弱気の会社予想に引きずられることなくコンセンサス予想が上昇した銘柄は

先月下旬からスタートした3月期決算企業の本決算発表もほぼ一巡しました。こうしたなかで4月中に決算を発表した銘柄では、決算発表からある程度の時間が経過したことからアナリストの業績予想の見直しも進んだとみられます。

そこで今回は4月中に決算を発表したTOPIX500採用の3月期決算銘柄を対象にコンセンサス予想が決算発表前に比べ上昇した銘柄を取り上げてみました。

そして今回はそうした銘柄のなかから会社予想がコンセンサス予想を下回る弱気なものだったにも関わらず、そうした会社予想に引きずられることなくコンセンサス予想が決算発表前に比べさらに上昇し、会社予想とコンセンサス予想のかい離が一段と開いた銘柄をピックアップしてみました。

そのなかには川崎汽船 <9107> のようにコンセンサス予想が決算発表前に比べ5%余り上昇し、その結果、会社予想とのかい離が5割を超えることになったような銘柄もみられます。

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決算メモ

■日立 <6501> 相当程度のリスクを織り込んだ今期の会社予想
日立は14日に決算を発表し、2016年3月期の業績予想を公表しました。日立は今期から会計基準を米国基準から変更してIFRSを採用しますが、前期と比較するために参考値として公表されている米国基準の予想でみてみると、営業利益の見通しは前期比10%増の6600億円(IFRSで6800億円)となっています。

これは6800億円弱のコンセンサス予想を下回る水準ですが、会社予想は相当程度のリスクを見積もって保守的に組まれていることから単純にコンセンサスを下回る会社予想とは言い切れません。

日立はこれまで部門別営業利益の控除項目である「全社及び消去」を多めに見積もることで業績が下振れた時の調整弁として利用してきました。このため今期の「全社及び消去」の金額も前期の41億円を大きく上回る310億円となっており、このうち200億円が調整弁だと会社側は説明しています。

さらに日立では今期からリスクを「全社及び消去」だけでなく各事業の利益計画のなかにも入れ込んでいるとしています。その金額は300億円で、「全社及び消去」の調整弁200億円とあわせると500億円の下振れには耐えられる会社計画になっており、リスクが顕在化しなければ最大で500億円上振れる可能性がある会社計画だとみることもできます。

また、為替レートの想定も保守的です。ドルが115円、ユーロが120円で、足元の水準からはドルで5円程度、ユーロで15円程度円高水準に設定されています。感応度はドルが40億円、ユーロが10億円で、これも業績の上振れ要素だといえます。

金山敏之(かなやま・としゆき)
マネックス証券 シニア・マーケットアナリスト

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