はじめに
高齢社会の中で暮らす日本人にとって、いかに老後を迎えるかは切実な問題となった。若年層が減少するなかで、現在の社会保障制度が維持できるのか、不安に思っている人も多いだろう。このため、老後は海外で暮らそうと思っている人も増えているのではないだろうか。
しかし、住み離れた日本を離れて、海外で暮らすといっても、どこの国を選ぶのかを決めるのはなかなか難しい。それに、ある程度の資産もなければ、簡単にできることではない。
海外移住を考えている、または既に海外に移住した世界の富裕層は、どんな基準で移住先を決めているのだろうか。さまざまな視点から、住みやすい国を考えてみたい。
なぜ、海外に移住するのか
海外への移住には、大きな決断が必要だ。
確かに国によっては税金が免除されたり、物価が比較的安いなどといったメリットがあるが、文化・言語・生活水準の違いなどから生活に不便が生じるなどのデメリットもあります。移住にはそうしたメリットとデメリットを計算・予測し、自己の利益を最大化する判断が不可欠だ。
どのようなポイントから、海外移住を検討すればよいのか、考えてみよう。
富裕層の流出は少子化よりも深刻な問題
まず、海外移住を考える前に、富裕層がどんどん海外に流出すると、日本にとってどのような影響があるのかを考えてみよう。実は、富裕層の海外移住ブームは、日本にとって深刻な問題を引き起こしてしまう可能性がある。
国内の富裕層人口の減少に関して一番に危惧すべきことは、富裕層による消費減少に伴う経済への悪影響だ。。国民の個人消費は国家経済の好循環を支えてる。そして、何よりも富裕層は豊富な消費余力を有している。。つまり、彼ら富裕層が財布を開いてこそ、経済が勢いよく活気づくわけだ。
そんな富裕層の人口が減少したらどうなるのか。国内の消費は振るわず、経済は低成長、低雇用となるだろう。内需の減少は、それに依存する中小企業や自営業者にも大きな打撃を与えることになる。
現在の日本が抱える大きな社会問題は、少子化だ。。日本において少子化が進んでいる原因はいくつか考えられるが、そのもっとも大きな原因の1つは「子育てに対する負担感の増大」。巨額の子育て費用や教育費の負担などから、低所得者層の一部には、経済的な理由から子供を持つことが難しいという人もいる。それに対して、富裕層は子育てに対する経済的負担能力が高いと言える。
つまり、経済的不安定が子供の出生に影響をもたらす社会的状況のなかで、比較的その影響を受けずに子育てができる力を有する富裕層は、少子化の進行を抑えるための貴重な要素になりうる。そんな富裕層が海外に流出してしまったら、少子化に拍車をかけかねない。子供の出生率に加えて、国の経済にまで悪影響を及ぼしかねないという点からいえば、海外移住する富裕層の増加は、単なる少子化よりも厄介な問題だといえるだろう。