外食チェーン, ニーズ, 気分, ちょい飲み

(写真=Thinkstock/Getty Images)


過酷な労働環境は、利益を優先した経営側の怠慢とエゴが招いた?

利益を追求するために効率を重視するのは、経営者として当たり前のことである。しかし、単に人件費を削減することが効率化なのだろうか。本来、人件費の削減は最後の手段であるべきはず。手っ取り早い方法だからと人件費を削減するなら、それは経営側の「怠慢」であり「エゴ」である。

回転率を上げるために、「サッサと食べて、早く出て行ってくれ」という「気分」は分からないでもないが、さすがにお客様に向かってそれは言えまい。しかしその「気分」は、従業員に過酷な労働を強いて利益を確保しようとする発想と、根底でつながっている。つまり、お客にも従業員にも目を向けず、目先の利益だけしか見ていないということである。


お客も従業員も「気分」に作用されるという当たり前のことに気付くべき

そもそも消費行動には、「気分」が大きく作用する。特に飲食産業において、「気分」の影響は大きい。価値観が多様化している今の社会では、単価の安い食事だから、一人で来店しているから、といって滞在時間が短いとは限らない。

安価で気軽に食事できる場所を提供するだけで良かった時代は、もう終わろうとしている。ひと口に安いといっても、その基準は人によって違う。外食産業もサービス業である以上、お客はその店のサービスに対価を払うのである。そしてそのサービスによって、どういう「気分を味わえるか」が重要なファクターとなる。つまり、提供された料理プラス、サービスの内容がお客の「気分」に作用し、安いか高いかの基準となるのだ。

従業員の態度は、お客の「気分」に大きな影響を与える。お客は接客時はもとより、店内での動きも見ている。とりわけ女性客の眼はシビアである。当然のことながら従業員も人間である以上、その時々の状況によって気分が変わる。過酷な労働環境下で「気分」が良い人間はいない。心身ともに疲弊しモチベーションが下がりきっていれば、無意識のうちに表情や態度に現れる。それがお客の「気分」に良い作用を与えるはずがない。当然その構図は、売上げにもマイナスの影響を及ぼすことになる。

無策で過度な人件費の削減は、結果として売上減少につながる。いくら経費を削減しても、分母である売上げが減少してしまうようでは利益増など見込めない。商いにおける重要なファクターである「気分」をないがしろにすると、気付かぬうちに負のスパイラルに陥ってしまうのである。それ故、人間の「気分」にスポットを当てた対策を講じる必要がある。従業員の労働環境改善は、決して彼らを甘やかすことではない。気持ち良く仕事ができる環境を整えることで、お客に心地良い時間と空間を提供することつなげるのである。それが利益につながるという、当たり前のことに気付くべきである。