製薬企業はその医薬品を販売し続ける限り、作用情報を積極的に収集しPMDAに報告し続けなくてはならないのだ。この規則は医薬品医療機器法(旧薬事法)によって規定されており、罰則規定もある。


製薬企業の良心:安全性部門

製薬企業が副作用報告義務を怠ることは、製薬会社が国民の安全を守ることについて放棄し、単に製造したもの販売するだけの「物売り」になり下がったことを意味するのではないか。

製薬企業には医薬品安全管理を行う専門部門が必ず設置されており、そこでは専門職員が日夜休みなく安全性情報の収集とPMDAへの報告に追われている。きわめて、重労働となる部門であるが、この安全管理部門が製薬会社のセールス戦略とは完全に独立し公正に機能することが、製薬会社には必要なのである。

安全性部門における副作用情報のPMDAへの報告は、極めて厳格に規定されている。副作用の性質や重さなどで、製薬企業の情報入手からPMDAへの報告形式や報告までの時間帯が設定されているのだ。たとえば、全く知られていなかった未知の副作用で、重篤な場合は15日以内にPMDAに報告しなければならないといった具合だ。

多くの製薬企業は、年間に数千から数万の副作用情報が集まるため、副作用の選別とタイムラインに合わせた報告に追われている。その他にも、企業としての安全性対策などを行う必要があり、非採算部門でありながら多くの人材を必要とする部門なのである。

PMDAへの報告が1例でも遅れると、遅延理由をPMDAに届ける必要もある。場合によっては、製造販売責任者となる社長名での謝罪と今後の業務改善プランの提出を必要とされる場合もあり、安全性部門の職員はそのような事態を避けるべく、必死に業務を遂行するのである。