Q.企業が勝ち残るためにもっとも重要なポイントは何なのでしょうか?
大前氏: 「人」です。自分でなんとかできると思わないほうがいいです。自分と違う性格の人、要は、自分が理屈っぽいと思ったら、とんでもないアホなことを平気で言いはじめるような、そういう右脳型の人を連れてくるということです。血液型で言えばA型にはB型とか、AB型とか。右脳型には左脳型といった具合に、性格の異なる人と組んでいくことです。
例えば、ホンダの創業者は本田宗一郎さんですが、構想そのものは藤沢さんですよね。もう極めて緻密な経営計画とか、経理とか。高橋荒太郎さんは、(現在ではパナソニックとなった)松下電器の創業者の松下幸之助さんの最大の補佐でしたけれども、厳しい経理システムを作りましたよね。
こういう風に、左と右のタイプをそろえるのは重要です。ノーベル賞を2人でとっているところは大半がこのタイプです。「寝ている時に蛇がとぐろをまいているのを見た」なんていったときに、要するに、染色体のスパイラル構造というもののに気がついたというのもそうです。
でも、人は自分とタイプがあわない人を嫌う傾向があります。類は友を呼ぶとかいうじゃないですか、止めたほうがいいです。自分と意見が全く一致して「かー、俺たちは本当に仲良いんだよね」という人は 会社には いらないです。
そうではなくて、やっぱり人と人の意見は違っています。お互いの違いを非常に尊重しながら議論を重ねていくと、これが会社です。大学のサークルと違いますから。「あいつとはよく合うんだよね」という奴は無駄な人です。「俺とそっくりだ」と言ったらその人はいらないです。
最も重要なのは、自分では考え落としがちなこと、自分が必要ないというようなことを「やっぱりこれは重要だよ」と言ってくれる、そういう人にバックアップされることです。自分でなんでもやるという器用な人は、やっぱり器用貧乏になります。重要なポイントっていうのは、自分と相互補完的な、そいういう人と一緒にやると。普段だったらそういう人と仲悪いんだけど、それが重要なんだよ。
ユダヤ人がそうでしょ。ユダヤ人の場合は、自分に反対してくれる人を非常に重宝するじゃないですか。悪魔の使徒、つまり「すみません、みなさんの意見が一致し始めました、私はあえて反対意見を言わせてもらいます」と言ってやってくれる人が非常に重要になってくるんです。だから、ユダヤの人っていうのは喧々諤々と議論して、最後の成功確率が高いということです。だから、類は友を呼ばないでほしいですね。