2008年のリーマンショックを引き金に、一時1バレル30ドル台まで下落した原油先物だが、その後再び上昇に転じ、100ドルを超えるまでに回復した。しかしながら、シェール革命やOPEC(石油輸出国機構)が減産しなかったことによる原油の供給過多やドル高などを背景に、再度下落に転じ、40ドル台まで値を下げた。現在は、60ドル台まで戻したものの、これからどのように動くのだろうか。


原油価格が上昇に転じた理由は

まず、下げ止まった直近の要因を整理すると、大きく分けて2つある。

ひとつは、シェールオイルの生産減少である。地区によって多少ばらつきはあるものの、シェールオイルの採算ラインは、40ドルから70ドル程度。OPECが減産を見送ったことをきっかけに、原油先物価格が下落。採算割れ水準となり、生産量を減少させたと考えられる。実際、米エネルギー省が4月29日に発表した石油在庫統計によれば、米国の石油発掘装置の稼働数は、2010年以来の低水準となっていた。

もうひとつは、地政学的リスクの高まりである。イラクやシリアの一部を支配しているイスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」の勢力拡大や、イエメンで勢力を拡大していたイスラム教シーア派系武装組織「フーシ派」に対するサウジアラビアを中心とした10ヶ国による空爆などにより、産油国である中東情勢への懸念が高まった。そのため、原油価格が下げ止まったと考えられる。


今後も上昇を続けるのか

では、今後はどのように動くのだろうか。シェールオイルの採算ラインから考えれば、現在の水準では、採算ラインを超える生産地も多くなっている。このため、増産に動く可能性が高い。事実、ロイター社が4月に行ったインタビューで米石油・天然ガス企業の「パイオニア・ナチュラル・リソーシズ」のスコット・シェフィールド最高経営責任者は、市場環境の改善次第で6月にも石油発掘装置を増やす方針を示していた。よって、今以上の水準まで上昇すれば、再び供給過多になる可能性が高く、上値は重いと考えられる。

また、5日にウィーンで行われたOPECの総会で、減産が見送られた。理由は、原油の市場価格が回復基調にあることである。価格下支えのための減産は必要ないとの判断が下されたとされているが、昨年行われた総会では、違う思惑から減産見送りになったともいわれている。価格競争になれば、採算ラインが高いシェールオイルが停滞するとの思惑からだというのだ。今回の据え置きも、中東を中心とした従来型の原油の産油国が、原油市場で主導権を握るための戦略との見方もある。そして、減産見送りとなったことで、こちらも上値が重くなる理由となる。

以上を考慮すれば、仮に上昇トレンドが継続したとしても、シェールオイルの採算ラインの上限とされる70ドル程度が限度と考えられる。現水準以下でも採算が取れる、従来型の原油産出国であるOPEC加盟国が減産しない方針を決定したことで、下落する可能性が高い。加えて、中国などの新興消費国の経済も減速気味のため、需要増加も見込めないことから、緩やかな下降トレンドを想定すべきだろう。(ZUU online 編集部)

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