このような副作用報告についての背景を知れば、今回のノバルティスによる3,000件を超える報告漏れは非常に大きな数字であり、怠った責務の大きさを知ることができよう。さらに、副作用発生率は通常は百分率(%)で示されるため、分母となる投与人数と分子となる副作用発現人数で計算される。ノバルティス自体は否定しているものの、これほど大きな数字となると医薬品の副作用発現率の数字にも影響するとも推測される。副作用発現率の少ない薬ほど安全という判断が働き、当然売り上げにも反映してくるだろう。

実際の副作用情報の収集は、安全性管理部門以外にも医薬情報担当者(MR)などが行う場合も多く、MRに対して医薬品の適正使用方法や安全性情報収集の意義、医療機関からの報告方法を教育することも、安全性管理部門の重要な役割である。しかし、実質セールス戦略の実行部隊として厳しい売上げノルマとともに医療現場の最前線で働いているMRに対し、セールスとは一線を画す適正使用情報を医師に伝え、さらに副作用情報を収集させることは大変難しいことなのである。


医薬品副作用情報収集の問題提起とみるべき

今回は深く触れていないが、ノバルティスの業務停止命令の前には「ディオバン」をめぐるデータ改ざん事件がある。副作用情報の報告漏れもデータ改ざんによって芋づる式に発覚した可能性があり、ノバルティスが失った信用が大きくかつ多岐にわたっていることを示している。