土森俊秀弁護士-2-300x200

(この記事は2015年2月19日に掲載されたものです。提供: Biglife21

中小企業がブラック企業とラベリングされるのを防ぐためには、まず経営者が労働基準法を知ること。雇用に関してどのようなルールがあるのかは把握しておく必要がある。

ブラック企業という言葉が流行りだしたのは、ここ数年。それゆえブラック企業という言葉の定義は人によって曖昧で、未だ定まっていない。何ら悪びれることなくあからさまに労基法違反を行う企業は言語道断だが、ブラック企業という言葉も、セクハラやパワハラ、いじめといった言葉と同様、その定義の曖昧さ故に、被雇用者側あるいは話を聞いた受け手がどう感じるかという主観的な要素が大きく影響する部分がある。

そのため、経営者としては、むやみにブラック企業との風評を立てられないようにする、立てられても納得いく説明によりその風評を否定できるようにすることが重要であり、そのためにもまず労基法を理解し、遵守に努める必要がある。

また、経営者が意識しなくても、何の気なしにやっていることが受け手にはブラックと捉えられかねない可能性を理解することだ。一昔前までは、企業固有の文化として許容された社風や愛社精神、精神論が、「今」もそう見做されるものであるかは、きちんと見直す機会を設け、従業員と意識を擦り合わせるほうが良い。

ただ、ブラック企業問題の難しさというのは、日本の産業構造の在り方が、法整備が追い付かない速度で変化していることにも一因がありそうだ。日本企業の高い付加価値の源泉となっていた技術の多くの領域が、近年他国にキャッチアップされてしまった。コモディティ化したスキルは、日本の賃金レベルでは競争力を発揮しにくく、実際に多くの仕事が海外に流出している。そして、景気が上向いたとされるアベノミクスの恩恵をもってしても、一度外に出た仕事は殆ど戻ってきていない。