最近の事例を挙げると「イレッサ」という肺癌の治療薬は、これまでの抗癌剤では効果がなかったとされる一部の肺癌患者に、肺癌の増殖に関わる信号をブロックするという画期的な仕組みで、その効果を示すことができた薬である。

発売当初、肺癌に苦しむ多くの患者様にイレッサが投与されたが、期待された効果を得られた患者が多かったと同時に、間質性肺炎という非常に激しい副作用を起こした患者も存在したのである。イレッサの副作用報告での死亡例は、2012年時点で800名を超えており、その大半が間質肺炎によるものである。


PMDA:医薬品の安全性の番人

ここで、身近でありながら、一般にはあまり知られていない医薬品の副作用情報について、情報収集の目的や、いつ、だれが、どのようにして収集できるのかを説明したい。

イレッサの事例にとどまらず、古くはサリドマイドによる胎児の奇形や、非加熱製剤によるHIV感染症など枚挙にいとまがなく、薬害や副作用に悩まされ続けたと言っても過言ではない。この事態を重く見た政府は、厚生労働省の所轄機関として、医薬品や医療機器の「安全性」、「健康被害救済」、「医薬品審査」を一元的に統括する目的で、医薬品医療機器総合機構(PMDA:ピーエムディーエー)を設立した。

PMDAのもっとも重要な役割の一つに「副作用情報の製造販売業者(製薬会社など)又は医療機関(病院など)からの副作用などに関する情報の収集・整理業務」がある。そして、収集された副作用情報は、厚生労働省と連携しながら専門的観点から分析・評価され、必要な安全対策を講じるべく広く医療関係者に情報を提供し、医薬品の安全対策の確保を図っている。