日本の内需低迷・デフレは、恒常的なプラスとなっている企業貯蓄率(デレバレッジ)に対して、マイナス(赤字)である財政収支が相殺している程度(成長を強く追及せず、安定だけを目指す政策)であり、企業貯蓄率と財政収支の和(ネットの国内資金需要、トータルレバレッジ)がゼロと、国内の資金需要・総需要を生み出す力が喪失していたことが原因である。
これは国内にネットの資金需要がないことを意味し、財政ファイナンスが容易で国債市場が安定を続けるには好都合であるが、貨幣経済(マネー、クレジット、名目GDP、株式時価総額、不動産価格など)が拡大することが困難であることを示す。
企業のデレバレッジの緩和とアベノミクスや円安に刺激された企業活動(投資、雇用、賃金など)の回復により、企業貯蓄率は急速にゼロに向かって低下し、内需回復とデフレ緩和の動きが強くなってきている。さらに、震災復興とアベノミクスによる機動的財政政策により、財政が中立的な水準より拡大してきた。
結果として、トータルレバレッジがここ十数年で初めて持続的に拡大し(マイナス方向)、ネットの資金需要が復活し、資金がしっかり循環を始め、貨幣経済が拡大を始めている。この貨幣経済の拡大の力が、デフレ脱却に失敗してきた前回までの景気回復との大きな違いであり、今回のデフレ完全脱却の可能性を著しく高めるものである。