マイナンバー
(写真=PIXTA)

社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の企業対応が遅れていることが指摘されている。マイナンバー制度はすべての企業が対象となり、その安全性措置を怠り、情報が漏えいした場合の罰則も格段に厳しい。

本制度導入に向けてシステム開発を行う企業も多いが、企業側が制度を正確に理解した上で開発する必要性があるマイナンバー制について、これだけは知っておいてほしい企業側の対応について説明する。

まずは次の5つの質問に答えて欲しい。

1.マイナンバー制度はすべての企業に関係がありますが、それはなぜか?
2.企業はマイナンバー制度導入に際し、どのような義務が発生するのか?
3.企業として、いつまでに対応を終了させる必要があるか?
4.自分の会社で、影響する業務範囲と対応すべきことは何か?
5.自分の会社で制度導入にするに当たり、どの程度のリソース(人、モノ、金)が必要になるのか?

質問1~3までは全従業員が知っておかねばならない内容である。4と5については、経営層や管理職、担当部署(人事、経理、総務など)は、知っているだけではなく、既に対応に向けて活動していなくてはならない内容である。現段階での従業員教育ならびに企業側の対応について、自分の会社はいかがであったであろうか。

制度の導入は来年1月から、企業側の対応は本年10月までに!

来年1月からの導入に先立ち、本年10月から順次マイナンバーが印刷された通知カードが国民に配布される。それ以降は企業側では従業員との具体的な事務が発生することになる。政府は企業経営者に対して早期に準備を行うよう呼びかけはいるが、企業側の反応は芳しくないのが現状である。

日経BPコンサルティングが行った企業側への調査によると、本年3月末時点で対応中または準備予定と答えた企業は4割程度とかなり出遅れている。残りの6割の企業は、本制度が全企業を対象となっていることすら認識していない。自治体においてもシステム開発の遅れが指摘されており、対応が遅れている傾向は官民問わず見ることができる。

政府の企業への周知努力が足りず、このような事態を招いている感は否めないが、本年10月になって大騒ぎしないためにも企業側は準備を進めていくべきだ。

企業が従業員のマイナンバーを利用するシーンは?

現在のところ、民間企業が従業員のマイナンバーを利用する目的は、社会保障(年金、健康保険など)、納税(従業員の納税を代行しているため)、災害対策(災害時の個人識別や同定など)の3つだけである。

これらの目的に対して、すべての事業主は社会保障や納税に関連した提出書類にマイナンバーを付与し役所に提出することが義務付けられたのである。企業から書類を提出された各政府機関は、一意で個人を同定できる番号(マイナンバー)を使うことで各種事務処理が効率化するという訳である。

お気づきとは思うが、この制度は役所側にとってのメリットは大きいのであるが、企業側にとってのメリットはほとんどないのである。企業側は本制度導入経費を自前で拠出し、政府機関の事務向上に対して協力しているのである。企業側のモチベーションが高まらず、対応が遅れるのもうなずけるのである。

一度は読もう!ガイドライン

マイナンバー制度実施に当たり、内閣官房から企業向けのガイドラインが出されている(特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編))。企業でマイナンバーを担当する管理職は本ガイドラインを熟読する必要がある。

理由は、本ガイドラインに書かれている各項目が、マイナンバー導入に当たって作成しなくてはならない各社の社内規定の項目と合致するのである。本ガイドラインに沿って社内規定を作成すれば、漏れが少なくなり、社内規定の規制当局への提出や、査察を受ける場合にも企業側から当局担当者への説明が容易になる。

本制度導入に伴いシステム導入を行う場合、システム仕様書を正確に作ることが可能となる。本制度に伴うシステム開発は、安全性への高度な配慮が必要であり、通常のシステムとは異なる点(ネットワークへの接続制限など)が発生する。担当者は本ガイドラインを熟読し安全性確保に細心の注意を払う必要がある。

また、パッケージソフトを導入する場合も、ソフトを提供するITシステムメーカーは本ガイドラインに基づいて基幹プログラムを開発するので、購入企業側は本ガイドラインに精通することで迅速な導入が可能となろう。