牛丼値上げ

ゼンショーホールディングス <7550> が運営する牛丼チェーン「すき家」は291円の牛丼並盛りを4月15日から350円に値上げした。輸入牛肉の価格高騰により値上げを行ったもの。牛丼チェーン大手「吉野家」も昨年12月に牛丼並盛りを300円から380円に、「松屋」も昨年7月にプレミアム牛めしを投入し、290円から380円実質的な値上げを実施済だ。これで牛丼大手3社とも300円台後半に価格を値上げしたことになる。

熾烈な安値競争を繰り広げてきた牛丼チェーン各社。ここへ来て値上げが相次いでいる。


原材料の高騰による苦肉の値上げ

値上げの理由は牛肉価格の高騰によるものだという。牛丼に使用する牛肉は価格面から輸入に頼らざるをえなく、輸入牛肉の価格がそのまま牛丼の価格に反映される。現在、メイン輸入先である米国産牛肉の供給が減少しているのだ。

米国ではここ数年干ばつが続いており、この干ばつによって牛のエサとなる牧草や穀物が育たなくなっている。エサが減るにつれ、米国の牛の頭数自体も減少が続く。米国での抜本的な干ばつ対策はなく、手をこまねいているだけなのが現状だ。

さらに中国での牛肉の需要が急増していることも、牛肉高騰の一因となっている。好調な経済を背景に中国人の所得が増加。所得の関係上、これまで牛肉を食べなかった人たちが、火鍋のような牛肉を使用する料理を好んで食べるようになった。需要が増えれば、価格も高騰する。細る供給に加え、需要が増加しているのだ。

また、人件費の増加も追い打ちをかけている。景気回復により、正社員だけではなくアルバイト社員の時給も上昇している。飲食店では人材を集めにくいため、時給を高めに設定しがちだ。人件費の増加が直接コストに跳ね返っているのだ。

すき家では、深夜にアルバイト一人に店内業務をまかせる「ワンオペレーション(ワンオペ)」を解消した。そのため、人員増により、当然人件費も膨んだ。

このようなコスト増の要因が増えたため、牛丼の価格を上げざるを得ない状況に陥ったと見られる。


価格に見合う付加価値は提供できるのか

ただ、単に値上げだけをしたのでは客は離れていくだろう。実際吉野家では、昨年12月に値上げを実施したあと、前年と比べ20%も客足が減少した。定食などが健闘した松屋でも、5%近く減少している。

客離れに対抗すべく、各社懸命だ。すき家は値上げと同時に定食を中心に具材を3割増しすることで、お得感を演出。牛丼並盛りの値上げ時は、肉とタマネギを2割増にしている。松屋は値上げ時の新メニュー「プレミアム牛めし」は、通常の牛肉ではなく、肉のやわらかさや旨みを増やすとされる「熟成肉」を使用している。「お得感」ではなく、「高級路線」へと舵を取った。

値上げにより客単価が上昇し、利益が増えるのではなく、客離れが加速するという見方が多い。値上げした商品のお得感を前面に押し出したり、価格を納得してもらえるよう新たな高価格帯の商品を投入したりと、様々な対策が取られている。

今後もすぐには牛肉の高騰が静まる気配もみえない以上、どうみせれば効果的な「付加価値」となるのか、といったことを考えながら商品を提供していく牛丼チェーン各社の戦いが、今後も続くだろう。(ZUU online 編集部)

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