持ち家比率低下は個人消費の減退にも影響

米国の住宅価格の上昇はこれまでキャッシュアウト・リファイナンス(住宅を担保にしたローンの借り増し)により手取り収入を増やす手法として利用されてきており、これまでにほぼ可処分所得の1%がこの手法で調達されてきている。

しかし持ち家比率が下がるとこうした資産効果を享受できる世帯が減ることも示唆され、どんどん借金をしては物を買うという米国人の消費スタイルは影を潜める方向に動いていることが伺える。


賃貸需要の高まりとともに賃料が急上昇

米国の不動産市場というと専ら話題になるのが持ち家住宅の市況だが、実は賃貸市場にも大きな変化が訪れている。持ち家比率の低下に伴って賃貸需要が高くなっており、多くの都市部では賃料が高くなりすぎる状況が続いている。

一般的に賃貸市場におけるユーザーの所得平均は2万5,000ドル前後が中心となっているが、現状では家賃が年収の4割近くを占めるほどになっている。ニューヨークなどの大都市圏ではワンルームで3,000ドルを超える月額物件もざらの状態であり、年収の5割を家賃の支払いへ充てる層も登場してきている。

持ち家を持たない層の生活は極めて厳しい状況に陥りつつある。こうした賃貸価格の高額化はそもそもの供給数の少なさに起因しているようだが、持ち家が買えないから賃貸にせざるを得ず、しかもその価格が上昇して可処分所得の大きな部分を占めてしまうという悪循環は、GDPの7割を個人商品に依存すアメリカ経済には非常に暗い影を落とす事態であるといえる。


高所得者層に利上げはほとんど影響しない?

こうした市場状況の中で、安定的に年収10万ドル以上を稼ぐ層にとっては、FRBが検討している軽微の利上げは大きく影響しないことが想定される。さらに上の所得層にとってはまったく影響のないレベルとも言えるが、問題はそれ以下の層ということになる。

最近、米国で二世帯住宅が流行しているそうで、購入コストを圧縮するための手段となっている。ビルダーも消費者の新たな需要に応える物件を提供し始めている。

また、中所得者向けに価格の安い新築住宅を手がけるビルダーも増えるようになっており、FRBの利上げ時期の問題以前に消費の低迷や消費者の変化に市場が積極的に対応しようとしていることが伺われる。

こうした状況を見ると、米国の雇用統計で示現している失業率や雇用者数の改善状況とは異なる米国経済の厳しい現実を垣間見ることができる。利上げで相場が変動するというほど単純な状況ではないのが米国の不動産業界といえそうだ。(ZUU online 編集部)

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