太田和宏社長
(写真=リフォーム産業新聞)

1946年に映画興行の会社として設立された東京テアトル(東京都中央区)。現在は、飲食や中古マンション再販、不動産仲介、リフォームにまでビジネス領域を拡大している。太田和宏社長は中古ビジネスをさらに伸ばしたいと話す。


年間150戸販売

◆中古マンションの再販事業はいつごろから始めたのでしょうか。

最初はオフィスビルなどを仕入れて転売するというビジネスモデルでしたが、2007年ごろにこれからは中古マンションが伸びそうだと考え、今のような買取再販事業になっていきました。2年目で売り上げが10億円を超え、直近の決算では30億円にまでなりました。戸数で言うと年間150戸ほど販売しています。

◆買い取った後にリフォームをするわけですが、プランで重視していることはありますか。

この業界は差別化が難しいと思っています。特にリフォームのプランで差別化するのは難しい。私どもは保守的なやり方ですが、一番標準的な仕様にするようにしています。プランは奇をてらわずにスタンダードにし、王道をきちっとやっているので間口は広い。

それよりもこのビジネスで重要視しているのは販売スピードを上げることです。現在は中古マンション取得から120日ほどで販売に至っていますが、だんだんと回転率は早くなってきています。

◆今後この中古再販についてはどう伸ばしていきますか。

3年のうちに50億円規模に持っていきたいと思っています。現状、販売戸数の3割が神奈川エリアなんですが、こちらを強化するために新たな支店開設を視野に入れています。やはり中古マンションを買うニーズは高まってきています。

結局新築のマイホームに憧れた人は今のリタイア世代。これからの若い世代は新築でなくても中古でもいい。より利便性のいいところに住みたいから、郊外の戸建てよりも立地のよいマンションを選ぶことが増えていくと思います。


映画館で「シネアド」も

◆2年ほど前には新たな中古マンションビジネスとして「リノまま」も立ち上げました。これは中古マンションの仲介とリノベーションの設計・施工、アフターといった一連の内容をセットにして提供するサービスです。前期は売上高2億5000万円と、順調に伸ばしてきています。

中古マンションの買取再販というのはトラック競技みたいなもので、ぐるぐると回転させていくもの。これとは違う中古マンションの販売ビジネスはないのかと考えたときに、バイヤーズエージェントという視点があった。要はお客様の望む中古住宅探しとリフォームを一緒に提供するということです。

◆映画部門と連動した販促を行っていると聞きました。

去年からシネアドというものをやっています。われわれの運営する映画館で本編の前にリノベーションのコマーシャルをしています。映画館には200万人が来ます。また、いらっしゃる方は、趣味や志向に対して明確な哲学を持っていて、その趣味や教養に対しては投資を惜しまず、コミュニティを経営するのが好きな方たちなのです。

これって自分の趣味やライフスタイルに合わせてリノベーションできる「リノまま」にぴったりのお客さんなんです。実際に映画館に来てくれた方から契約も頂いています。

リノまま
「リノまま」でオーダーリフォームした住宅


「お客様自体に合わせた価値を」

◆リフォームマーケットはさらに拡大していくと考えますか。

これまでの住宅の買い方は新築を買って、ローンを長い間払い続けるというものでしたが、これが本当に正しかったのか、という総括が始まっていくと思います。そうなると、中古を直して住むのもいいのではないかと。そういうふうに、少しずつ変わっていくと思います。

◆中期経営計画の中で、つながり、カスタマイズ、本格志向、教養といった言葉をキーワードにしていくと発表しています。

例えば映画事業の方では、映画を上映して終わりではなく、監督とファンが食事会してディスカッションするような場を設けています。

また、運営する飲食店でもパーティなどを開催して出会いの場を提供しています。私どもはこのような新しい価値をつくっています。リノベーションの分野であればお客様自体に会わせた価値を提供できるかどうかということ。ここに力を注いでいきたい。(提供: リフォーム産業新聞 6月30日掲載)

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