加していることが伺える。

負債である転換社債から株主資本へと転換が進んでいるため、自己資本比率が高くなっている。当初の経営計画では自己資本比率50%達成は来年の3月期を目標としていたが、1年前倒しで達成することとなる。転換社債の株式への転換価格は5,313円と、現在の株価8,000円は上回っており、今後も株式への転換が進むことが予想される。

社債という低リスクな金融商品から、リスクの高い株式へと転換する動きは、投資家が日本電産の業績拡大へ期待している証拠でもある。

これに応えるように日本電産は、2月には欧州市場でトップクラスのシェアを持つ車載用ポンプメーカーGPM社を買収している。まだまだ1,000億円規模の買収を検討する等、M&Aによる業績拡大意欲も旺盛だ。

転換社債の株式への転換によりこれまで支払っていた金利負担も軽減されるなど、いいことづくめのようであるが、言葉を変えれば株主からの期待に応えなければいけないプレッシャーがかかる状況でもある。

今後さらに株主の期待に応え続けるためには業績拡大へのアクセルを踏み続けるしかない。これからも日本電産の動向から目が離せなそうだ。(ZUU online 編集部)

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