地方から夢を発信したい

そう、同社が酒田を拠点とする理由はまだある。地方には一次産業や二次産業が多く、同社のようなクリエイティブな仕事は少ない。進学校出身者は、東京をはじめ、人や仕事の多い都市に出ていってしまう。若者の地元離れは、多くの地方で深刻な問題だ。そういった中で、酒田に同社のような企業が存在することで、地元に夢を与えたいという思いがあるのだ。

プログラマーという職種は元来、地位が低く、大手メーカーの開発を手がけても、それを表に出さない慣習があった。ヒット作の『ムシキング』や『ラブベリ』についても、仕事を通じてクライアントとの距離を縮め、信頼関係を築く中で、同社が開発したことを発信できるようになった経緯がある。当時はゲームの売り上げに対するロイヤリティもなく、技術の切り売りだったが、現在では1本いくらというロイヤリティの契約を結べるようになり、自分たちの仕事として名前を出すことができるのだという。

とはいえ地元では、同社が30年に渡って、酒田の地でこうした仕事を続けてきたことはまだまだ知られていない。水越氏自身、少年時代に梅木氏が開発したゲームで遊んでいたが、当時は地元の先輩が作ったものだとは知らなかったという。そうした自身の体験も、地元での知名度を上げるために『さかた産業フェア』への出展を重ねていることの理由となっている。

少数精鋭の優れた人材を武器に、メーカーとしての立ち位置、知名度アップを目指す同社。今後は従来の裏方仕事のみではなく、同社の名前が表に出ていくようなモノづくりをしていきたいという。大きな目標は100%自社製品だ。「常々チャンスは狙っていますので、1日も早く実現させたいと思っています(水越)」と頼もしい。

「酒田エス・エー・エス」の名を冠した製品を世に送り出し、同社のようなクリエイティブな産業も地方から発信できるという事例を示すことができれば、それは酒田にとっても、同社にとっても、大きな一歩となる。

(提供: BigLife21

(ZUU online 編集部)

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