トータルレバレッジは-3.6%まで再拡大

トータルレバレッジは震災直後の2011年4-6月期からマイナスに転じ、2013年末には-3.7%(GDP%)まで拡大し、貨幣経済を拡大させてきた。しかし、リフレ政策であるアベノミクスと本来無関係であった消費税率が昨年4月に引き上げられ、その景気下押しは政府・日銀の予想よりかなり大きくなってしまった。企業に警戒感が生まれてしまい、トータルレバレッジは2014年7-9月期まで-2.8%へ縮小してしまい、リフレの力が弱まってしまった。

しかし、企業活動の回復は継続しており、企業貯蓄率の低下は続き、2015年1-3月期には+1.4%と、企業のデレバレッジが完全に止まるとともに、総需要を破壊する力が完全に消滅し、構造的な内需低迷とデフレが終焉するポイントである企業貯蓄率0%までもう一息のところまでたどり着いた。

大幅な税収増などにより財政収支の赤字は2012年4-6月期の-9%から大幅に改善してきている。2014年度の新たな補正予算の執行(3兆円程度の規模)もあり、2014年10-12月期の-4.2%から1-3月期には-5.0%まで若干リバウンドし、消費税率引き上げで衰えた景気回復を支えている。

結果として、1-3月期にはトータルレバレッジは-3.6%まで再拡大し、リフレの力が再拡大し、年初からの日本マーケットの好調さの裏づけになっていると考えられる。新年度入り後に企業活動は更に活性化しているとみられ、4-6月期には同―4%程度まで拡大している可能性もある。

新たな財政健全化計画では、これまでの名目GDP成長率=前提・プライマリーバランス黒字化=目標から、名目GDP成長率=主目標・プライマリーバランス黒字化=副次的目標へ、政策哲学は大きな転換をしたと考えられる。

名目GDP3%成長を含むデフレ完全脱却と経済再生が目標であり、財政緊縮が景気拡大の妨げとなるリスクを減じる好ましい計画になった。増税と歳出抑制ではなく、企業貯蓄率低下が示す企業活動の回復の力を使った景気拡大がもたらす税収の増加が、財政収支の改善の主軸となると考えられる。企業貯蓄率が1%低下するとともに、財政収支が1%弱改善すると考えられ、トータルレバレッジは現状のGDP対比3-5%程度で推移していき、リフレの力の拡大は継続するだろう。

再拡大しているリフレの力は強くなっていくと考えられ、2016年の夏の参議院選挙までには、企業貯蓄率は0%近辺に到達し、構造的な内需低迷とデフレからの完全脱却を安倍首相が宣言し、その成果を国民にアピールしていくことになると考えられる。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

【関連記事】
7816万人が夏休みに旅行、JTBが動向調査
日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
日経新聞・四季報などがネット上で全て閲覧可!?その意外な方法とは
6月国内ユニクロ、売り上げ11.7%減 夏物が不調
NTTを超える数兆円超の上場?元国営3社のIPOに迫る