2008年のリーマンショックによる金融危機への対応策として取られていた米国での量的緩和策が2014年10月に終了して以降、次の焦点はいつ米連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切るかという点に移っている。

本家ともいえる日本を始め、最近では欧州中央銀行(ECB)までもが量的緩和策に乗り出すなか、いち早く米国が本来の金利操作による金融政策手法に復帰できるのか、そのタイミングについて様々な憶測が飛び交っている。そこで、米国における今後の金融政策正常化への動向について考察してみたい。


絶妙のタイミングだった量的緩和

サブプライムローン問題に端を発するリーマンショックにより、壊滅的な金融危機に見舞われた米国経済は、危機対応としてあらゆる手法を模索した。その一環として、それまでバブル崩壊後の日銀による金融政策の失敗を十二分に研究していたFRBは、その研究の成果を活かすべく、ここぞとばかりにタイムリーかつ大量な資金を市場に供給。

結果は、日本の二の舞に陥らずに済むことに成功した。当時、米国においてもデフレの兆候が出始めていたが、このときの大規模な量的緩和策が見事に功を奏し、米国経済は緩やかな回復へと導かれていった。

元々、個人消費の勢いなどは日本とは比較にならないくらい大規模な後押しなどの要因もあるとはいえ、やはり、FRBによるリーマンショック後の3段階にわたる大規模な量的緩和政策によって、不動産価格が反転し、株価を押し上げ、その株価が先導する形で景気を上昇軌道に乗せたのである。


量的緩和終了の影響は?

金融政策の本来の手段は、政策金利の上げ下げでコントロールするという観点から考えると、量的緩和策は特殊であり、緊急避難的な意味合いが濃い。すなわち、金利も極限まで低下し、下げる余地がなく、金利が上がる要素を完全に打ち消すために量によって金利上昇を封じ込めるという手段なのである。

これにより投資家は利上げリスクを完全に払拭することができるため、大胆な投資に打って出ることができる。これが量的緩和策の狙いである。あくまでも景気がどん底になったときにしか選択してはいけない下策と言えるかもしれない。なぜなら、混乱が終息して景気が回復軌道に乗り、量的緩和策を終了させるときには、その副作用に伴う市場の混乱を避けるのが並大抵ではないからだ。

金融機能の正常化(金融引き締め)には多くの困難が伴う。実際、2013年頃には、米国の量的緩和縮小観測が広がっただけで新興国の通貨が下落し、当時の世界経済を下押しする要因ともなった。


利上げに向けた難しい舵取り

米国経済の持ち直しにより、2014年10月になって、ついに、量的緩和の解除に踏み切ったFRBも、事実上のゼロ金利政策については「相当な期間」維持する方針をあらためて示した。このように市場に言質を与えることで、それほどの混乱を招くことなく、量的緩和終了までは辿りつくことができたが、本当に難しいのはここからである。

2015年中に2006年以来で初めてとなる利上げのタイミングを模索していくとのことだったが、世界的な景気減速やインフレ率低下などのリスクに加えて、新興国の景気動向なども見極めながら、極めて難しい舵取りが要求されている。

量的緩和終了直後は、2015年6月にも利上げ可能性ありとの観測も浮上したが、利上げに伴う反動に耐えうるほどの環境にないとの判断から今回は見送りとなる公算が大きいようである。しかし、利上げのタイミングが後ずれすればするほど、景気が過熱してバブル状態になり、それがはじけたときに再び景気の後退につながる懸念が大きくなる。

実際のところ、現在のゼロ金利政策の結果、高利回りが期待できる高リスク金融商品が人気を呼ぶなど、足元の金融市場でバブル化の動きが強まっていることも事実だ。投資家は現在のところ、要人発言や経済指標を注視しながらマーケット動向に目を光らせ続けている。利上げの実施直後は、株価の一時的な調整は不可避だろう。

しかし、今の株価についてFRBのイエレン議長は「かなり割高だ」と異例の警鐘を鳴らした。リーマンショック以降、強力な金融緩和により米国経済を再び成長軌道に載せてきたFRBだが、利上げのタイミングを巡って、腕の見せ所を問われる重要な局面を迎えようとしている。(ZUU online 編集部)

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