中小企業は依然として厳しい環境下

中小企業は依然として厳しい環境下に置かれている。それでも企業は立ち止まることが許されない。結果的に、多くの企業がその維持に必要な収益を出すために、無理をするようになった。その皺寄せがどこに向かったか、だ。

従業員の働き方に向かったところもあるのではないだろうか。特に、中小企業の場合は、競合企業との差別化や自社の強みを打ち出せていないと、発注先の都合をそのまま押しつけられてしまい、それをそのまま従業員にサービス残業等の形で無理強いさせてしまう可能性があることは容易に想像できる。会社がつぶれてしまって従業員の雇用を失わせてしまうよりはましであろう、という気持ちも働いているのではないか。

こうした理由で、現在、ブラック企業と指摘されて「違う」とはっきり否定できない企業は一定数有るのだと思う。

さらには、経営サイドの意識として、人材を使い倒す設定でビジネスモデルが組み立てられている企業も存在している。もしくは、働く人のステップアップに繋がるような技能を習得させにくい仕事も存在している。職人やモノづくりの世界であれば、一昔前まで、やはり被雇用者の賃金体系や労働環境は厳しいものだったろう。それでも多くの企業で技能習得が見込めた。それゆえ厳しい労働環境であっても被雇用者や社会に理解されていた。

こうした点を鑑みるに、ブラック企業の本質の一側面には、従業員には何も残らない、人材をただ使い倒す企業か否かという点が位置づけられるだろう。

ただ、こうした従業員を使い倒そうとする企業は論外として、多くの経営者の中で、労基法を遵守するということに対して、ある意識が蔓延しているように思う。これは危険だ。

例えるならば、法定速度100キロ制限の高速道路で、少なくない人が120キロ出して走っている。そのなかで、摘発される者がでた場合、それを周囲は、しょうがないよね、ついていなかったね、と許容しあうような空気だ。産業構造自体が、120キロで走らないとしっかりとしたパフォーマンスを発揮できない構造に変化してしまっていると指摘できなくはないが、経営者がこうした意識を持っている限り、ブラック企業と糾弾されるリスクは排除できない。

同時に、働き方が急速に変わり、多くの企業において付加価値を生み出す仕組みが変わったのに、労基法は旧態依然のままということがもたらす歪みも否定しきれない。少なくとも現代社会の多様な働き方に対応できる制度設計とは言いにくくなった。無視すべき問題では無いだろう。

究極を言えば経営者は、従業員にサービス残業等の無理強いをさせなくても利益を上げる仕組みを作るしかない。そして、いかに従業員に能動的に積極的に動いてもらうか、そこは経営者としての資質が問われる領域だ。

変な風評を立てられないためには、正義を貫くためには、経営者が会社の稼ぐ力を生み出す強さを持たなければならない。

(ZUU online 編集部)

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