刈谷ハイウェイオアシス
(写真=刈谷ハイウェイオアシス)

国内の遊園地といえば東京ディズニーランド(TDL)・東京ディズニーシー(TDS)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が有名だが、刈谷ハイウェイオアシスを知っているだろうか?

実は、2012年『遊園地などの入場者数ランキング』では、TDL&TDSやUSJに次いで全国第3位の入園者数を誇る勝ち組遊園地なのだ。刈谷ハイウェイオアシスは、愛知県名古屋市の南東部にある伊勢湾岸自動車道(新東名高速道路)の刈谷パーキングエリア(PA)内にある施設だが、高速道路だけではなく一般道路からも入場できるなど、集客のための工夫が色々と施されている 。

刈谷ハイウェイオアシスの特徴は、何より"安い"ということである。入園料は無料であり、園内にある『岩ケ池公園』では乗り物などのアトラクション料金が50〜100円という驚きの安さだ。TDL&TDSやUSJと比べて圧倒的なコストパフォーマンスといえる 。

では、入場者数が日本で3位になった理由は、安さだけであろうか。改めてその理由を考えてみたい。まず、交通アクセスの良さがある。高速のPAに直結しているため遠方から来ることも容易であるし、出掛けたついでに立ち寄りやすい立地でもある。一般的なPAの場合、上りと下りでは別の施設となるが、刈谷ハイウェイオアシスは上下線どちらからでも入れるようになっている。また、高速のPA内にありながら、一般道からの入場も可能になっており、近隣住民の利用にも配慮している。リピーターの獲得という意味では、近隣住民の利用率が高いということは大きなポイントである 。

次に挙げられるのは、安いのは利用料だけではない、という点だ。園内のセントラルプラザには産直市場があり、安くて新鮮な野菜や魚などの食材が手に入るのである 。また、野外イベント会場の使用料は無料で、設備費・音響費は刈谷ハイウェイオアシスが負担しているという 。

利用料が安いからサービスの質が悪いのかというとそんなことはなく、観覧車やゴーカートもあり、新鮮な産直市場や『天然温泉 かきつばた』という温泉施設まで揃っている。まさに大人も子供も楽しめるスペースだ。他にも、『えびせんべいの里』では20種類以上のえびせんべいが山積みされ、試食コーナーではすべての種類が食べ放題。また、園内の『デラックストイレ』は、まるでホテルかと思うような豪華な作りで何度もマスコミに取り上げられている 。これだけ魅力がてんこ盛り状態なのだから、人が集まらないほうがおかしい。

なぜ、そのような安さで利益を出すことできるかというと、入園料を無料にし、商品を安くすることで、入り口のハードルを極端に下げているという点がポイントになっている。遠方客と合わせて地元客にも密着しながら、長期間・継続的に足を運んでもらうことで収益を上げるというビジネスモデルになっているのだ。

このようなビジネススキームは、サービスエリア業界だけでなく、さまざまな分野において注目されている。これらは、LTV(Life Time Value)という経済理論に基づいている。LTVとは、1人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益=顧客生涯価値のことで、『刈谷ハイウェイオアシス』で言うと、イベントなどで人を呼び込むことで他の施設でもお金を使ってもらい、長期的に収益上げるということである。つまり、短期的な利益を追求するのではなく、長期的にビジネスを成長させていこうとする考えである 。

LTVが注目される背景には、競争の激化や安価なサービスの提供により、新規顧客を獲得するのにコストが掛かるようになったということがある。つまり、新規顧客獲得に広告費など高いコストを掛けて売り上げを上げるよりも、既存顧客からの売り上げによって収益を得ていく方が効率的ということだ。また、少子化により人口が減少しているなかで、右肩上がりで販売数を増やすことは難しく、限られたパイの中でいかに継続的に購入してもらえるかが重要になってきているのである。そのため、ソフトウエアの販売がパッケージ販売からクラウドサービスに変化しているように、販売して終わりという形ではなく、継続的にサービスを提供して利益を上げるスタイルに変化してきている。

このような、既存顧客に対して継続してサービスを提供するスタイルは、毎月の売り上げは個別販売に比べ低下するが、長期的には大きな利益をもたらす。毎月3,000円の売り上げでも年間で36,000円、10年なら36万円にもなる。このような顧客が1,000人いれば3億6,000万円の売り上げになる。

ちなみに、LTVの計算方法は、「LTV=平均顧客単価×平均継続期間×収益率」になり、LTVを引き上げるためには、単価を上げるか、平均継続期間を長くするか、利益率を高める必要があるが、刈谷ハイウェイオアシスは、平均継続期間を長くする戦略といえる。

このように、これからの企業経営は、短期的な売上目標を掲げるだけではなく、LTVに基づいた長期的な視点に立った目標設定をしていくことが求められるのかもしれない。(ZUU online 編集部)

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