嗜好が多様な30~40歳代を中心に拡大

それではなぜ、今、クラフトビールはここまで盛り上がっているのだろうか?
一つには、その味わい。クラフトビールは、さまざまなスタイルの、個性的な味わいが楽しめることが最大の特徴だ。日本の大手ビール会社の作るビールは、現在「ピルスナー」が主流。すっきりと飲みやすく、黄淡色の液色が特徴で、「スーパードライ」「一番搾り」「ヱビス」「プレミアムモルツ」といった各社のメインブランドもこのスタイルを採用している。

世界には多種多様なスタイルのビールがあるが、日本ではこれまで個性の強い味わいのものは敬遠されてきた。しかし、嗜好の多様化などから、こだわりの強いビールへのトライアルも抵抗がなくなり、むしろ「選ぶ楽しさ」や瓶容器、おしゃれなパッケージなどがうけているようだ。

また、“クラフト"と言われるように、作り手の姿勢や産地の特性など、商品の背景にある物語なども商品の価値を上げている。特に30~40歳代は、付加価値への反応が高く、プレミアムビール同様、お酒に対しても“量から質へ"というような意識が出てきているようだ。

さらに、クラフトビールブームのきっかけの一つとなったのが、「オクトーバーフェスト」をはじめとするいわゆる“ビアフェス"の拡大だ。これにより、海外のビールを体験する機会が格段に増え、女性や若者のビール飲用の接点ともなっている。従来は秋口を中心に都内で開催されることが多かったが、回数や開催地も年々拡大。さらにイベントに留まらず、クラフトビールを出すパブやバーなども増え、日常的に飲まれる機会が増えている。