求人受付拒否,ブラック企業,ハローワーク,雇用,税金,課題

厚生労働省は、過酷な労働を強いるブラック企業対策を強化するため、労働基準法違反を繰り返す企業の新卒求人を、ハローワークでは受け付けない方針を固めた。

現行の職業安定法第5条の5では、「公共職業安定所及び職業紹介事業者は、求人の申込みはすべて受理しなければならない」と規定している。そのためたとえブラック企業でも、求人の申込み内容が法令に違反していない限り、ハローワークは受理せざるを得ない。しかし、就業経験のない新卒の学生がこうした求人に応募してトラブルに巻き込まれると、新卒偏重の雇用環境のもとでは再就職が難しくなる。また、労働法令を所管する厚労省がブラック企業の求人を放置することに、多くの苦情が寄せられていた。

新制度では、残業代の不払いなど労働基準法違反を繰り返す企業だけでなく、セクハラなどの男女雇用機会均等法違反や、育児休業を取得させないといった育児・介護休業法違反も含まれる予定となっている。


そもそもブラック企業の定義は?

ここで改めて「ブラック企業」とは何か、について確認してみたい。ブラック企業とは、主に若者を次々と採用して過重なノルマを課し、サービス残業などの違法労働を強いて使い潰し、次々と離職に追い込みながら新たに若者の採用を繰り返すような企業である。「ノルマが達成できないなら自腹で購入しろ」とか「嫌なら辞めろ、代わりはいくらでもいる」といった言葉で追い込まれ、うつ病などの精神疾患に陥る者もいる。つまりブラック企業のビジネスモデルとは、長時間あるいは加重ノルマを課して、本来支払うべき対価を支払わず労働力を搾取して利益を上げるスタイル。「形だけの正社員」や「名ばかり管理職」にして、責任を果たそうと頑張る若者から労働力を搾取するのである。

厚労省では、平成25年9月を「過重労働重点監督月間」とし、若者の「使い捨て」が疑われる企業等に対して集中的に過重労働重点監督を実施した。その結果、5,111事業所のうち、実に4,189事業所(82.0%)に労働基準関係法令違反があったという。

高度成長期の日本企業の意識に、労働基準法を軽視する傾向があったのは事実である。しかし、それは終身雇用のもと、将来の発展、あるいは出世のため、今を犠牲にしても将来見返りがあるという希望があったからだ。だが非正規が多くなり、雇用の流動化も進む中、今頑張れば将来が保証されるという時代ではもはやない。今働いた分は適正に報酬としてもらわなければ、回収はできない環境になっているのである。