ノバルティスが引き起こした2つの事件は、いずれも売上げを増やすため、企業の価値観が国民の安全を守ることよりも、自企業の販売活動を優先したことによるものであると指摘できるだろう。確かに外資系製薬企業の日本法人には本国から求められる厳しい目標もあり、競争に勝つためには売上げを増加させ続けることは必至だ。

しかし、薬はそこに関わる薬効や副作用情報などの正確な情報が付与されていなければ、単なる化合物に過ぎないのだ。すなわち、製薬企業は化合物を売っているのではなく、医薬品という名の情報を売っているのである。この医薬品情報こそ製薬企業の命であり、国民の安全性を守る命綱なのである。

ノバルティスの一連の不祥事は、軽重の差こそあれ、どこの製薬会社にも一つや二つは存在するかもしれない。その原因の根幹は、製薬企業の情報収集とセールスとは利益が相反するものであるということだ。そして、それらの業務を同一の人材(MRなど)や部門に行わせていること自体に、無理が生じている可能性がある。

この問題点は以前より製薬企業では指摘されてはいるが、人材不足などを理由に改善されてないのが実情である。しかし、今回のノバルティスのような事件は、患者の安全を脅かすのみならず、国際的背景をもつ日本の製薬ビジネスの信頼にも関わることであり、その仕組を是正する必要性を明示しているともいえよう。

5月2日現在、海外では上場しているノバルティスの株価は、製薬企業の中でも特に順調に推移している。また、ここ数年ノバルティスの売り上げは世界第2位にまで急伸しており、第1位のファイザーを追い落とす勢いだ。極東の日本で発生した事件など、全く意に介していないようにも見える。この企業の飛躍的な成長を見つめたとき、リアルにマネーを追求することの貪欲さと、リアルな情報を避けることが同居する現在の製薬業界が抱える問題の大きさは計り知れない。(ZUU online 編集部)

【関連記事】
激しい国際競争に晒される日本の製薬産業が直面する課題とは?
日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
今年はゆうちょやLINEの株も購入可能?直近2年で勝率82%以上の「IPO株」とは
売れ筋「ヘルスケア・バイオ」ファンドの人気に迫る
上場へ再申請!時価総額1兆円か?LINEのIPO株を最速で手に入れるには?