糖質やエキス配合をビールに近づけアルコール度数は0となる、ビール風味の発泡性炭酸飲料「ノンアルコールビール」の売上げが拡大している。そんな中、サントリーホールディングスはアサヒビールに対し、特許権を侵害しているとして「ドライゼロ」の製造や販売差し止めを求め提訴している。

これに対しアサヒビールは、サントリーが保有しているノンアルコールに関する特許は無効だと考えており、裁判により争う考えだ。


増える特許侵害訴訟

特許権への侵害を争う場合、訴訟外で交渉による解決を行うケースと、訴訟により争うケースがある。訴訟により争うと、負けた場合に自社が保有する特許権が「無効」となってしまうのだ。特許権を取得するのにかかった労力や費用、時間を考えたとき、得策ではないという判断が働きやすい。また、訴訟を提起したとしても勝訴率は23%と低く、勝てる見込みは高くないとされていた。これまでは特許侵害訴訟の件数も2012年で187件と、米国の年間5,000件を超える訴訟件数と比べてもはるかに低い件数にとどまっている。

最近では、交渉による解決だけでは急速に変化する市場環境に対応は難しいと、企業の意識も変化しつつある。日清食品ホールディングス <2897> は即席麺の製造技術に関する特許が侵害されたと、サンヨー食品を提訴しサンヨー食品が日清食品の訴えの一部を受け入れ、昨年9月から製法変更するっことで1月に和解している。政府も特許侵害訴訟を提起しやすいよう制度改正の検討を進めているのだ。


企業が備えるべき知財対策は

成長が見込まれる分野において、今後も特許侵害訴訟は増えることが予想される。特許侵害訴訟への対策をしていない場合、多額の損害賠償請求や、今回のアサヒビールのように製造中止や販売差し止めといった、事業を中止せざるを得ないような事態にもなり、企業によっては会社の存立を脅かされるような最悪の事態になりかねない。

自社の保有している権利侵害を防ぐために、企業が事前に準備できる対策とはほとんどない。権利侵害の事実を発見してからはじめて対策を検討することとなる。権利侵害の事実を発見した場合、最初に確認しておく必要がある2つの事項がある。

それは①自社の特許権は有効なものか、②他社の商品やサービスが自社の特許権の技術的範囲に含まれるか、この2つをチェックするということだ。登録料が未納となっているため特許権が消滅しているということもあり、この点には注意が必要だ。

「自社の特許権が侵害されている。損害賠償だ。訴訟により差し止めだ。」といきなり行動に移す前に、まずは本当に自社に特許権が存在しており、特許権を侵害されているか慎重に判断したいところだ。

これとは反対に、特許権を保有している者から、特許権を侵害しているため製造・販売を中止するようにと警告を受けることもある。この場合も同様に、まずは特許登録原簿によって特許権が有効に存在しているか、警告をしてきた者は正当な権利保有者なのかを確認することからはじめる。次に、特許公報を入手し、特許発明の技術的範囲を確認する必要がある。

これらの確認を経てから、相手方と交渉し、特許使用料を定めた契約書を正式に締結するか、裁判により特許権の無効を主張するかを検討していけばいいだろう。

職務発明特許など、現在特許をめぐる話題はつきない。特許の取得や利用は、自社の利益を守り、事業を拡大させることにも役立つ。さらに、特許に限らず、目に見えない資産である知的財産を、他社との競争を有利に進める武器として、有効活用していきたいところだ。 (ZUU online 編集部)

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