(この記事は2015年4月30日に掲載されたものです。提供: Vortex online )
オフィスビルや商業施設、分譲マンションといった、構造上一つの建物が複数に区分される不動産を所有する場合、その所有形態は主に「共有」と「区分所有」の2種類に分けられる。分譲マンションで言うところの住戸部分は「区分所有」、それ以外のエントランスや廊下、階段などの共用スペースが「共有」にあたる。
区分所有のオフィスは、市場に出回る物件数こそ少ないものの、実は資産運用の観点で、分譲マンションにはない様々な魅力を持っている。今回はこの区分所有オフィスを、投資物件として捉えた時にどのようなメリットがあるかを考察してみたい。
『区分所有オフィス』とは?
区分所有オフィスは、市街地再開発事業などにより作られることが多い。最近の例で言えば、「虎の門ヒルズ」がこれにあたり、複数の地権者が持つ小さな土地を一つにまとめ、そこにオフィスビルや商業施設を造り、各フロアや区分をオフィスとして分譲したものが区分所有オフィスとなる。
元の地権者は、ディベロッパーに土地を売ってしまうケースと、権利床といって、新たに建設した建物のうち、もともと所有していた土地の価値に見合う広さの床の所有権をそのまま保持するケースとがあり、複数の権利者が共同で所有するビルの場合、権利の持ち方を「共有」にするか「区分所有」にするかは、権利者同士の話し合いで決められる。
区分所有となると、建物の構造上や利用の性質上、独立性を保つことが要件とされるため、通常はフロア単位で権利を持つ必要があるが、フロアで割り切れない部分に関しては、一部を共有としたり、竣工時に権利者同士で売買してフロア単位に物件をまとめたりする。
区分所有オフィスをリースする際のデメリット
オフィスビルなどを共有する上で一番のネックは、ビルの売却時だ。土地・建物に限らず、共有物の売却や担保提供には共有者全員の同意が必要となるため、資産の流動性を重視する場合は区分所有を選択することが多い。しかしながら、それが賃貸オフィスの場合、区分所有は運用面で都合が悪いというデメリットもある。
そもそもテナント側にとっては、そこが共有なのか、区分所有なのかはあまり関係がない。フロアをまたがって借りたり、ワンフロアを分割して借りたりすることもある。となると、そこが仮にマルチテナントビルだった場合、フロアによって賃貸料に大きな差が生じてしまうといったケースも考えられるからだ。
そのため、区分所有の賃貸オフィスビルなどでは、全体の賃貸管理をするマスターリース会社を置いているケースが多い。しかしその場合も、マスターリース会社の取り分が発生するため、所有者の収益は低くなってしまうというデメリットがある。
区分所有オフィスのメリット
しかしながら区分所有オフィスには、資産運用の観点から見て投資に値する大きなメリットがある。それは、少ない投資でハイグレードなビルの物件を購入することが可能な点だ。
たとえば、10億で一棟のオフィスビルを購入する場合と、区分所有オフィスを購入する場合とを比べてみると、オフィスビル一棟の場合は、どんなに好条件だとしても小規模のオフィスビルがせいぜいといったところだろう。小規模のオフィスビルは、ワンフロアの面積も狭く、ビル全体のグレード感も低いため、テナント誘致にはもっとも苦労すると言われている。また、入るテナントの与信も低い傾向にある。
一方、同じ10億で、ハイグレードなビルの区分所有オフィスを購入した場合ではどうだろう。当然ビルのスペックは高くなり、テナント賃貸料単価、テナントの与信とも向上する。その上、テナント誘致に好条件なエントランススペースや車寄せ、駐車場といったビル付帯設備から、非常用発電機、備蓄倉庫、制振・免震構造といったBCP機能も享受することができ、同じ10億でも区分所有オフィスには割安感がある。
市場に出回る数が少ない分、競合も少なく実は魅力的
区分所有オフィスには、マンションと同様に「区分所有法」が適用される。建て替え時には区分所有者および議決権の各5分の4以上の決議が必要となるため、大手デベロッパーは小さな区分所有オフィスには参入しにくい。その分、購入時は競合も少なく、少ない投資で購入できるチャンスも多くなる。あまり市場には出回らない物件ではあるが、単純に収益物件として持つだけなら魅力的であり、資産運用の観点から投資物件としての検討価値は十分にありそうだ。
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