最近、上場企業の好決算が相次いで報じられている。

その好決算の背景には、円安があることは事実だろう。現在1ドル120円近辺で足踏み状態の外為相場であるが、とりわけ日銀の追加金融緩和以降の急激な円安の進行は日本経済にプラスの要因をもたらしてきた。2014年度の国内企業の倒産件数は24年ぶりに1万件を割り込んだ。

2015年3月期決算では過去最高益を更新する企業が多いとみられるが、反面、円安のマイナスの要因は見逃せない。円安は輸出企業の収益を押し上げる要因になる一方で、海外からの輸入に頼る資源、原材料、エネルギー、食料品の物価を押し上げるからだ。


「円安関連倒産」の増加

民間調査会社が発表した資料では、2014年度の円安に由来する倒産は260件(前年度比42.0%増、前年度183件)に達し、前年度より4割増になっているとい言われており、四半期別では、2014年4-6月が前年同期比132.3%増(34→79件)、7-9月が同108.8%増(34→71件)と倍増している。

原油価格下落による燃料、石油化学製品の値下がり、製鉄原料下落による鉄鋼製品の価格低下などコスト削減につながる好材料があったことも事実だ。しかし、為替相場の急激な変動は中小企業の経営を不安定なものとしてしまった。産業別では、運輸業の倒産が最多となっており、人件費上昇などで収益が悪化しているところへ、燃料価格の高止まりが影響したことがうかがえる。


メガバンクは引当金を積み増ししている

銀行は融資先の破綻などによる焦げ付きに備えて、「貸倒引当金」を積むことになっている。この引当金額がアベノミクス本格始動前の2013年1~3月期以来、2年ぶりに増加しているという。その要因は世界的な原油安だ。ロシアなど資源国では事業採算の悪化が深刻化しており、米大手格付け会社ムーディーズ予測によると、世界の企業のデフォルト(債務不履行)率が1年後にかけて急上昇するという悲観的なシナリオが背景にある。

次に、円安・ドル高が進み、輸入品を国内で販売する卸売業などの収益が仕入れコスト増により悪化したことを挙げている。中小企業の債務返済の負担を軽減する中小企業金融円滑化法は2013年3月に期限を迎え支援が手薄になっているところへ、円安によるコスト増が進めば、大手行の一部では幅広い業種の中小企業を破綻懸念先として認定せざるを得なかった可能性があるというのだ。


円安とアベノミクスの明暗

「景気回復を全国津々浦々に届ける」安倍首相は繰り返しそう述べてきた。2015年に入り日経平均株価は一時2万円の大台を回復した。日経平均株価という切り口で見れば、確かに景気は回復したと言うこともできるだろう。その背景には円安が輸出企業の利益を押し上げ景気回復に貢献していることは確かだが、一年後の悲観的シナリオも考えるとアベノミクスが成功したというには早計かもしれない。(ZUU online 編集部)

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